チリの風  その195 06年10月9日-14日

チリの風  その195 06年10月9日-14日

しかし13日の首都圏に降った雨はすごかったですね。ほとんど丸一日降り続き、いつものように各所で水害騒ぎを起こしました。普通この時期、サンティアゴに雨は降らないものですが。それで14日のサッカー教室も中止にしました。
もちろん、翌日のアンデスの素晴らしさは息をのむほどでした。雪をかぶった山の横をいつものようにマラソン練習をしましたが、それだけで幸せを感じます。
ところで14日の夜中に今年の夏時間が始まりました。この日の12時が翌日の1時にジャンプします。まぁ1時間ここで損をするわけですね。冬時間になるときその1時間は戻ってきますが。
さて日本人女性自転車隊の二人はアルゼンチンを北上しサルタに到着。チリで言えばアントファガスタくらい。楽しさと辛さが交互に訪れますとメールがありました。何だか実感できそうですね。もう旅に出て1ヶ月、旅が日常化するころではないでしょうか?ボリビアに向かうそうです。
さて私は14日の夜、出張でアメリカに飛びますので、今週のチリの風は1日適応範囲が縮まっています。


(政治)
1) 先週の風でお知らせした通り、今週の話題はベネスエラ問題と教育問題。
  さて先ずは外交の話題から。盛り上がりました。例の国連安全委員会の関連ですが、チリの近隣諸国ではチャベスと組んでいるのはボリビア、アルゼンチン、ブラジル。さからっているのはペルーだけ。
しかしベネスエラのもつエネルギー資源はチリには確かに魅力的。それより明白なのはチャベスはモラレスに多大の影響力をもっており、「おい、兄弟、友だちのバチェレットを助けてくれや」と言えば、ボリビア政府は崩壊の危機を犯してでもチリに天然ガスを出す努力をするだろう。しかしその逆にアメリカとの関係はギクシャクするだろう。しかしブラジルやアルゼンチンにはアメリカは口を出さないのだから(出してもあまり効き目が無い)チリもそれを見習うことが出来ないはずは無い。
  私個人としては、バチェレットはベネスエラに投票するつもりだったが、それで国内政局を押し切る自信が無く、理由をつけて反対する気持ちに傾いた。そこに大使発言問題が起こったので、それを理由に拒否表明を出そうとしたが、反応が遅れ、その前に大使を召還、変更されてしまったので機会を失い、現在どうすれば良いのか占い師に頼んでいるところ(もちろんこれは冗談です)
  来週の月曜日、その結論がでます。
  もう一方の教育問題は、一部の学校で再度占拠が始まりましたが、半年前と違って一部の生徒は冷ややかな目で見ています。予想とずいぶん違う感じです。このまま占拠状況が継続すると、授業日数不足や赤点のつく科目が増大し、多くの生徒が留年、落第の目に会うことがはっきりしているだけに教育改革のお題目だけで学生は動かなくなってきている。
  もっとも政府、文部省の対応にも問題点があるのは確かで、何をどうするのか、主目的をはっきりさせ、それに至る過程(委員会の目的、国会の権限、政府の責任)を明白にすべきだが、だらだら話し合いが続いており、確固とした進展がないとする学生の言い分が正しいやに見える。

2)インテルアメリカ人権法廷はチリ政府が情報の適切な公開を行っていないという判決を出しました。この判決は1998年にツリリウムというプロジェクトで国会議員などから要求された情報を政府は公開しなかったというもの。チリ最南部地区のこのプロジェクトで自然破壊が起こると、一部の団体から反対が起こり資料公開の要求が出たのに対しチリ政府はそれを無視したらしい。この判決を受け政府はその対応を検討中。
それに続いて今週の第2段、73年の軍事革命時に暗殺された人間の家族が出していた同国際法廷での判決は、該当犯人をアムネスティ案を適応して罪にとわれないとしたチリ国の決定は認められないとしました。チリ政府は対応に苦慮しています。

(経済)
1)石油価格の低下から10月の物価上昇率はマイナスと予想されています。物価上昇で市民生活が混乱するという図式はチリでは遠くなりましたね。
物価が上昇しなくても給料が上昇しなければ生活は苦しいですが。来年の公務員の昇給は5−10%が適当と識者の間で言われています。
ただ経済成長率が止まってきたのが大きく響き、銅の価格はもう少し高値安定しそうなのですが、来年の経済停滞が心配されています。
景気の陰りが噂される中国、米国よりさきに停滞突入は苦しいですね。
どういうわけか、株式市場は好調が続き、選択平均株価が今年は20%も上昇して笑いが止まりません。

2)日本との自由貿易交渉
具体的にどういう日程で交渉が煮詰まっていくのか新聞には出ませんが、チリの果物のうち99%はこの協定で利益を得るとの報道が出ました。ミカンの類は協定外のようです。

