チリの風  その194 06年10月2日-8日

チリの風  その194 06年10月2日-8日

先週のマラソン失敗からかなり落ち込みました。試合の翌日、会社の昼食時、職工さんにそのことを話すと、引退なんて考えてはいけませんと強く言われました。そうかこれは友情かと思ってジーンとしていると、フジオさんみたいに何回レースに参加しても一回も勝てないギネス級のランナーがやめてしまえばこれからからかう機会が無くなるじゃないですか。お前ら、おちょくっとんか?
多くの励ましのメールをいただきましたが、そのなかで田中さんから「足の健康にはマラソンではありません、歩くことですよ」フーム、考えさせられる。
しかし八日(日)の練習で16Kを今シーズン新記録の75分で走りきりました。意味は無いけど意地はある。
さて日本人女性隊の小林・気境さんはメンドーサからボリビアに向けアンデス山脈を横に見ながら自転車で北上中とか。気持ちよさそうですね。


(政治)
1) テレビのスイッチを入れると、突然政府の番組が始まりました。チリでは時々あるのですが、政府が、民間のラヂオ・テレビ局に頼んで、政府政策の番組を全メディアで同時に流させるのです。今回は07年政府予算が出来上がったことでした。前年対比8.9%アップのこの予算案について政府は当然のことながら、皆さんが幸せになれますように全力でこれを作成しましたと訴えていました。野党は当然のことながらこれでは社会はよくならないと批判しています。
予算をチリ発展のためにもっと大幅アップしたいとする層とこれ以上の拡大は混乱を招くだけと反対する意見があります。銅の高価格がまだしばらく見込まれるなど税収入が十分なら、一般市民の税金を下げるとか、現在19%も取っている消費税を下げてはどうかとの意見もありますが、 バチェレットはその戦略を考慮していません。

2) ベネスエラのチリ大使がとうとう更迭されました。もちろんこれはそうすることでチリとの関係を改善しようとするわけで、別に向こうが反省しているわけではないでしょう。さらに深読みすれば、そういうストーリーを考えて、前大使にわざとDC批判をさせたのかもしれません。
今回任命された女性大使は73年の軍事革命のときなんとチリにいて、キューバ左翼と間違えられ逮捕されたとか。わざとチリ人の心にジーンと来るような人間をこの場で送るなんてなかなか手が込んでいます。じゃ国連安全保障委員会の選挙にチリはベネスエラに投票ですか?
どの国に投票するかというこの問題は国内外に大きな波紋を呼びそうです。国際的にはアメリカ政府との関係が最大課題ですが、その他にも南米諸国との連携に影響を与えそう。また国内では与党連合の中で社会党系はベネスエラ寄りで、キリスト教民主党DCは明確に反チャベスですから、これからの政府運営に多大の影響を与えます。教育問題と共に10月のバチェレットの最大課題になることは間違いなし。
さてどういうわけかメキシコの新大統領がチリを突然訪問。24時間もいないで戻っていきました。何か理由があるのでしょうね。その他に元スペイン大統領のアスナールがチリ訪問し政界各党と面談しています。

3) 次回の大統領選挙に右翼のUDIからロンゲイラが出馬宣言。
前回の右翼側候補だったラビンはそのロンゲイラと二人で共同記者会見しロンゲイラの出馬宣言をしました。バチェレット政権は今年始まったばかりなのですが、もう次回選挙の話で、早過ぎるのか、現政府がそれほど頼りないのか。彼は現在の右翼側で一番力がありそうですが、与党にとっては脅威になりません。それはあまりにはっきり右翼側にたった言動をしているので、その陣営以外の人間から反発が強く、右翼が過半数を占める可能性の無い現在、彼は大統領にはなれません。右翼側が政権をとる可能性があるのは、 RNがUDIと決別し、与党のDCと組んで中道政権を狙うときでしょう。
これに関連したラビンのニュースです。チリの風その191で彼が軍事政権時代に起こったことを自己批判したと伝えました。彼は軍事政権は功罪半ばするとしたわけです。まだそれが何を意味しているのか具体的な事実は公表されていませんが、それらの事実を知る立場にいた人間として自己批判をしたいと彼は発表しました。今週、彼の書いた文章を新聞社が入手したとかで、さらにラビン旋風が続きそうです。右翼政党から彼は強い批判を受けていますが、少なくとも私には彼の言っている二つのことは正しいと思われます。すなわちチリの復興にピノチェットは多大の貢献をしたが、左翼系運動者の埒拉殺害では疑問の余地の無い犯罪を犯したというものです。

4) ボリビア問題が再燃か?
現大統領のモラレスは何年にもわたって住民を組織して以前の政権を困らせてきましたが、現在同じことを他の指導者が彼に対しておこなっています。今週ある鉱山で労働争議が起こり多数の死者が出ました。これが彼の政権崩壊の一歩なのか、彼が実力を見せつける第一歩なのか興味のあるところ。
さて同国の経団連に当たる組織のリーダーがチリの新聞に、「ボリビア天然ガスを売れなければ政治危機から抜け出せない。そしてその売り先はブラジル、アルゼンチンと決め付けるのは間違い」とチリに向けてアピールしました。この動きがボリビアの政策として認識されるか、労働争議のように一般社会が拒否するかはこれから先の話。

