チリの風 その226  07年6月4日―10日

チリの風 その226  07年6月4日―10日

今週、会社の創立記念日があって、毎年のように朝、始業前にミサ、夜に食事を含めたパーティがありました。日本でも本社の屋上にお稲荷さんを奉ったりする信心深い会社もあるようですが、カトリックの神父を招いて本格的なミサを社内で行うのは私には違和感があります。しかし社長が好きならしようがないですが・・・
大気汚染がひどく毎日のように注意警報が出ています。雨が降らなければ空気がきれいにならない前近代的な状態なので、汚染の特にひどいサンティアゴ西部の住民は救われません。
さてアフリカの旅その4が終了しました。あの狂乱、感激の旅行記の完結編です。何だかんだと言ってもこれで4度目のアフリカ、私はますますアフリカ好きになりそうです。これを読んだ読者に私も行って見たいと思わせれば、筆者の勝ちですが、どうかな?

(政治)
1) 悪いニュースが続く中、貧困層の減少と国民の所得格差が縮小と発表されました。そのニュースでは政府の努力で国民の生活は良くなっているとなっています。
注・貧困層とは家族一人当たりの所得が月約1万円、困窮層はその半分の所得しかないレベルです。この層が過去10年間減少してきている。
しかしこれを国際的に見ると、チリの高所得層と低所得層の差はなんと14倍もあり、これは世界の最悪4位になっている。つまりチリの管理職の給料は近隣諸国を越えるどころか豪州をこえ世界の上位。中堅会社の部長で年間65000ドル、大企業では94000ドルのレベルらしい。これが労働者になると急にレベルが下がり、年間7千ドルとか。
つまりチリ政府がいくら良くなっていると言い張っても世界の目はごまかせないということでしょうね。
さすがにこのランキングで日本はどの職種も世界のトップクラスを維持し貫禄を見せている。

2) バチェレットが外遊から戻ってきました。しかしノルウェーフィンランド、スイスとチリとはほとんど経済交流もない国を訪問して意義があるのかとする声も出ていますが、彼女はそんな批判を全く気にせず、相変わらずテレビのニュースで「国民の間に広がる悲観論を私は理解できない」と憂慮しています。国民がアホなのか彼女が分かっていないのか?
何とバチェレットのことをバレシットとこっそり呼ぶ国民がいるらしい。バレとはスペイン語で値打ち、シットはご存知の英語です。つまり直訳すれば「糞の値打ち」さん?!
(注)私はそんな失礼な呼び方をしていません。どこかで聞いただけです。誤解のないよう。
それで各種の調査機関が発表する彼女の人気は落ちる一方ですが、彼女はテレビのニュースで、「そんな人気調査の結果が少し上がったとか、下がったで一喜一憂などしません。私は自分の任務に没頭しています」とコメント。人気があった時はニコニコしていた彼女ですが、最近は引きつった顔を見せることが多すぎる。おまけにそれに追い討ちをかけるような発表があって、2005年の大統領選挙では彼女が49%、競争相手のピニェラが36%の投票を得たのですが、それを現時点で見るとどうなるかと市民に質問すると、彼女に投票した人間の17%は「ワシャ間違ってしもたぞ」とし、ピニェラに投票すべきだったと反省。つまりバチェレット32%、ピニェラ43%となり、当時と現在ではこの二人を見る目が大きく変わってしまいました。なっ、国民の目は厳しいってゆうたやろ。私の政治を見る目は先年の投票結果の先を見ていましたからね。

3) トランサンチィアゴはもう底なし沼のようで、金をつぎ込んでも良くなりそうにありません。来週、国会で2億9千万ドルの追加資金の審議が行われますが、これをなんとか通してもらおうと政府は与野党にごまをすって、この資金は国立銀行の管理下に置くこと、首都圏以外の州に今年度中に1億ドルの追加予算をしますと大盤振る舞い。これでなんとか国会で必要な票を集められそうとか。理由もなしに1億ドルってアホやな。
一般市民の声は、このトランサンティアゴが始まってから、サービスは低下しており、これに巨額の金をつぎ込むのは無意味として反対、また運賃の値上げはサービスが悪いので受け入れられないと反対になっています。乗り継ぎの不便があるが前より早くなったとか乗り継ぎ運賃が安くなったとかの認識が一般ユーザーにあれば新計画は成功ですが、今の所その全く逆の結果になっています。
今週から政府がバス会社に支払う仕組みが改定され、今までの一定の金額を支払う方式から、運んだ乗客の数によって支払う仕組みに変わりました。そう聞くと、じゃ正常化したのかと思われそうですが、これは見かけだけで実態は全く変わらず。というのはバス会社への支払い金額は固定化部分が大半で、乗客によって変動する部分はごくわずか。つまり先月と同じ金額を今月も受け取れると言うわけです。昔のようにすっきり100%を乗客の運送によるとすれば良さそうですが、それでは昔の問題(バスが乗客を争って道路でレースを繰り広げるとか)が繰り返されるとしています。それを避けるため同一ルートでは競合他社は走れないことになっており、政府の方針のまずさが目立つ。
この計画が始まった当初、車体に落書きしてあるバスは使えないとしていましたが、今では多くのバスが落書きされたまま走っており、計画と実態はかけ離れていることを示しています。
しかも来週の月曜日、トランサンティアゴ計画で一番乗客数の大きなバス会社の運転手組合がストを発表しており、一層の混乱が見込まれます。
この件で、問題の元凶とされているラゴス前大統領は野党から国会に呼ばれていますが、本人が出頭するかわりに書類で回答するらしい。
バチェレットは交通問題について、私の政府で上手くいっている項目に入っていないとその問題を認識した上で、しかし私は逃げないで問題と正面から向かい合うと元気な所を見せました。