(一般)
1)南部の農牧地帯にある農場をマプチェの人間が襲うというのはよくあることですが、今週新聞に載ったレネさんの農場はこれまでに23回も襲われた由。この先、残っているのは私を殺すことだけだと彼はコメントし、チリに警察や司法は存在しないと苦りきっています。今週の襲撃は彼の農場を警戒中の警察官にも発砲したというのですが、頭巾で顔を隠した犯人グループを一人も逮捕できず、警察もここまでなめられては悲しい。
マプチェの人間にすれば、彼らは私たちの土地を奪ったのだから、それを取り返そうとするのは当然のことと犯罪意識がほとんどないのが根本の問題です。

2)地下鉄がサンティアゴ新交通計画に参加。
来年2月から地下鉄がその計画に参加します。値上げしないでバスと地下鉄の組み合わせが使えるようになると利用者には非常に便利になります。ただ現行の一年3億4千万人の乗客がこの取り組みで2倍以上の7億2千万になると見込まれ地下鉄当局はどうやって混乱を防ぐが検討中。
しかしこの新交通計画(トランサンティアゴといいます)は混乱続きで実際に政府が考えた全計画が実行されるか疑問です。
今週、私の働いているセクションでセールマンを増員しようと、私は二人を面接しました。その内の一人がこの計画の中心的なAバス会社で働いていました。面接時、彼は私に半失業ですとコメント。えっと聞きかえすと、従業員削減案にそってくびを言い渡されたのだが、会社がまとまった退職金を対象の社員に払えないので、もう少し働いてくれと言われたとか。確かに気の毒。
もっともバス会社はチリ政府が約束を守らないから適切な企業経営が出来ないとしているのですが。

3)家族間の暴力から被害者が出る(通常は女性ですが)のはチリではよくあることですが、今週のニュースでチリ人女性がスペインで同居人に殺される事件がありました。チリに3人の子供を残してスペインに渡り、仕事を探した結果、結局は売春婦になり、そこで知り合ったスペイン人男性と同居をはじめ、妊娠3ヶ月だったらしいが、最後は殺されたというわけ。外国に新天地を求める人間は多いけど、彼女のような結末になることもあるのですね。

4)チリの健康保険組合の発表ですが、チリでは61%の労働者は太りすぎです。つまり正常の人は少数ということです。
さらにタバコを吸う人は44%もいて、おまけに野菜や果物を適切に取っていない。まぁ早死にか、苦しい老後が待っているでしょうね、これでは。


(スポーツ)
1) 先週に続いて今週も風は順風です。
   オートバイの世界ラリー選手権でチャレコ・ロペス選手が今年の450CC の部で年間優勝が決定。ホッケーに続く世界チャンピオンです。

2) 続いてサッカーも南米大会3回戦のコロコロはホームにコスタ・リカのチームを迎え何と7対2で大勝。こんなに大差がつくとは地元のファンも思わなかったでしょう。次の4回戦はアルゼンチンのチームとの対戦が決定しています。
さらに国際親善試合の対ペルー戦は敵地で行われ、これもなんと1対0で快勝。前回、敵地でペルーに勝ったのはもう20年ほど前のことらしい。・・・

3) 先週お知らせした世界選手権優勝のローラースケート・ホッケー選手団は大統領官邸に招かれ大歓迎会。今まで国から全く援助をもらえない全くのアマチャ−だったのが、優勝した結果、選手一人当たり約1200万ペソ(約250万円)の報奨金と、大学で勉強する奨学金なども出るらしい。一部の選手は欧州のプロ・チームからオッファーが来ている由。勝てば官軍ですね。
しかしまだ続きがあります。大統領官邸を訪問した翌日選手団は招かれてバルパライソの国会へ。そこでのハップニング。なんと議員の大半が欠席して選手団を迎えず、おまけに彼女たちを迎えた下院議長は何を勘違いしたのかスペイン大会で優勝とコメント(先週、チリでおこなわれた選手権を知りませんでした)国会議員って新聞を読まないんですか?

4) テニス
他の種目でのチリ選手の活躍に押されて?テニスでもATPウィーン大会でゴンサレスが大活躍。準々決勝で世界4位のアルゼンチンのナルバンディアンを破って準決勝進出しました。
シニア−の部ではチノ・リオスは今年まだ負けしらずの全勝ですから、これも最後まで勝ちつづければ、世界1位といえるでしょうね。

5) 7月に始まったスキーのシーズンは少し前に終わりましたが、今年は昨年に比べると、若干少なめですが50万人がスキー場を訪問とか。しかしなんとその40%が外国人だったというのがすごい。
一般チリ人にはスキーはあまりにも金のかかるスポーツですからね。もっとも軽い登山なんてお金はかかりませんが、チリ人で登山している人は少ないのは何故かな???


以上