チリの風 その197 06年10月23日-29日

チリの風 その197 06年10月23日-29日

イヤー、笑ってしまいました。失敗、失敗。先週のチリの風に「子供と一緒に日本人会主催の老人会に行きました」と書きました。もちろん敬老会の間違いです。敬老会は老人を敬う会、老人会は老人が集まる会。私の両親は老人会ですが、私はまだ老人会ではありません。

しかし夏時間になってくると、スポーツをする時間が増えますね。もう11月なんか土曜、日曜ともスケジュールが一杯。週末のスポーツ疲れを会社の事務所でゆっくりという感じです。社長、ごめんなさい。と、言えるのは仕事が極めて順調で、工場はフル稼動。もっとも私が仕事をするのではなく部下がしているわけですから、工員、セールスマンのみなさんありがとうです。

さてボリビア入りした小林・気境のお二人はとうとうウユニ湖です。「5千メートルの地点を自転車で通過しましたが厳しいです。もう余裕がありません」と報告がありましたが、若いお二人はまだまだやれます。老人会では無理でしょうが。と言っても水野さんのおとうさんは還暦祝に自転車で日本縦断をしていますから、若者に出来て中高年に出来ないことはありません。ぐぁんばれ中高年。まぁ日本人には元気な人が多いということでしょう。素晴らしい。


(政治)
1) しかし笑ってしまいました。今週は良く笑ってしまう週だ。何がと言うと、政府はピノチェットが香港の銀行に隠し持っていた大量の金塊が見つかったと報告。これを受け、右翼は(野党側と言う意味ですが)「また始まった。いつもの手でしょ。左翼が(与党側という意味ですが)窮地に立たされるとすぐにピノチェット問題を出してきて、世間の目に喧嘩両成敗の印象を与えようとするんだ」と冷たい反応。
もちろんこの発表をした外務大臣は記者会見に先立ちバチェレットと会談しています。
「大統領こんな話がおまんねやが」
「あなた、それ本当なんでしょうね。ガセネタならいやよ」
「いや、ホンマです。間違いおません」
「それなら、あなた発表してもいいわよ」
(もちろん私はその場にいたわけではなく想像しているだけですが)
それが、その二日後、当の銀行がそれは全く虚偽の報道で、そのようなピノチェット名義の大量の金塊は存在しないと発表。政府の面目丸つぶれ。
(しかし実際は、彼の金塊は存在します。それがその銀行ではなかっただけ。探し方が甘いわけですね)
新聞の投書に金は無かった、銀も無かった、あったのは煙だけという投書が掲載されました。市民におちょくられている政府がかわいそう。

2) で、その政府の窮地とは、先週火がついたスポーツ振興のための政府組織チレ・デポルテの不明朗な資金の使用方法です。いろんな名目をつけて政府から金を出させ、それが当初の申請どおりに使用されていない例が続々報告されています。そして一部は国会議員に渡り、選挙資金に使われていたことなどが明らかになってきています。
「何かの間違い」でスポーツ振興のお金を選挙に使いましたってコメントしてそれで話が終わるのなら裁判所はいりません。そのおかしな議員はほとんどPPD所属で、与党内でそれと対峙しているDCはあいつらのおかげでひどい目を見るのはこれが初めてではないと苦りきっています。
バチェレットは大見得を切って、誰が関連していようと最後まで事件の追及をすると発表しましたが、この問題の根源は前大統領のラゴスでしょう。しかもその犯罪を担当することになったのが内務大臣のラゴス(リカルド・ラゴス前大統領の息子)ですからね、右翼でなくても彼が本気で捜査するわけは無いと考えます。バチェレットはいかにも本気に見せるようにラゴス息子が作成した報告を一蹴し、もっと立派なのを来週までに作成しなさいと命令しました。
しかし隣国ペルーでアラン・ガルシアが今回の選挙で大統領に選ばれたとき、ペルー国民って健忘症かと思いましたが、こうして続々ラゴス時代の問題が見つかってきているのにまだ彼を多数の国民が支持しているなんて信じられませんね。私はもう彼に投票することは無いでしょう。(この前は彼に投票したのですが・・・)
前回、ラゴスの人気は高いと書きましたが(ラ・テルセラ新聞の発表)今週のエル・メルクリオ紙の発表でも同じ結果でした。
ただし新聞報道によるとチリでスポーツ振興の名目で資金のおかしな使い方をするのは軍事政権のときもあったとか、チリの伝統でしょうか?

