チリの風 その196 06年10月16日-22日

 チリの風 その196 06年10月16日-22日

最低気温と最高気温の差が20度も離れた日がありました。その日は朝晩肌寒いくらいなのに日中は汗が噴出すほどの暑さになります。
さてアメリカ出張から戻ってきました。今年は国際線でランチレ(チリ航空)、日航、ルフトハンザ、今回のアメリカンと4社に乗りましたが、アメリカンが一番低いランクと感じました。機体、機内サービス、グラウンドサービスなどの総合評価ですが、もしかするとアメリカの異常なイミグレや通関手続きもそれに影響しているかもしれません。まぁ、これを書いたのは、昔、アメリカは世界でもっとも進歩した国というイメージがありましたが、だんだん薄れアメリカと日本、もしくはチリの間にたいした差はないと感じだしたせいかもしれません。
日本がんばれ、チリがんばれということでしょう。いやアメリカがんばれかな?
週末はいつものように忙しく、土曜日、親戚の子が新体操の南米大会に出場したので先ずそれを応援に行き、その後、日本人学校の運動会。(ソーラン音頭の踊りが素晴らしかった)夜は親戚を呼んで食事会。日曜日の朝は水野、リカルドのお二人と3人でマラソン練習。そのあと日本人会の老人会に子供と参加。その合間にチリの風書きですからね。忙しいです。
ところで日本自転車旅行隊の二人はアルゼンチンからチリのアタカマに入り、そこからボリビアのウユニを目指しています。そこへの道は世界で最悪の道路と世界で最高の景色だそうです。楽しそうですね。


(政治)
1) 当然今週一番の話題は国連の安保委員会の非常任理事国の選挙でしょうが、チリのメディアは極端に抑えた表現にしています。政府がマスコミにお願いしているのだろうなと感じてしまいます。それくらいニュースバリューの割に取扱量がありません。
さてバチェレットは今週ドイツに外遊しました。その理由がもう一つ分からないのですが、今何故ドイツに?既に計画があったからでしょうか。
彼女は軍事政権時にあちこちで国外生活をしていますが,その中でドイツに4年暮らしています。大学にも入っていますから、ドイツ語は堪能で現地人とドイツ語で会話していました。ドイツとチリの共通点はどちらも女性の首長を持つことだとコメントしていました。
さてその国連での投票の件ですが、私の予想ははずれ、チリはベネスエラに投票しませんでした。その競争相手のグアテマラにも投票せず、日和見を決め込んだわけですが、私にすればそれが一番まずい手と思います。白黒をはっきりさせるというのは大事なことで、逃げているだけでは物事は進みません。国内外の重圧をこれで一時凌いだつもりのバッチェレットですが、世の中そんな甘いものではないでしょう。月曜日の投票で有効投票数を獲得する国が無かったので、その後も投票は繰り返されていますが、理事国はまだ未決定。さぁいつまでも態度をはっきりさせないでいれるかな?アメリカからも圧力はかかっているようですし。
バチェレットは軍事政権時のチリの孤立が問題の根源と見当はずれのコメントをしているようです。だってもう民政化してから4代目の大統領ですよ。それとも今までの3人は孤立化を防ぐ(から抜け出る)努力をしなかったのかな?
グアテマラもベネスエラも圧倒的な投票を集める力がないからこうなるわけですが、中途半端に宙に浮いているより、アメリカに貸しを作る、もしくはチャベスに貸しを作るのどちらがチリにとって有利か考えなければならないはず。
与党内のDCとの確執も避けたいし、アメリカにもベネスエラにも悪く思われたくないというのがこの態度未表明の原因でしょうが、それで指導力発揮といえますか?反チャベスのDC内では与党内の争いに勝ったという雰囲気が出ているようですが、それは言えてる。
そんな彼女ですが、世間の目は暖かさを取り戻し、彼女を支持するとする層が、前回の調査より3%も増加し、53%になりました。私の目には彼女が輝きを取り戻して仕事しているようにはとても見えないのですが、チリ社会は彼女を応援しているようです。

2) 学校問題
やっぱり先週の風に書いた通り、5月の学生パワーはすごかったが、もう今回は気の毒なくらいです。無理して街頭にでても、警察とぶつかる力が無く逃げるばかりでは衝突する意味がありません。占拠していた学校から警察権力に追い出され、その時学生が多数逮捕されていますが、それを勉強したい多くの学生を妨害する運動の終焉は望ましいとするのが世論の基礎になっています。半年前とは大きな違いです。
学生運動の中心になっていたある一人の女子高校生は最近退学したとか。運動が過ぎて授業に出席できず成績が落ちたのが原因と言われます。本末転倒ですね。そういう私も大学時代は学生運動に明け暮れ、勉強をあまりしませんでしたが・・・・。
しかし政府の中途半端な教育政策が学生側の中途半端な闘争方針に助けられているということでしょうか?

3) ボリビアとアルゼンチンが天然ガスの輸出に関し20年間の契約をしました。その20年間でボリビアは170億ドルの収入になるとか。ボリビアは自国から出た天然ガスをアルゼンチンがチリに再輸出するのは認めないとしています。チリに売るのは(売るとすれば)自分たちが直接するという意思表示です。
さてボリビアから事業家グループがはじめてチリを訪問します。来週のそれはどうなるのか?


