チリの風 その193 06年9月25日-10月1日
1日の日曜日、ハーフマラソンがあって仲間と張り切って参加しました。しかし目標達成どころか意気消沈して帰ってきました。その原因は悪い記録で、なんと1時間58分。それはコースが上り下りの厳しい難コースだった所為もありますが、なんと15K地点で足に痙攣が出始め(通常ではフルマラソンで30Kからなのですが) 最後は全力で走れず、不完全燃焼に終わりました。多分年齢的なものから痙攣の頻度が増加していると考えられます。そのためこれが人生で最後のレースかと考えて落ち込んでいます。ところで初めてハーフマラソンに参加した水野さんは1時間51分で完走。その実力を見せつけました。
さて先週お知らせした冬季オリンピック選手の小林さんとライターの気境さんは忙しい日程を割いて日本人学校を訪問し、子供たちにスポーツの楽しみについて講演会をしました。そのあとアルゼンチンに向かって自転車で出発。ちゃんとメンドーサに到着したとか。さすが彼女たちのパワーはすごい。
(政治)
1) 今週は特に目立った大ニュースがありませんでした。バチェレットはほっとしているでしょうね。とにかく目立たないということは批判の風も少ないということですから。
さて彼女個人のことでは、今週誕生日を迎え、あちこちでハッピィバースディの歌が聞かれたらしい。また彼女とその家族についてのドキュメント映画と本が出版されたそうです。空軍将軍だった彼女の父親は73年の軍事革命で反ピノチェットとして逮捕されているわけですから、彼女ほど波乱万丈な人生を送っている人は世界的に例を見ません。
2) 政府の政策を批判する動きの中では高校生の教育改革問題と、病院などの医療関係者のストが目立ちます。
今週行われた学生デモは以前と違って警官がサンドイッチ規制をして暴動化を許しませんでした。私の北大時代でもそういうデモ規制があったのを思い出します。
さて懸案の教育改革の素案が出ましたが、ぱっとしないものらしく、自分たちの意見が反映されていないと委員会に入っている学生代表は脱退の動きも見せています。
それから先日9月11日の軍事革命記念日のデモ行進でモネダ宮殿に火炎瓶がなげられた事件がありましたが、それに関連して、アナルキストグループのアジトを急襲し外人一人を含む5人グループが逮捕されました。それを反政府グループへの先制攻撃と評価する意見と政府のデッチあげにすぎないとするものもありました。
医療関係者のデモはもっと過激で、抗議のため焼身自殺まで図っています。それは消火器で消しとめましたが。政府はベースアップなどできる限りのことはした。将来への責任ある政府として、これ以上のことは出来ないと突っぱねています。カトリック教会も仲介に入っていますが、先行き不透明でした。ところが日曜日政府の最後の努力が実ってストは終結の模様です。
3) 外交問題では例のDC党の批判をしたベネスエラの大使はカラカスに一旦帰国しました。チリから大使を換えてくれと注文されたので、ひとます様子を見るのでしょう。これでは十分でないとチリ側は納得していませんが、国連での投票問題が絡んでいるので、まだ一悶着ありそうです。
ブラジルは大統領選挙です。汚職で側近が続々逮捕されていますが、現職ルラが強く変更はなさそうです。しかし貧乏人への援助として食料を無償で百万人単位で配布しているのが人気の原因と聞くと、どこの国も大変だというのが分かります。その食料無料配布の費用は誰が出しているのですか?チリもそんな政策をとる可能性はあるだろうか?
ボリビアは国内問題が一向に改善しないのでチリとの外交問題に力が入らないようです。チリ問題の進展がないことが国内問題に反映しないよう、外交問題は秘密事項が多く、メディアには細部まで報せることは出来ないとして逃げているようです。何しろ大統領の人気がたった4ヶ月で信任するが81%から52%に落ちています。
それがなんと日曜日のニュースでボリビアはチリに天然ガスを売りたいと大きく報道されました。もちろん大統領がその意見を持ち出しても国会や国民がどう出るか分かりませんが、5月にそれを国有化したのに資本が無いため一向に増産できない現状を抜け出るためにはチリと組むのが一番ですからね。
ペルーから新しい大使がチリに赴任してきますが、なんと彼の就任時、彼に随伴して閣僚や経済界から大挙してくるらしい。しかしチリとペルー両国間の関係は新政権になってから明らかに変化が出ており、ペルーとチリのLGN輸出契約の締結はこの10月とされている。
これが実施されるとペルーからのLGNガスは2010年からチリに到着予定。チリ北部のメヒヨネス(2州)にはペルーから5州のキンテロには他の国から(BG・ブリティシュガスが有力)天然ガスが納入される予定。これでアルゼンチンからの天然ガスに一喜一憂される事態は解消。ただし原材料の価格がアップすることから一般家庭の電気代はこの先6年で65%アップと推測されている。
ところで、チリに入国してそのままペルーへ戻らない人間(不法滞在)が05年に9万4千人に上ったとか。両国の間の厳然たる経済格差を示している。(チリからペルーに仕事を求めて不法に滞在する人間は恐らく皆無)
(経済)
1) 世界経済フォーラム(WEF)の発表ではチリは世界125か国中国際競争力総合で27位にランクされましたが、問題のある点としては性の格差(女性にチャンスが少ない)が110位、公立学校のレベルで103位が目立ちました。汚職やインフレーションは極めて高い評価水準ですし、政治の安定性も世界のトップレベルなのですが。
2) 8月の経済指数が発表になり、エスコンディーダ鉱山が26日もストに入ったことなどもあり、鉱業セクションが前年対比12%も低下しました。これにより06年のチリ経済成長は5%までにも届かないかもしれないと予想されています。ただし6−8月の失業率は前年同期の1.6%モ低くなり改善が見られます。
