チリの風 その203  06年12月4日―10日

チリの風 その203  06年12月4日―10日

気候は安定しました。最高温度が30度,最低温度は12度というのが今週の気温でした。金曜日マリア昇天の日というカトリックの祝日になり、その聖地ロ・バスケスを目指して数十万人がサンティアゴを後にしました。何と多数の信者は首都から自転車や徒歩で80キロの距離を,多数は前夜から夜通しかかって歩きとおしています。教会につくと、入り口から祭壇までひざまずいて歩くなど難行苦行の末、ミサを受けました。この苦しみが信者にはたまらないのでしょう。今年はご利益を受けたので,私が今日はそのお礼をマリアに見せるのだと言っていました。


(政治)
1) 新聞の時事マンガは時として面白いものですが,今週のそれに出色のものがありました。病床のフィデル・カストロが部下に指示を出しています。「ピノチェットがあれだけ迅速に回復した秘密を探って来い!」
先週末はこのピノチェット問題で国中が盛り上がりましたが,二日後に病状は急速に回復していると医師団が発表しました。翌日の3流新聞の一面に「91歳の老人に心臓発作がおこったらこんなに速やかに回復するわけが無い」と、あるニュースキャスターのコメントがのりました。心臓発作って嘘だったのかな?
右翼政党も揺れました。すぐに病院に駆けつければ極右のイメージが出るのでピノチェット死後の政界にはふさわしくないと考える議員と,最後まで意地を通してこそサムライだ(そこでサムライはでてこないかな?)とするグループです。
また、政府側も対応に苦慮し、これから起こりうるシナリオ、すなわち彼の逝去にどう対応するか結論が出せませんでした。政府とこの話をすすめた良識派の前陸軍司令官チェイレは病院の前でピノチェット派から裏切り者と罵倒されました。
さてその態度を決めきれない政府を励まそう(?)と、ある新聞の日曜日(10日)のトップに国民の過半数は彼の葬式を国葬にすべきでないと考えると発表。このごますり新聞はラ・テルセラといいますが、ボリビアで開催中の南米国際会議のニュースを押しのけて,そんなアホな記事をトップにしました。これでバチェレットに国葬は不要とのメッセージを送ったわけです。
しかしさすがのピノチェットです。人を驚かせるのは達人です。危ないと見せかけて,危機を凌ぎ,もう大丈夫と思わせた途端に、死んでしまいました。日曜日の午後,車がクラクションを鳴らしながら通るので,またコロコロが勝ったのかと思っていましたが,違いました。彼の死去です。それから午後中ずっと夜中まで全テレビ局がピノチェット死去を報道しました。国中が左右に分かれて街に出ているようです。両方ともチリ国旗を振っているので遠くから見るとどの陣営か分かりませんが、数から行くと左翼側の「独裁者が死んだ」とする死亡歓迎陣営が、右翼側の「ありがとう,あなたはチリを救った恩人でした」グループを圧倒しています。間違いなく今夜は左右グループと警察の激突で怪我人や逮捕者が多数出るでしょう。
先週も一度書上げたチリの風を書き直すことになりましたが,今週もピノチェットは健在と書いた後で,死去のニュースが流れ,大幅書き換えです。
CNNやBBCなど国際テレビもこの特集を流しています。来週もチリの歴史の一部を作ったピノチェットの話題で明け暮れするでしょう。
ちゃんと立派な葬式が出るのかな? 
少なくとも政府は国葬にはしないとの明確なコメントを出しましたが,野党側は先日,共産党の前議長グラディス・マリンが死去したとき3日間国を上げて喪に服したのとは大きな違いだと不快感を表しています。

2) 汚職問題は問題点が明確なのにそれをどうするかの処方がとれず、またその疑惑議員の処遇も全く宙に浮いたままで、チリ政界のレベルの低さを証明していますが、なんとバチェレットの人気が上がってきて10月の46%から11月は51%の国民支持を得ていると発表されました。不思議ですね,これをどう解析するか。チリの一般市民はこういう質問にまともに答える気がしなくなったと見るか、国会議員全員は嘘つきだが大統領だけは別と見ているのか。
少なくとも疑惑の中心ジラルディ議員の選挙対策委員長が正式に起訴されました。じゃ、他の怪しい国会議員たちはどうなるのかな?

