チリの風 その201 06年11月20日―26日

チリの風 その201 06年11月20日―26日

木曜日、プエルト・モンの飛行場で,正確にはその外で,一人のおっさんが自転車のそばに立っているのを見た。一目で外人とわかった。彼のそばに近づいていって話し掛ける。ドイツ人だった。ペルーのリマまで飛行機で来てその後,自転車でバリローチェまで行き戻るところとか。南米についてから50日目でホテルにはまだ一泊も泊まっていなといっていた。昔,日本にも行ったことはあるとかで札幌が良かったといっていた。冬の札幌に行って大通り公園に野宿したんだろうか?チリの後,豪州に飛ぶらしい。年寄りに見えたが念のため年を聞いてみると私と同い年だった。そうか,私も昔は野宿の旅をしていたが,このおっさんはそれをまだ続けているのか?私も来年のアフリカの旅が楽しみになった。


(政治)
1) バチェレット大統領は外遊から戻ってきました、しかし不思議なことに彼女の外遊はほとんどニュースになりません、以前なら大統領の出発から帰国まで夜のニュースに連日報道されていたものです。彼女の方から断っているのでしょうが、不思議な気がします。
戻ってきたらまず最初に汚職問題かと思ったら、彼女が最初にニュースに出たのは歌手のチャキーラと会った話。コロンビア人の彼女は今やラテンアメリカでもっとも有名な歌手ですが,彼女がチリで公演するためサンティアゴを訪問したので、バチェレットは彼女を大統領宮殿に招いたもの。二人で宮殿前広場に集まったファンに手を振っていました。
バチェレットはニコニコ笑っていました。だってこの方が私にとって楽しいんだものと言うように。

2) しかし汚職問題だっておばちゃんはがんばっています。
政治家は民間企業から政治献金を受けるべきではないと発言。身内からもその真意を疑われています。そんなことをすれば、献金が裏金に潜る一方だというわけです。
さらに国会議員の前で汚職絶滅のための戦いを宣言しました。ところが、その翌日、もう問題が出てしまいました。政府は裁判所の判断のでるまでは疑惑があっても役人,政府関係者をかばう方針をとっていますが,8月に既に有罪判決が出て,その最終審を待っていた国鉄総裁はとうとう有罪が確定しました。不正に自分の懐を肥やしていたというもの。前ラゴス大統領は彼のことをこれほど優秀な役人はいないと絶賛していました。じゃ、すぐに国鉄総裁の任を解いて,キリスト教民主党から追放して・・・のはずですが、全くコメントが出てきません。対策に憂慮でしょうね。情けない。日曜日,その本人が(自分から?)国鉄社長の職を辞任しました。で、テレビのカメラに向って,裁判で無罪を勝ち取ることに専念したいだって、よう言うよ。

3) 先週の風にも書いたように与党内の対立は深刻です。月曜日の夕刊紙の一面に与党のDCと野党の接触と大きく出ました。そうか、私のかねてから言っていた与党の崩壊の一歩かと思いました。新聞の一面トップって単に通行人の目を引くためのもので,内容が無いことも多い。(その日のニュースもそうだった)
しかしPPDの党内大会で、自党の疑惑ジラルディ議員を批判して党籍棚上げを宣言していたフローレス議員が,党首と並んで3人で組んだ手を上げていたのには驚かされた。疑惑の議員はいつまでも過去のことを話しているのではなくこの国の将来を討議すべきだと無邪気なことを言っていたが、それらを放置したまま次のステージに進もうとしたら国民が許さないでしょうね。こいつらの頭の中はどうなっているのか、その単純な陽気さに驚いてしまう。
PS(社会党)もその党大会で能天気なことを話しており、このアホ議員たちに天誅を早くくだしたいもの。

