チリの風 その207 07年1月15日―21日

チリの風 その207 07年1月15日―21日

アフリカの旅から戻ってきました。出発直前に心臓発作(の疑い)で入院したので皆さんにご心配おかけしました。幸い、二人ともアフリカで怪我も病気もせず18日の旅を終えて無事帰国しました。
昨年のエジプト紀行文は原稿用紙250枚の作品になりましたが、今回もそれくらい書きたいものです。内容から行くと昨年より強烈です。今回の訪問先は南アフリカ,レソトスワジランドでしたが、カリブ海に客船に乗りに行くバケーションとは大きな違いでした。
帰国の翌日から出社,土曜日は日本人学校でサッカー教室,日曜日はマラソン練習と既にエンジン全開です。

(政治)
1) メルコスール(南米共同市場)の大会がブラジルのリオ・デ・ジャネイロであり、チリからバチェレット大統領とフォクスレイ外務大臣などが参加しました。ホテルからそのフォクスレイがボリビアのモラレス大統領と並んででてきて,何と海岸沿いの道をジョギング。もちろん歩いているより少し速いくらいの速度ですが,それでもメディアの注目を浴びていました。両国の関係改善をうかがわせる。ついでにオバちゃんも走ればよかったのに。少しは減量になりますよ。
今回からメルコスール入りしたそのボリビアのモラレス大統領はいきなり強烈パンチを出しました。今までは(キューバだけが)アメリカ帝国主義と戦っていたが,これからは私たち(ボリビア、ベネスエラ,エクアドル)もそれに参加する。ボリビアは仲間を必要としているが、主人を必要とはしていない。また会議主催国のブラジルに対しても、ボリビアはブラジルに友だち価格で天然ガスを売らされる義務はないと切って捨てました。今までこういう発言はチャベスだけだったのですが今回はモラレスが暴れて注目を浴びました。メルコスールの2大国(ブラジルとアルゼンチン)もうかうかしていれません、それにしてもチリの新聞にバチェレットの発言が他の大統領以上のボリュームで掲載されないのは何故かな?
ところでその彼女は近々、ベネスエラを訪問するらしい。チェベスはバチェレットのファンだから、彼女がカラカス入りする日から,出発まで自分のそばから話さないでしょうね。ほとんどセクハラですね。
で、石油とかを、チリにプレゼントする予定があると連日繰り返し・・。
ところでチリの防衛大臣のブランロットは突然ボリビアを訪問,ボリビア政府要人と面談しました。両国の国境シララ周辺にボリビア軍が増強したことについてチリ側から遺憾の意が表明されたようです。それでも両国の大臣クラスが相手国を訪問する関係が復活することは望ましいことです。

2) ついでに、チリ人の外交センスですが、新聞アンケートの結果では、好きな国としてアメリカ,メキシコ,ブラジル,嫌いな国はボリビア,ペルー,アルゼンチン。(隣接3カ国は全部不愉快な国に入るらしい)嫌いな元首はブッシュ、チャベス,モラレスの由。アメリカは好きだけど,ブッシュか嫌いと言うのが面白いですね。

3) チレ・デポルテ(スポーツ振興局)
そう言えば,そんな不正事件が昨年末賑わっていましたねと言いたくなるほど、同じことを年が明けても繰り返しています。最近、政府関係者が,じつはこの機関は政府の直接の指揮を受けてないんですよと言い出しました。そう発言した前大臣は2年前に、自分がその組織の直属の上司だと新聞記者に語っているのですけれど。もちろんこれで政治責任は問われるが刑事責任は逃れうると計算しているのでしょう。

(経済)
1) 07年の世界経済透明度ランキングが発表になりました。ヘリテージ・ファンデーションの調べでチリは世界157か国中11位を占めました。1位は香港、ついでシンガポール,その後欧米の国が続きます。チリはラテンアメリカのトップ,日本より上位でした。
そのチリの分析の中で、チリが高く評価されている項目に知的所有権の尊重があったのはちょっと疑問でしたが、こうしてコツコツとチリの努力が認められていくのはうれしいことです。
同じようにJPモルガンの発表ですが、2000年以降の中期の変遷でチリはラテンアメリカの中でもっとも安定性のある国となりました。メキシコやブラジルは経済規模は大きいが,種々の問題を抱え落ち着きません。

2) 3年連続で家庭の負債(借金)が増加しています。06年は前年対比15%アップとか。確かに身近で、銀行やデパートなどからの借入金が払えず家財を持っていかれるなどの悲惨な例を聞いています。自分の実力の中で生きていくしかないのですが・・・
一方,国の負債は目に見えて減っています。昨年来の銅価格上昇のお陰で国の借金返済は楽勝でしょう。