3) ボリビアコチャバンバで南米国家会議が開催されています。先日の選挙で圧勝した,ベネスエラのチャベスやブラジルのルラ大統領は苦戦の続くボリビアのモラレス支持を大声で宣言しています。
汚職にまみれているルラ政権ですが、彼への信頼は高くアメリカで一番高い人気を誇っています。ちなみにそのランクで2位がチリのバチェレット、これも汚職問題で揺れていますけど。つまり南米ではこれは通常の状態なのでしょう。ちなみにアメリカのブッシュの人気は低いですね。
さて国を二分して争っているボリビアですが、同国の世論調査ではボリビアの海問題と切り離して天然エネルギー(ガス,電力)をチリに売っても良いと考える層が着実に増えて55%と過半数を超えました。


(経済)
1) 11月の消費者物価指数は2ヶ月連続でマイナスでした。今回はマイナス0.2%で、通年で2.6%の物価上昇率です。確かにチリのインフレはコントロールされています。

2) 日本へ輸出された肉とワインのチリ発行の製品検査証明書が偽造されたものとわかり大問題。日本の税関が見破ったらしいが、チリの大失態。どうしてこんなことがおこるのか、ちゃんと調べてもらいたいもの。

3) 厚生年金
   新年金法で、最低年金は月当たり7万ペソ(1万4千円ほど)にしたいと与党グループは政府試案の6万ペソを拒否の構え。


(一般。)
1) 今年の最大の話題とでもいえそうな高校生の教育改革を訴えた反逆は尻すぼみ状態になっていましたが,いよいよ諮問委員会の最終結論が11日に出る段階になって,突然,一部高校生が反乱をおこし,最終答案はこの半年の間話されたことではないとし審議会脱退を宣言。会に残る学生グループもいて,分裂です。しかし半年前の彼らの動き(ペンギングループという愛称で呼ばれましたが)は目覚しかったが,老獪な他の委員になだめすかされそうになっていたのでしょうね。

2) アホな話題のトップはこのおっさんでしょうね。彼は再婚して、昔訪れたイースター島を新しい彼女と再訪。そこで「なっ、これがモアイ言うねん。石で出来てるさかい、丈夫なもんや。少々のことでは壊れへん。見ときや」こういうと大きな石でモアイを打ち始めました。これが二人しかいないのだったら,そのまま見過ごされたかもしれませんが,たまたま他の人がいてこれを通報,男は逮捕されました。その男、70代で、なんと娘が国土保全省の大臣でした。彼女はテレビ記者の質問に残念な出来事ですが特別なコメントはありませんと応えていました。罰金と懲役が待っていると言われますが、世間の目が見ていなければ,老齢を理由に釈放されるでしょうね。

3) チリを百人の人間で表すと
男性が49人,女性が51人、大学卒は16人、文盲は4人、最貧困は5人、8人は失業中で,何らかの障害を持っているのが13人、51人が借金に苦しんでいて、国外にでて経験のあるのは12人。チリがラテンアメリカで一番住みやすい国と考えているのは74人・・・・

4) 交通渋滞
首都サンティアゴのシンボルだった交通渋滞が地方都市にも伝染と報道されました。コンスタントに渋滞をかかえているのは4州のコキンボ,5州のビーニャとバルパライソ,6州のランカグア、それに9州のテムコとか,いやはや。


(スポーツ)
1) 国内リーグのプレーオフで、準決勝まで来ましたが,コロコロとコブレ・ロア,もう一方はアウダックス・イタリアーノとオヒギンスが対戦しています。初戦に大勝したアウダックスとコロコロが決勝進出でしょう。
コロコロが国内でも南米大会でも決勝まで勝ち進んでいるので,ファンの数が急増し,コロコロ・グッズが売れて売れて。ユニフォームなんかもうどの店に行っても無いらしい。コロコロ・ワインなんかも出ているし、ローヤリティが入ってくるチームは笑いが止まりません。勝てば官軍ですね。

2) テニスでは、ベテラン・リーグのリオスは無敵とか不敗とか言っていましたが、その神話も崩れ2週間前25連勝を阻まれた同じ相手に今週はロンドン大会の準決勝で(オランダの40歳の選手ですが)負けました。

以上