3) さて欧州を外遊中のDCの党首アルベアルは各国で元首クラスと面談していますが、例の国連の投票でチリがべネスエラに投票しなかったことを高く評価されているようです。「あなたががんばったのね。おたくの社会党なんかベネスエラに入れたがってたものね」とか言われているのでしょう。チリ国民の過半数は今回国連でバチェレットのとった方式(どちらにも投票しない)を支持しているようです。
ところでドイツのDCは右翼系ですから、首相のメルケルはアルベアルに左翼中心の与党連合からチリのDCが離脱することを示唆したといわれますがどうでしょう。これは私がずいぶん前から言っていることですが。
その国連ですが、いつまでたってもグアテマラとベネスエラの間の決着がつかず、いっそベネスエラを降ろして、その替わりにボリビアが立候補してはどうかとの声も出ています。チャベスは、例え勝てなくともヤンキー帝国主義には一泡吹かせてやったと豪語しています。
それにしてもベネスエラとボリビアの中は良いようでベネスエラの援助でボリビアは隣国との国境に軍事基地を建設する予定と発表しました。先週アメリカに出張に行ったとき参加者の中にコロンビア人がいましたが、彼は軍事力ではベネスエラがコロンビアを凌ぐので、コロンビア大統領はベネスエラと事を構えるつもりは無いとコメントしていました。金に任せて武器を購入しているのでしょうね。
その軍事費の話ですが、ベネスエラは国家予算の1.2%を使っています。(13億ドル)で、チリはなんと国家予算の3.9%で、これはラテンアメリカでトップで合計32億ドルとか。こんなことでラテンアメリカのトップになってほしくはありませんね。銅の値段が07年も高値安定といわれるのでコデルコの利益も多く、来年の軍事予算も多そうです(軍事予算とコデルコの関係はまた別のところで説明します)

しかしその統計によると、先のコロンビア人の発言と違い、コロンビアはベネスエラより多い軍事予算を支出しています。国内でゲリラを抱える国ですから、その対策費用かもしれませんが。

(経済)
1) 経済成長率の陰りが話題になっています。年間目標の7%ははるかに遠く、5%も達成不可能と考えられていますが、金利を下げて経済の活発化を図るやり方は現在のチリでは正しい方法とはいえないとするコメントがでています。やり方を間違えると99−03年に起こった低成長と高失業率の二重苦を繰り返すことになるというわけです。秘策はあるのかな?
大蔵大臣によると秘策とはコツコツやることです。あっと驚く手なんかありませんとか。07年は原油価格の安定と銅価格の高値維持が見込まれ、経済成長は少なくとも5.7%が予定されています。
チリはブラジルやメキシコほどの経済規模はありませんが、安定した成長ではラテンアメリカのトップを走っていますからね。

2) アメリカ・キャリフォルニア州の州知事再選を狙うシュワルツネッガーは当地の農民を守るため外国産の果物を食べるのを止めようと叫び、その中でチリを名指ししました。選挙のときにこういう発言をするのは理解できるとチリ果物輸出連合は目くじら立てていません。

3) 先週発表された電気代の値上げ率エラーに関する処分は政府内でもめていてまだ結論が出ていません。このまま知らん顔をするのかな?


(一般)
1) 高速道路の通行料金
  サンティアゴに外国資本の出資により高速道路が続々出来ていることは既にお知らせしています。今まで1時間もかかった飛行場まで半時間でいけるようになったという便利さがあちこちで聞かれます。しかしこれはアメリカのフリー・ウェイと違い有料です。車にTAGという機械を取り付け電波を使ってその車がどの区間を何回通過したか記録し、翌月その使用料を払わされることになります。
  さてなんと来年からその通行料金が2倍になります。10%アップじゃないですよ、2倍ですよ。5万ペソ払っていた人は一挙に10万ペソ。これはドライバーは怒りますね。しかも高速道路の管理会社はこれは政府との取り決めと冷たい顔。もちろん政府はこんな値上げを当初から発表していれば国民の反発を買うのは必然だから黙っていたのでしょうね、しかしこんなやりかたではこの政府は長持ちしないのではないかと思ってしまいますがどうでしょう。バチェレットは、これを決めたのは私の政府ではないと言うでしょうが、同じ与党連合がもう10数年政権を握っているのだから、そんな言い訳聞けません。
  なんだか今週のチリの風は反政府運動の機関紙みたいですね。