3) バチェレットは新聞記者にリーダーシップの不足を言及されると,それを真っ向から否定して,必要なときには私は決断をとる、それは机を叩いて部下を怒鳴り散らすことではないとしています。また不正疑惑議員に対抗して党籍凍結宣言した議員の家を私的に訪問したことを聞かれると,それは私のやり方で何を話したかは応えたくないと回答しています。
その議員がテレビの番組でコメントしたとおりのことを話したのでしょうが・・・
しかし彼女には何かが欠けています。彼女が解決してくれるだろうとか,彼女の助けを求めれば何とかなるという空気がありません。したがって彼女のところに最新の情報が入らず,時折彼女が私的に行動するので全体の流れが悪くなる欠陥を示し、おまけに懸案の汚職追放についての政府提案を与党,野党から疑問視されるようでは、前に進めるはずがありません。もう一度,よく周りを見回したほうがいいですよ。
「フジオさん、いつもいろんなこと書いてくれてありがとう。でもあなたは政府の外から見てるでしょ、実際はそんなあまいもんじゃないのよ。まぁいつか教えて上げれるかもしれないけど・・・」
それでも隣国,例えばボリビアが国を二分するような政治情勢になっているのと比べると平穏とさえ言えるのですが。

4) 残念ですが,やはりプロの目はごまかせません。ザ・エコノミスト誌の世界ランキングで,民主主義国家28国にチリは入れませんでした。その次のランク「民主主義がやや不足の国家」に入り,その2番目(つまり合計では30位)にランクされました。悔しい,悲しい,早く通常の民主主義国家に入りたいもの。ねっ,バチェレットさん

4) ピノチェットの誕生日が今週ありました。いつものように熱狂的なファンが彼の家の前に集まり,騒ぎました。90歳をこした彼もちゃんと顔を出して手を振っていました。それからおまけで、彼が書いた(とされる)手記を奥さんが読み上げましたが,軍事政権時の政治的責任は私にあるとし、それ以外の人権問題などは知らない?としています。

(経済)
1) 極端にチリ経済の成長が止まってしまいました。その分析がでてこないのが不思議ですが,これは07年に深刻な影響を与えそうです。もちろん経営者側は投資を控えようとするし,給料などの待遇改善に直接影響してきます。また失業率の悪化は避けられないでしょう。トなると今年,低金利の風を背景に売上を伸ばした家やアパートの売上が落ち,家屋の建設に陰りがでて・・・アメリカが直面している不景気と同じ局面です。
で,先行き懸念から長期の金利が急激に低下しているのが目立ちます。
一方,株式市場は高値持続で中心銘柄の平均株価は新記録を出すほどの好調です。
例のアルゼンチンからの天然ガス問題が影をひそめていますが,早く政府の最終的見解を聞きたいものです。相手側の手に踊らされている現状にはもう飽き飽きしましたから。

(一般)
1) チリの若者は一昔前のそれと比べると反逆度が低くなっている由。なにしろ家族を大事にしたいと96%の若者が回答しているらしい。それに何と95%の青年が大学院まで勉強したいとか,本当かな?

2) 犬に襲われる事件が相次いでいますが,自宅の庭で飼い犬にかみ殺される事件が先週あって,驚かされましたが今週も同じような事件。犬の種類はピッツブルと言われますが,かなり獰猛な種族で専門家の調教が必要とか。じゃもう少し大人しい種族を飼えば良いと思いますが。

(スポーツ)
1) サッカー
  サッカーばかりがスポーツじゃないといいながらサッカーのニュースばかりでて申し訳ない。南米カップ準決勝に進出したコロコロはアウェー戦も勝ってとうとう決勝進出。その深夜,首都サンティアゴのイタリア広場にあつまったファンは熱球的に決勝進出を祝いました。決勝の相手はブラジルを破ったもう一つのメキシコチームだったので、コロコロ選手団はチリへの帰国を取りやめメキシコにもう一週間残りました。
  さて国内リーグ戦は全部終了しプレーオフ出場チームが決定しました。一番苦戦したのは人気チームのチリ大学で,最後に滑り込み。プレーオフ第1戦をコブレロアと対戦,なんとこれに勝利。さぁ今年のチリのチャンピオンはコロコロだろうか、それとも意外なところからでてくるのか?
  笑ってしまうのはそのコロコロの主力選手で來シーズンから欧州に渡るマチアスの国籍が問題になっています。彼はブエノス・アイレス生まれでおかあさんがアルゼンチン人なのです。二重国籍と言うわけですね。でももうチリのナショナル・チームでプレーしたのでアルゼンチンのユニフォームは着れません。マチアスがもし今年の南米最優秀プレーヤーに選出されればこの問題は再燃するでしょう。

  
以上