5) 教育問題
来週のトピックになるはずです。サンティアゴで再度、学校占拠の動きが始まり、来週火曜日(月曜日は祝日)から反政府運動が再開となっています。政府が実施中の改革委員会が正当に機能していないことに対する示威表示でしょう。


(経済)
1) 石油価格の下降から9月の物価上昇率はゼロでした。これは9月の数字としてはこの過去75年で最も低い数字。(75年前も現在と同じ統計手法が使用されていたかは知りませんが・・・)で、過去12ヶ月の合計は2.89%となり、今年1年の物価上昇率は3%前後に落ち着きそうです。
ところで石油価格が落ちていますが、どうしてですかね。あまり上がると消費量がへるとでも考えたのでしょうか?それとも上がるのに手を貸した投機筋が他の戦略にしたのでしょうか?
また8月の数字が悪かったので、06年のチリ経済成長は目標の5%を割るかもしれないと発表されました。さてどうなるのか。

2) 先月書きましたが、アルゼンチン産の牛乳がチリの絡農を圧迫しています。それに対応してチリ政府は輸入牛乳に超課税を課すことにしました。もちろんアルゼンチン側はそれに納得せず国際機関に提訴するとしています。アルゼンチンの酪農は(主体の牛肉はもちろん、チーズや牛乳も)チリのそれとは規模も内容も各段に上ですからね。チリ側は政府援助がなければ、まともな勝負には勝てません。
その関連ですが、チリと日本との自由貿易協定が締結寸前です。その協定にチリの酪農、農業部門から批判が出ています。それは他の分野に比べ、この分野には協定のメリットは(ほとんど)ないと言うものです。政府は100%上手くいくネゴはないが、それでも2年後の見直し時で改正可能としています。


(一般)
1) チリのロス・アンデスとアルゼンチンのメンドーサを結ぶ鉄道は2009年の12月から操業開始を予定です。アコンカグアアメリカ最高峰)を横に見ながら走るこの鉄道は冬季は激しい吹雪に見舞われることになりますが、その対策として線路に熱を加え、凍結を防ぐらしい。約250Kのこの路線が完成したら、私も乗ってみたいですね。

2) チリは徴兵制の国で、軍隊で働くのは国民の義務ですが、受け入れの人数(1万6千人)は決まっていてそれ以上は入隊できません。今年歴史上、はじめて希望入隊者がその受入れ可能な人数を上回り、抽選になりました。これは不景気で、軍隊にでも行こうかという人間が増えたのか、軍隊のイメージが上がり、軍隊でいろんな経験をしてそれをこれからの人生に生かしたいと若者が考え始めたかのどちらかでしょう

3) イースター島のモアイが今週からライト・アップされました。夜になると暗闇の中にモアイが浮かび上がるというもの。しかし私がその島に行った昔はろくに道路も無かったのに、今では舗装道路も出来て、モアイが明かりの中に浮かび上がるですからね、チリも進歩しています。


(スポーツ)
1) 今週はチリの勝利が連続しました。その一つがサッカー親善国際試合の対ペルー戦。苦しみながらも3対2の勝利。
それから勝ちましたね。久しぶりにコロコロが外国で。南米カップ3回戦をコスタ・リカのチームと対戦。敵地で4対0の大勝でした。次はサンティアゴで消化試合。4点差で負けるのは考えられないから、2軍をだしてもいけるでしょう。その次はブラジルかな?ところでこの試合にコロコロの監督がチームに同行しませんでした。その理由は飛行機が怖いからとか。確かに何とか恐怖症というのはありますよね。私も閉所恐怖症で、地下鉱山が怖いし、エレベーターも好きではありません。

2) まだあります。しかもそんなサッカーの話よりもっと重要な話題が。チリで開催中の女子ホッケーの世界選手権で、なんとチリが世界の強豪を破って初優勝。準決勝ではポルトガルを1対3の劣勢から逆転。決勝は延長までもつれこんでスペインに快勝。そうかチリも世界レベルのことができるのだ。おめでとう!
準決勝の試合に勝ったとき監督が、どんなスポーツでも世界選手権の決勝に出るなんて夢でしょうと、控えめに自信を語っていましたが、政府もちゃんと予算をつけて世界に挑むスポーツを応援してほしい。
チリの女性選手として世界で活躍中はローラースケートのペニャン(先日の韓国での世界戦主権で5個のメダルを獲得)、水泳のケブリッヒ(南米大会で3個の金メダル、北京の世界大会で8位入賞)ペロット(女子ゴルフツァーで優秀あり)などですが、チリでは残念なことに、あまり話題になりません。


以上