2) 子供の性
  ここでも笑ってしまいました。しかし本人には笑い事ではありません。ある家庭で、子供さんが女の子ばかりでした。お父さんが男の子がほしいと・・・何度トライしてもまた女の子。しかし今週報道された夫婦はハンパじゃありません。何しろ8人の女の子がいて、じゃもう一度、これが最後の最後とトライすれば、なんと女の子の双子が生まれたとか。全部で10人ですよ。すごく苦しい家計なんですと奥さんがテレビで言っていたが、キャンプのように8人が並んで寝ているところにもう二人並ぶことになりました。

3) タバコの包装
  タバコの箱には喫煙はガンの原因になりますと書いてあるのが普通ですが、チリではそれからもう一歩進んで喉頭がんで声が出なくなった人間の写真を載せたり、このタバコはあなたを殺しているとか書くことになりました。
  どうこのデザインと聞かれた喫煙者はタバコが身体に悪いのは分かっているんだけどやめられなくてねと言いながらタバコに火をつけました。まぁタバコの箱におまえは馬鹿だとか、早く死ねとか書いてもタバコ好きの人はやめないんでしょうね。

4)F1はつい最近今シーズンの最終レースを終えたばかりですが、現在開催中の自動車ショーの目玉として、F1レーシング・カ−をサンティアゴ高速道路で走らせる計画がありましたが、政府の許可を得られませんでした。運輸省はつい最近も高速道路を高速で走って(これは冗談でなく150Kで走ってカーブで車がクラッシュした事故の話)事故を起こしている。そこをF1カーがそれをさらに上回る速度で走れば・・・きっとまねする人間が出てくるからとても許可できないというわけです。これはブラジルでもアルゼンチンでも許可されたショーなのですが、チリ政府が一番頭が固いことになります。それでも一般市民のクレーム?が運輸省にたくさん届き、とうとう土曜日、高速ではなく一般道路で短い区間を走らせることになりました。沿道は2時間も前から黒山の人だかり。しかしさすがチリです、F1カー走行コースに警察の交通整理を無視して市民が入り、ファンに囲まれるようにしてF1カーはなんと時速2Kくらいでゴールしました。


(スポーツ)
1) 南米大会の準々決勝に進出したコロコロはホームでヒムナシオに大勝したことは報告済み。今週はアルゼンチンに乗り込んで敵地で対戦。なんとそれを2対0で快勝、準決勝進出を決めました。しかしチリのチームがアルゼンチンに勝つのは気持ちの良いものですね。めったにある事ではありませんから。しかしこの試合、むこうのチームはチリのファンは一人もサッカー場に入れさせないと、入場券を1ドルくらいで売りに出し、自国ファンだけで球場を埋めました。異様な雰囲気でスタートした試合ですが、結果はお知らせした通り。素晴らしい。さてこの大会コロコロはどこまで行くのかな?で、コロコロ・ファンは大喜びで、会社で私のそばに寄ってきてニコニコしながら結果報告、最後にカトリカは弱いからなと嫌味。コロコロの天敵ラ・ウーのファンは苦虫を噛み潰した顔です。
そのコロコロとラ・ウーが国内リーグで今週対戦。この試合も先の試合と同じようにコロコロは相手側ファンに入場券を少ししか売らず、サッカー場をほとんど自分のファンで埋め尽くしました。そういうやりかたって合法なのですかね。試合は好調コロコロが4対2で快勝。

2) テニス
しかしゴンサレスは好調ですね。出る大会出る大会で上位進出、今週はスイスの大会で3大会連続の決勝進出を決めています。もっとも決勝では自国スイスでのびのびプレーするフェデラーとの対戦は全く良いところなく敗れ、彼との対戦成績は9連敗です。一度も勝てません。

それでも来月の上海大会の出場権獲得まであとわずか。

 

以上