(経済)
1) 成長率の鈍化については既にお知らせしました。で、それが誰の責任かが論議されています。前大蔵大臣が中銀のやり方に問題があるとしたのに対し、現在の段階ではマネタリー政策が鈍化の原因ではないとする考えが中心で、逆にそれを訴えたエイサギレ前大蔵大臣の次期大統領職への挑戦の可能性が薄れたとされています。
もっとも新聞の論調に、現政府の中には稼いだものを上手く運用する能力のある人間はいるが、稼ぎを上げる力のある人間はいないとする痛烈な記事もありました。

2) チリの経済事情がよくなって、一般市民の懐が豊かになった証拠でしょうが、自動車保有台数は2001年から15%もアップし、2005年には240万台になりました。登録場所では首都圏が43%を占め、集中化は顕著です。
さてサンティアゴ自動車ショウ−が始まりました。南米で一番大規模なものです(これは宣伝文句の受け売りで、ブラジルにもっと大規模なショウ−があったらごめんなさい)私の会社も何かこれに関連しているようで、入場券がまわってきました。

3) 電気代の値上げが月曜日発表になり、4.5%とされました。幾らもしないうちに再度発表があり、値上げ率は7.6%と変更。それはどういうことかとの質問には答えずエネルギー関係官僚は逃げました。
単なる計算間違いなのでしょうか?それとも最初から高い数字を出すと大規模な反発が起こると考えた意図的なエラーなのでしょうか?さらに土曜日の新聞では首都圏ではそれは10.7%となっていますが、いいかげんにしてほしい。
 エネルギー関連局の部長職のクビがとびそうです。


(一般)
1) チリの家族構成は政府の統計研究所の発表によると夫婦だけで子供無しが27%、一人っ子が33%、なんとここまでで60%と約3分の2を占めます。子供2人が25%、3人が11%です。10年前と比べると子供無し、一人っ子の増加が目立ち、チリも他の先進諸国と同じく少子化の波は強烈です。

2) スペインで暮らすチリ人の話は先のチリの風にも出ましたが、今週はなんと婦人科に調子が悪いと行ったところ閉経と診断され投薬を受けたチリ人女性がそのまま月日がたって、なんと最後は出産したという話題。女医は赤ちゃんが無事に生まれたからこれ以上の幸せは無いでしょうとエラーを全く認めないため、その夫婦は女医を訴えることにしたとか。しかし無責任な医者もいるものですが、自分が妊娠しているかどうか分からない女性もいるのですね。赤ちゃんはおなかの中で動くでしょうに。

で、それと同じようなケースが続いてチリでも起こり、その場合、おなかの赤ちゃんは死亡しました。

(スポーツ)

1)サッカー

 確かに今年のコロコロは好調ですね。南米カップの4回戦、アルゼンチンのヒムナシオ戦をホームで戦い、なんと4対1で大勝しました。

来週、敵地で少しくらい負けても準決勝進出は固いですね。ただ試合の最後の場面で観客席から物が投げ込まれ、それが相手側の選手に当って負傷させました。チリの名を汚すこうした行為をどうしてちゃんと取り締まれないのかな?
それから以前書きましたが、その主力選手でマチゴールの愛称で親しまれるマチアスがとうとうスペインのチームと契約しました。なんでも契約金は9百万ドル、彼は来年毎月3千4百万ペソ(7百万円)の給料を試合に出ても出なくてももらえるとか。すごいですね。これでコロコロは今年の選手の放出による収入が1400万ドルになるとか。優秀な選手はチームを救いますね。

2)テニス
しかしゴンサレスは好調です。これで今年4回目のATPツァーで準決勝進出です。とくに今週のマドリッドのマスター・シリーズでは決勝まで危なげなく進出し、決勝で世界1位のフェデレーと対戦しました。テレビで少し見ましたが、第1セットはタイブレークにもつれこむほどで素晴らしい熱戦でした。(最後はあっさり負けましたが)
世界ランキングで10位以内に入り、年末開催の上海の国際トップ選手大会(世界のトップ8が出場)の参加資格までわずかです。

3) スポーツ援助
チリのスポーツは隣国アルゼンチンに比べると低いレベルにあることは残念ながら、認めざるを得ませんが、その貧困な中で少しはスポーツをよくしようとチレ・スポーツという政府組織が一般の体操振興を援助しています。しかし、今週その援助の中で、不正に騙し取られているのが多数見つかり、新しい政界のスキャンダルになっています。
それを新聞記者に問われた政府側のコメントは、「それらはすべて前政府の問題で、現在は適正に援助は行われている・・・・」
しかし前政府はすばらしかったと常に発言しているバチェレットなどこれを聞いて恥ずかしくないのでしょうか?
不思議なことに今週発表の次期大統領には誰が望ましいかの人気投票でその不正援助の問題を起こしているラゴスの返り咲きが一位にランクされています。チリ人の考え方が良く理解できません。


以上