チリの風 その239 07年9月3日―9日

チリの風 その239 07年9月3日―9日

サンティアゴの気温はまた20度差を記録しました。つまり最高温度と最低温度に20度以上の差があったわけです。最低温度が4度で最高温度が25度のときなど、朝出るときは冬の服装、暑い昼は夏の服装ですから、同じバスの中にオーバーを来た乗客と半そでシャツの人が並ぶのは面白いです。

8日の土曜日、日本人学校で学習発表会があり、見せてもらいましたが、その中で小6と中学生による劇が印象的でした。何しろ、10年前に死亡した母親が前の家庭に戻ってきて、自分の家族と新しい母親候補の女性に会うというヘビーなストーリーでしたが、中学生がプロもどきで特に主人公の母親(幽霊)役の女優(?)がすばらしく、劇中の彼女と一緒に泣いてしまいました??

(政治)

1) 大統領の動向

 日本に立ち寄ったバチェレットはその後、シドニーに飛んでAPECの総

会に参加しました。

しかしチリでは彼女の日本での行動は連日報道されましたが、日本のメディアにはほとんど報道されなかったようですね。残念。

   これで日本との自由貿易協定を締結したチリは、次にベトナムとの交渉

を開始しました。

   とにかく日本との協定調印でチリ北部に新規雇用数が数万人見込まれるとバチェレットは大風呂敷を広げていますが、どうでしょう。もちろん、彼女はおみやげとして国連で日本が安全保障委員会の常任委員なれるよう援助するとコメントしていますね。

   この長い旅を終えたら、次は月末にニューヨークの国連総会が待っています。その旅には与党議員のほか野党の両党首も同伴を要請されているらしい。外遊しているうちが彼女にとっては唯一気持ちの休まる日々なのでしょうね。

2) チリにとっては消え去ることの出来ない政治課題9月11日が近づいて来ました。1973年のその日はチリ近代の歴史で最も重要な日になるでしょう。ピノチェットの率いる4軍がモネダ宮殿を攻撃、時の大統領アジェンデは死亡しました。彼の死は自殺とも射殺とも言われますが、私は彼は銃撃戦で死ぬほどの気合はなかったが、軍隊への抵抗の中で少なくと彼自身も発砲はしたと見ています。

昨年のその記念行動で、モネダ宮殿に火炎瓶が投げられ、窓に当たって炎上した事件があったので、政府は今年はデモ隊がモネダに接近すること許可しません。今までの伝統的なデモコースの変更をDCなど与党側は納得していませんが、政府は二度と同じエラーは繰り返さないと、デモ隊の大統領官邸接近にアレルギーです。今週の日曜日(9日)にその前哨戦がありましたが、来週の火曜日(11日)はまた大混乱でしょうね。

3) しかし野党の中の争いも尋常ではありません。今週、野党RNのアラマンは彼が作成した労働法の改正案を発表しました。普通、右翼から労働者保護の提案は出てこないのですが、政府はそれを評価し、検討するとのコメントした後、そのアイデアは彼個人のものではなくUDIのロンゲイラ(もしくは二人の合作)とわかりました。ロンゲイラはアラマンのやり方を厳しく批判。当然ですね。これでは両党が力を合わせてというわけにはいきません。しかしアラマンは何を考えて自分一人のアイデアとして発表したのかな?すぐばれる嘘なのに。

4) 豪州でバチェレットはペルーのガルシア大統領と面談しましたが、それにフジモリ問題が水を差すようなことがあってはならないと、政府は裁判所にフジモリ結審を遅らせるよう指示(もしくは依頼)した様子。

   

(経済)

1) 最低賃金問題

最低賃金をもらっていない労働者の数は100万人と発表されました。2006年の統計で最低賃金の10万8千ペソをもらえなかった労働者は全体の15%で正確には95万人。

ただしその最低賃金を手に出来なかった理由として、自由業で従業員ではないとか、週45時間の法定労働時間を働いていないなどのケースが多いらしい。それではしようがないか?

