チリの風 その192 06年9月18日-24日

チリの風 その192 06年9月18日-24日

国中で派手に祝われた18の祝日ですが、なんとその期間の交通事故の死者は全国で41名とか。これではお祭りを素直に喜べませんね。週の始め、やや崩れた天候ですが、少しづつ回復しサンティアゴの週末は申し分のない天気でした。マラソン練習にも力が入り、週末はへとへとになるほど走っています。
さて今週は珍しいお客さんを私のアパートに迎えました。日本からのプロ・スポーツ選手で冬季オリンピックに2度出場とか。南米にあまり知られていないリュージュを普及させようとライターの相棒と二人で自転車を使って1年かけてまわるそうです。二人が無事に帰国できるよう祈りたいものです。


(政治)
1) しかし今週の国連総会すごかったですね。もっともバッチェレットなんか世界の注目を集める力はありませんが、あのベネスエラのチャベスは目立ちました。チリのマスコミには通常、彼を道化師扱いすることがあるのですが、あれだけ派手に反ブッシュ宣伝を行うと、もはやその位置を越えています。ちなみにキューバは当然としても、ボリビア、アルゼンチン、ブラジルなどもアメリカのすべてに同調はしないとの旗を掲げました。南米だけでなく世界の各地にチャベスに同調する元首が増加しており、ブッシュとしては頭の痛い方向に事態は進んでいます。
しかしチャベスが言うようにブッシュって本当にアルコール中毒なんですかね。
まぁその仕返しにベネスエラの外相が帰国するとき、飛行場でテロとの関連があるとして足止めを食わしている。しかしアメリカも露骨に嫌がらせをしますね。まぁそれが外交の楽しいところ。
さてそれがもろにチリ内政に影響しています。国連の安全保障委員会非常任理事国にチリはグアテマラかベネスエラに投票することになっていますが、アメリカは何とかグアテマラに一票頼むとしています。私は石油関連でチリはベネスエラに投票するだろうと思っていました。ところが今週ベネスエラのチリ駐在大使がなにを思ったのか、「チリ政府はわが国に投票したいと思っているのだが、与党の一つDCがそれに反対しており困ったものだ」と記者団の前で演説しました。彼独自のパフォーマンスかカラカスカラの指示かわかりませんが、これにチリ政府は過激に反応し、同大使を召還してほしい(違うのに換えてくれ)とベネスエラ政府に要請しました。
ここまで言われて国連でベネスエラに投票すれば、チリ政府の面子丸つぶれだから、それを避けるために同投票時には棄権する可能性が高いと見ます。10月の中旬チリ政府はその態度を表明するそうですが、それまでのお楽しみ。

2) その国連関連で訪米中のアルゼンチン大統領と向こうでばったり出会ったバチェレットは全く言葉を交わさず握手だけでその場を離れたらしい。もう会いたくも見たくもないという感じだろうか。
それも分かる気もするが、ほんの数ヶ月前の蜜月時代、「私は何を差し置いても貴国アルゼンチンに来ました」と胸を張って言っていたのはいったいなんだったのだろう。キヒネルの老獪さに比べると彼女のあまりにも純情なのが気の毒。

3) もっとも国内で歴代大統領が頭を悩ましていた軍隊との関係は今までのヒッチがほぼ消滅し、今週の軍隊記念日のパレードでバチェレットは陸軍長官などと好関係にある印象を与えました。
この日のパレードの目玉は新規加入のF16戦闘機でしたが、閲覧会場の真上をわずか数秒で飛び去っていきました。
   それからラテンアメリカ(欧州のスペイン、ポルトガルを含む)の大統領調査で、チリのバチェレットは国民の指示を受けているランキングの1位を占めました。大統領は良い仕事をしているかとの質問にチリでは71%がイエスと答えトップ。2位はボリビア、3位はアルゼンチンでした。下の方に位置したのはペルー、エクアドルコスタリカでした。
おかしいな、チリでの世論調査ではバチェレットを指示するのは50%以下なのですが・・・


(経済)
1) 日本との自由貿易交渉がずいぶん進んで、締結間際とのニュ−スが流れました。両国は既に大筋で合意し11月に調印といわれる。
何だか先週までの報道と違いますが、チリ側の一般企業からも交渉の情報が的確に伝わってこないとの批判が出ています。
なにしろ農産物がこの協定に入っているのは奇跡的ですとの日本大使コメントも出ています。果物、肉、鮭、ワインとチリ製品のエースが日本市場になだれ込む日が近いのか?
その条約に関連して、チリに住む約100人の日本企業重役に関するニュースが新聞に出ました。彼らは事務所とゴルフ場でお互いのコムニュケーションをとっているらしい。その年齢は30―50歳で奥さんの同行はあるが、子供は教育問題から普通チリには帯同してこない。マンションの選択には注文が多く、費用は会社持ちなので家賃が高くても文句はない。それに100万ペソは払っているらしい。(この項3のチリの給料レベルと比較すれば彼らのマンションの値段が良くわかる)

2) 石油価格の下降が目立ちます。
1リットルでガソリンが600ペソになりました。6ヶ月ぶりの安値。バス代はまだ下がっていませんが。

3) 給料レベル
銀行連合の発表ではチリの給料レベルは次の通り 
  一番低所得は7万ペソ以下で全体の11%
  ついで7万から15万ペソで34%
  15―30万ペソのレベルが31%なので30万ペソ(6万円)を取っていればチリの平均給与を超えていることになります
一番高いランクが75万ペソ以上で、それは労働者の6%です。
チリの給料は日本の何分の一?