4) ペルーの元大統領フジモリ問題に焦点が当たってきました。多分来週はこれがチリ政界ニュースのメインテーマになるはずです。さて裁判の方ですが、進展があって、今週、彼は逮捕されチクラヨの自宅収監になりました。(いつラス・コンデスの家からチクラヨに移ったのかな?)
彼をペルーへ送還する方向で事態は進んでいます。
政治マンガに彼の件がのりました。検察があなたは自宅収監になりましたのでそれをお伝えします。ところでどの住所にお住まいですか?彼は答えて山元通り123番地、東京です・・・。笑ってしまう。
このままチリに残る、ラテンアメリカの他の国に出る、ペルーに送られる、日本に戻るの4つの可能性があるそうですが、国際警察から逮捕状が出ているので他の国には入国不可能でしょうから、ペルーに入って勝負をかけるのが筋道でしょうね。ペルーの司法を怖がって逃げるようではもう一度大統領になる夢は実現しません。
もうチリに入って1年半、無駄な日々を過しているわけですから、リマの裁判所で得意の弁舌をふるい、いかに自分がペルーに貢献したか涙とともにまくし立てれば、国民の間にチノを苛めるのは止めようという声も出るはず。まだチャンスはあるで、フジモリさん。

(経済)
1) 確かにバチェレットの言うようにチリ経済は順調に推移しています。4月の経済成長率は6.6%を記録し、今年になってからの通年で6%を超えました。ただし物価上昇率が上がってきて、5月のそれは0.6%と過去11年で最悪の数字です。
派手はやめましょう、地味に行きましょうと私が言っても、チリ人はもう借金の味を覚えてしまって、地道に消費する美徳を忘れています。(国民の平均借入金は現在、収入の60%で年々増加中とか。もちろんこれには家屋などの購入は含まれていません)

2) エネルギー問題は避けて通れません。チリ北部(第1州、2州)に電力を供給するガスアタカマ会社の経営が傾き、倒産のがけっぷちまで来ました。同社が倒産すると北部の大型マイン(銅鉱山)や一般家庭にまで大きな問題を起すので鉱山会社のコデルコ(国営)と民間のBHPが緊急資金援助をして当面の倒産を防ぎました。
   さて発電量のアップのため、石炭による発電が急増中です。現行の2000Mワットが近年中に倍増される由。
   大気汚染の問題から薪をストーブで燃やすのを禁止すると言う政府としては石炭による発電は汚染をさらに増すというのは当然認識しているのでしょうね。
   雨が降らないので、ダムの水量は1999年以来の最低量を記録。今年の水力発電は全体の47%。その99年は68%が水力発電だった由
   しっかりしてほしいな・・・・。

(一般)
1) とうとう青少年犯罪取締りの法律が実効になりました。しかし更生施設が全く整っておらず、施行された後の混乱が心配されています。
   さすがにラテンですね、何も考えずに実施してしまうところが。
   この改正で刑法に触れるのは18歳以上だったのが14歳以上になります。

2) 高校の占拠が続いています。これを排除する警察隊とのヒッチも起こっており、多数の逮捕者や負傷者もでています。父兄が怒って、犯罪者を捕まえてもすぐに釈放するこの国で、まじめな高校生を逮捕、留置して何のメリットがあるのだと叫んでいますが、この先どうなるのか?

3) バルパライソの市長が刑務所に。
   もう10年も前のことですが、新年を迎える花火大会を歩道橋で見ていた見物客が、その橋の崩落事故で多数、犠牲者になりました。それらの被害者(家族)に保証金を支払うよう裁判所の判決が出たにもかかわらず、未だに支払いが行われず、今回、市の代表として市長が来週、刑務所に入りそうです。彼は私の責任ではないとしていますが(その事故のあった時は市長ではないので) 誰かが、保証金の支払いをして、それが出来なければ牢屋に入ると言うのは世界共通でしょうね。さてそれを避けるウルトラCがあるのかな?


(スポーツ)
1) サッカー
  国内リーグは盛り上がっています。2位のカトリカが勝ち、首位のコロコロが引き分けたため2チームの勝ち点の差はわずかが1点。来週が最終戦
  さてナショナルチームの国際試合は、最悪の結果で、なんとかジャマイカには勝ったものの中米カリブ遠征を1勝1敗で終えまし。サンティアゴに戻ってきた選手を飛行場でファンがなじり、選手と口論していました。これではベネスエラでのアメリカップは1次リーグ敗退間違いないでしょう。
  ところで、それよりもっと面白いのは政治問題で、サッカー連盟は2500M以上の高地で国際試合は行えないと発表しました。つまりエクアドルのキトーやボリビアのラ・パスでは試合が出来ません。チリ国内ではサルバドールやカラマがこの新条件に抵触します。
  これに南米各国が反発し、この条件を変えなければ、これからの国際試合をボイコットすることを検討中です。
この件にも関係してボリビアサッカー連盟のトップが來チし当地のサッカー連盟とのトップ交渉となるはずでしたが、何とボリビア人は約束の日時に現れず、連絡も全く無いことからチリ側はこれをチリへの侮辱としてボリビア側にクレームしました。時間にルーズな南米らしい話ではすみませんね。


以上