3) 1−9月のチリ投資効率としてはサンティアゴ証券所代表銘柄に投資をしていれば16%の利益になりこれがトップ。ユウロに投資をしていれば12%の利益。このように全般的に投資効率が良かったので同時期に厚生年金へ追加投資をしていれば(現在チリでは政府が決めた正規の天引き金額のほかに任意で追加が可能)5―8%の利益となっている。
私はドル預金をしていたのですが、株で儲ける能力は無いので、ドルが落ちると思ってユウロに換えたのに、そのときのレートよりドルが続落せず、結局損をしています。
今はドルが力を取り戻し、年初よりペソ安になっています。つまりドルを買った人も利益が出ている。もっとも私は1ドル700ペソ台で買ったのに、今は550ペソくらいですからね。
先を見たつもりが読む力が足りなかった。単に厚生年金の上積み貯金にすべきだった。
(一般)
1) チリの刑務所は危ないというのは既にチリの風で書かれていますが、犯罪者だけでなく今週は看守が刺されて重傷という事件が起こりました。何と予算が無いので看守は安全チョッキの使用が守られていないらしい。つまり犯罪者の増加に伴った刑務所や看守の増加がされないので、以前と同じ狭い刑務所・少ない人数の看守で大量の囚人を見張ることは不可能というのが結論。しかしもうこうなるとどうしても半分くらいの囚人がお互い殺しあって死んでくれるとちょうど良いということになるのだろうか?バチェレットのコメントはまだ出ていないが。
それから裁判所の中も危ないです。もう最近何度も囚人が判決の出た後に収監所に戻る前に裁判関係者に襲われる事件が起こっています。例えば娘が暴行された家族がその犯人にリンチを加えるといった事件ですが、裁判所(及びその周辺)の安全も確保できていません。
また麻薬取引で有名なラ・リグア地区の浄化案は前政権から実施されていますが、5年経過しても全く成果を見ない大失敗となっています。パトカーが怖いから入っていけない地区があるなんてまるでブラジルのようです。困った、困った。
それから注目を集めたのが、家の壁の落書きです。その色んなマークがちゃんとした標識になっているということで、丸や三角やいろんな組み合わせが、この家には女性のみ住んでいるとか現在バケーションに出ているとかの意味になり、それを見て空き巣や泥棒が入るというもの。困った、困った。
で、もう刑務所の中にいるのと同じように、そういう地区の住居は屋根から入り口から全部金網で締められています。どんな住み心地?困った、困った。
2) 交通事故の話は別にチリでなくても世界中どこでも同じですが、サンティアゴで大学生が、高速道路の入り口で横転し3人死んだ事故は繰り返して報道されました。時速148kでカーブに突っ込んだらしいが、それでは全員死亡も無理はない。無駄死にですね。
3) 空の交通量
1−8月の旅客数は国内国際線とも4−5%増加していますが、8月に限れば若干の落ち込みとなりました。国際線ではバリグ(ブラジル)がオペレーションを止めたこととロイド(ボリビア)が80%も便を削減したのが響いているらしい。
4) 政治の分類にも入るのだが、2002年にチリ政界を揺るがした汚職事件に関連して有罪になった与党の議員がその後どうなったかという記事が新聞に掲載されました。そのほとんどは厳しい現実の前に泣いているらしい。なんでも新しく企業を興すほど資金が無いのでエンパナーダを売って日々をしのいだなんていう元議員もいて泣かせる。しかし国会議員といっても見かけは派手でも実際はかなり乏しいのがよく分かる。その後の選挙ではほぼ全員が所属していた政党以外から出た人間を応援しているのも面白い。選挙応援は彼らにとっては人生の情熱だが、かって所属した政党は自分を切って捨てた憎い政党ということになるのだろう。わかるその気持ち。もっとも汚職の元議員にがんばれという気は無いけれど。
5) チリはカトリックで保守的な国というイメージがありましたが、それがこの数年かなり自由化されてきています。最近の世論調査で離婚は大半の市民が許容するようになり、同性愛に関しても半数が理解を示しています。堕胎はそれらに比べると低くまだ3分の1です。今週そういった同性愛者のパレードがサンティアゴでありました。
(スポーツ)
1) 今週、会社で聞きました。世界で最悪の12人が発表されたというのです。一人目はビン・ラディン、その次の11人はチリのナショナルチームとか。こんな冗談を考えるチリ人は、笑っているのか怒っているのか知りたいですね
ペルーとの国際親善試合が近いですが、私の見るところでは引き分けが精一杯。勝てるわけは無いでしょう。
しかし新聞発表ではチリのサッカー選手は世界中の国でプレーしています。例えば欧州ではイギリス、スペイン、イタリア、オランダなど、南米ではアルゼンチン、ブラジル、北米ではアメリカ、メキシコなど20数カ国になるらしい。彼らは各地でレギュラーとして活躍しているのだから、それらと国内組みを上手く組み合わせれば、少しはマシなチームができるはずなのだが。
2) テニス
来年のデービスカップのワールドグループ戦で世界ランキング11位のチリは2位のロシアと再度対戦することになりました。(07年2月)しかしロシアといえば今週アメリカを破って決勝進出の最強国ですからね。苦しい。しかし試合場所はチリで行われるのは素晴らしいニュース。チリの選手はホームに来ると結構強いのですから。
3) 女.子ホッケーの世界大会がチリで開催されます。さてチリ代表は?
初戦は対イギリスでチリの大勝でした。
4) スキー場がこの日曜日で閉鎖になります。マネージャーの話では客の入りも良く良いシーズンだったとか。とくに外人(ブラジル人)が増加したとか。
以上