(一般)
1) 今週、チリでもっとも注目を集めたニュースはインディオ・フアンと呼ばれるギャングのチーフが殺されたことでしょうね。会社の昼食時でも良く話題になりました。まぁ例えて言えば、日本の何とか組みの組長が刑務所に入り、そこで対抗する暴力団に殺されたというものです。その種の事件で、暴力団関係者が殺されるのは特に驚くことでもありませんが、驚かされるのは刑務所の中で刺殺されたことです。刑務所の中に安全はないのでしょうか?外部なら夜の闇にまぎれて・・・もありうるでしょうが、刑務所の中なら四六時中監視されているわけでもっとも安全ではないのでしょうか。ところがさらに驚かされたのは、今年に入って(今年だけの数字ですよ!)なんと30人以上の人間が刑務所の中で殺されています。えっ?刑務所の中のほうがシャバより危ないのか?
刑務所幹部の言うには「見張りの人間が少なすぎるのですよ、何百人の収容者をわずか数人の刑務官で見張れといわれても」
   で、一般市民の意見としては。「刑務所や刑務官の数を増やすことはない(これ以上、税金を使うことはない)刑務所の中で彼らが殺しあって半分くらい死んでしまえばちょうど良い。」
これは極端すぎると思うが、どうでしょう。日本はここまでひどくないでしょうね?
さて、その殺された男の家族は一家そろって犯罪者で、兄弟全員が逮捕歴を持っている。また彼の長男は射殺されているが、彼は警察に殺されたと生前、主張していた。
また彼の家を取材に行った報道陣は地域住民から暴行を受けたり、水をかけられたりしている。要するに地域ぐるみの犯罪組織が出来ているということだろう。

2) 病院のストが過激になってきました。警官との武力衝突もでています。
このままストが続くと政府としても過激分子の懲戒免職、新規に雇用者を探すということになるでしょう。
なんでも全国で53名の組合員がハンガーストライキを実施中とか。
しかし来週から病院関係の組合だけでなく教職をはじめ各種の労働組合がストを予定しており、騒然としてくる可能性があります。どうするバチェレット?

3) 経口避妊剤問題
新聞に意外な転換とかかれたように、裁判所は先週差し止めの判断を出した14歳以上の女性へのピルの提供を今週は一転、合法としました。じゃ裁判所の中で何がどのように変わったのかちゃんと国民に説明してもらいたいもの。
これで法的問題は回避され、あとは実際にそれがどのように請求者の手に渡り、また服用されたとき、どういう効果(副作用)があるのか、フォローする必要があります。
18のお祝いの日、毎年カトリックの大聖堂(カテドラル)でミサが行われ、チリの政界財界のトップがそれに参列します。その場で、大司教は子供に、望まれて生まれる子供と、望まれないで生まれる子供の違いは無い。すべての子供は神の前に同様の重要さを持っている。従って政府が行っているピルの配布はカトリック教会は容認できない由のスピーチを行いました。政府関係者は子供の間に区別は無いとの発言は政府認識と同じとコメントし、対決を避けました。
チリでは15歳で70%の生徒が性的経験があると発表されていますから、避妊問題はここでは避けては通れない問題です

4) 郵便問題
郵便がつかなくて困るという家族はこの問題の可能性があります。何と不法ゴミ捨て場の中から大量の郵便物が見つかり、担当の郵便配達人に問い合わせると俺、歩くの嫌いなんだよとの回答。(一日平均6時間歩行するらしい)それだけではありません、他の地区で燃やされたゴミの中から同じように郵便物が見つかって、その担当者は自分は配達業務に疲れとりますと回答。しかしチリの郵便事業もかなりの問題を抱えていることがわかります。合計すると1万通の手紙が行方不明らしい。
郵便配達の人間がテレビに出て、たった二人の不届き者のために私たち全員を悪者にするのはやめてほしいと訴えていました。給料を聞かれると16万ペソと回答していました。

5) ペルーからの不法移民の流入が止まりません。今週は北の国境付近でなんと52名のペルー人を運んでいたトラックが捕まりました。その運転手は今年6月に18名の不法入国者を運んでいて逮捕されています。運転手もペルー人も甘い汁を狙って不法な企みをやめないわけですね。


(スポーツ)
1) サッカー
   南米カップの2回戦、コロコロ対ペルーのボロネシの試合はサンティアゴで行われコロコロが1対0で勝ちました。向こうでの試合に活躍したペルー側の日本選手サワはこっちでは不調で全選手中最悪の評価を受けていました。
   この結果、コロコロが3回戦に進出し、次はコスタリカのチームと対戦。


以上