一番高いランクの労働者の所得と一番低いランクのそれは2006年の場合10,2倍でした。20万ペソと200万ペソでしょうね。

最もチリの基本賃金の額は発展途上国23ヶ国の中で上から3番目に高いそうです。

また失業者の数では、貧民階級の家庭では26.6%の失業率が見られ、裕福な階層ではそれは2.4%に激減します。

女性の労働層は量質ともに、前年対比全く改善無しとか。

これを学歴で見ると中卒では平均賃金が17万6千ペソ、高卒では23万4千ペソ、大学卒業では70万7千ペソになるらしい。明らかに学歴と所得に相関関係が見られる。

2) インフレ

過去10年の間、年間2―3%のインフレ率が継続されていましたが。今年はそれが大きく崩れそうです。8月の物価上昇は1.1%となり、近年にない悪い記録。予想では07年のインフレは4.8%と急上昇。

3) テレビのデジタル化

   チリでもデジタル化の波は避けられず、どの方式を選ぶかの時期が来ています。ブラジルはその中で日本方式を取り入れることになりそうですが、欧州、米国に対抗して日本方式がチリでどう戦うか注目される所。

4) 労働組合の幹部が「組織として明確な指標を掲げていなかったので下部組織が前回のデモで突っ走ってしまった」と自己批判しています。今年に入ってコデルコでの下請け労働者大争議を始め労働争議が続出、これは一部労働者の暴発とされていたのを、今回、労組幹部の指導力不足とわかってきたわけでこの先どうなるか。

5) 建設ブームで各地に事務所用や住居用のビルが多数建設されていますが、今週の発表では2009年には首都圏でビル建設に適した場所はなくなる(全部使用されてしまう)となっています。つまり建設会社にとっては死活問題、それから販売費用の高騰など大問題が起こりそうですね

 

(一般)

1) ついに18の休日が近づいてきました。これを「じゅうはち」と読むと気分が出ません。どうしても「ディエシオチョ」と読んでください

サンティアゴから170万人がバスで地方に脱出します。もちろん、この他に自家用車、飛行機も利用されます。5日間の休暇をフルに利用するため首都圏住人は早くから予約を入れていますが、なにしろこの数ですから切符を手にするのは容易ではありません。おまけにバス代なんか急上昇。ちょっとの値上げじゃないですよ。路線によってはその期間、何と通常の3倍の料金になるとか。日本も年末年始、値上がりが見られますがこれほどひどくはないでしょう。もう事故事件の続発が予想され、休み明けがどうなるか心配。

2) トランサンティアゴ

しかしあきれてしまいます。何とこの新交通計画の犠牲になったとしてバスや地下鉄の一般乗客が国を相手に180億ペソの損害賠償を要求して裁判所に訴えでました。しかしそんな裁判聞いたことがありませんが、さすがチリです。しかし万が一乗客グループの一部がが勝訴したら、もう歯止めがきかなくなって、何万人ものグループが裁判所に押し寄せるでしょうね!!!

3) 今年の冬は異常に寒かったので、花粉症などのアレルギー問題は例年より遅れて発生しそうですが、例年より雑草の繁殖が見られ、問題は深刻化する見込み。新聞ではその対策として窓をあけて室内の空気の流通を良くすること、夏服を取り出したときはよく埃をとること、雑草(芝生)を刈り取るとき、アレルギー症の人は近づかないこと、花粉症をおこす樹木のそばを通過するときはサングラスの使用が必要となっています。

4) 先日の労組デモのとき、社会党の国会議員が警官に頭を殴られた事件はチリの風に書きましたが、なんとその続きがありました。しかし素人でも物好きな人がいてその現場をちゃんと撮影していました。それによると国会議員は警官たちに雑言を浴びせながら、キックを入れていました。なんだ、警官は暴徒の規制をしていたのか?その国会議員の釈明が要求されていますが、それまで被害者として気の毒な議員が一転して程度の低い暴力議員になったわけで、もちろん彼は口をつぐんで黙っていますが、同じ与党の議員からも彼を批判する声が強く出ています。

5) 少し前にも似たような記事が掲載されましたが、チリからアジア諸国に留学する大学生が増加しています。奨学金が受けられる学生数が長期短期の留学生を合計すると中国で26名、マレーシアで34名、シンガポールで25名、韓国で6名、日本は56名とか。

アジア諸国の大学ランキングで上位5大学はすべて日本が占め、それは東大、京大、阪大、東北大、名大でした。

6) 自動車のナンバープレートの表示が変更になり、これからの新車はアルファベットの文字が4つ、数字が2つになりました。今までと逆です。つまりXY2345からBBCE74になったわけです。まだそのプレートをつけた車は見ていませんが。

(スポーツ)

1) サッカー

  いよいよビエルサ監督がデビューしました。その記念すべき第一戦。オーストリアでスイスと対戦。なんや!1対2で負けました。負けて喜ぶ人間はいませんが、戦い方に変化が見られるとか値打のある敗戦とする好意的な意見が多いようです。最も素人の私にすれば、フォワードで絶好調のビジャヌエバを出さずに不調のルビオを使うなど理解できない選手起用もありました。

  来週第2戦の対オーストリアには是非勝ってもらいたいもの

以上