3) その銅の価格は今年に入って眼に見えて下がっています。今週はポンドあたり2.5ドルまで下がりました。昨年の平均は3ドルです。
06年のチリの銅輸出額は前年対比82%アップを記録しています。もちろん生産量がそんなに増えるわけはなく銅の価格上昇が輸出総額の増加に直結したわけです。その輸出額は330億ドルと記録されています。
銅の価格の落下と同じように原油の値段も過去20ヶ月で最低のレベルまで落ちました。どちらもチリの経済にとって了承できる推移でしょう。
ガソリン価格は今週から1リットルあたり10ペソ下がり550ペソ周辺です。一時600ペソを越えていましたからね。

4) 中国車の輸入に拍車がかかってきました。数ブランドの中国車が今年になって輸入開始されました。品質はともかく値段は確実に現行のブランドより低いですから,それなりに売れるでしょうね。車でなくても電気製品でも中国品はどんどんチリ市場に流入しています。

(一般)
1) 今週のトップニュースは来月から実施のトランサンティアゴ(新交通計画)でしょうね。実施まで後少しと言うのに、さぁ準備はしっかり整いましたと言う雰囲気がありません。土曜日,日本人学校のサッカー教室に行きましたが、私のアパートから現在は一本のバスでいけます。その運転手に計画実施後この路線はどうなるか聞いてみると、廃止ですとのこと。つまり支線バスと幹線バスの乗り継ぎになるのだろうが、どの路線がどこからどこまで走るのかインフォメーションがないので先が見えません。
私の娘がアルバイトでこの計画を利用者に説明する仕事につきました。わずか1週間で彼女はやめてしまいましたが、その理由は彼女たちに説明するインストラクター自身が良く分かっていないとか、仕事のときはユニフォームを着用するようにと言いながら,それがまだ遅れて皆さんに渡せませんとか、準備不足がひどすぎると言うもの。
そう言えば、運輸大臣がテレビ局を引き連れて、バスの整備工場に乗り込み,乗車料金を払うプリペイド・カードの機械をチェックした所、かなりのバスで機能しなかったのはお笑いだった。まだ時間はありますと彼は強気だが、当初の混乱は想像以上でしょうね。
それからこのプランが実施されれば地下鉄の乗客はその日から突然2倍になると言うのだが,今でも乗降車に混乱しているのだから、その日以降はメインの駅では乗れない客が喧嘩腰でしょうね。怖い。
バス代は当初は現行と同じ380ペソで出発らしいが、ある日、突然、これではやっていけませんので500ペソにさせてもらいますとなるのでしょうね。高速道路の通行料金がこの仕組みでしたからね。

2) 誘拐事件
テレビのニュースではこれが一番でした。ラス・コンデスで医者の子供が誘拐され、子供と引き換えに5百万ペソほどの身代金を受け取ったあとその犯人が逮捕されました。
犯人の家族関係とか犯行の理由とか,犯罪の周辺を含め連日このニュースでもちきりでした。犯人は誘拐された子供をつれて私のアパートの近くの民芸店ショップ村に行っていたらしい。

3) 大学入試の結果が発表になり、それを受けて合格者が希望大学の学部に入学申請を出す手続きが行われました。ちゃんと新聞に最高得点者リストが掲載されています(日本と同じく、ここも受験地獄, 学歴社会ですからね)チリも高校生のうちから予備校に通い(日本なら受験塾でしょうが)12月の共通試験を目標にがんばるわけです。

(スポーツ)
1) 久しぶりにテニスの話題。豪州で行われている4大大会に参加中のゴンサレスは並み居る強敵を破って3回戦に進出。その3回戦では豪州のヒュイットと対戦。これにも勝って4回戦へ。今年も彼は世界ランキングのトップ10を維持しそうです。
さて2月にはデービスカップ戦がチリでおこなわれ宿敵ロシアと再度対戦です。どうなるかな?ラ・セレナで行われるその試合の入場券は既に全部売り切れとか。

2) サッカー
パラグアイで開催中の20歳以下の南米大会で,1次予選B組みを2勝2敗でからくも勝ち抜いたチリは決勝リーグの初戦をA組無敗でトップのコロンビアと対戦しました。なにしろコロンビアは1次リーグでアルゼンチンを破っているだけに、数字から行くと勝ち目がないようでしたが,何と5対0の大勝。あまりの見事さに驚かされました。そして第2戦は対ブラジル。これに堂々の引き分け。子供たちとゲームを見ましたが,久しぶりにチリのゴールを大声で祝いました。近所のみなさん,すみません。
この大会の結果で次の北京オリンピックやカナダでの世界大会の出場資格が得られます。がんばれチリ。
それからスペインで活躍するチリ人監督のペレグリーニが世界の監督ランキングで13位に入賞。またコロコロの監督ボルギ(アルゼンチン人)は20位に入りました。

以上