チリの風  その191  06年9月11日-17日

チリの風  その191  06年9月11日-17日

もうチリはディエシオチョ(18)の真っ只中です。どこの会社でもお祭り用の臨時ボーナスを出して、木曜日か金曜日にアサード(焼肉)とエンパナーダ(肉野菜入りのパン)を赤ワインを飲みながら食べて盛大にお祝いします。それの出来ない会社は社長が身を縮めているはずです。日本でいうと盆と正月が一緒に来たような、ラテン式ではまるでカーニバルの雰囲気です。

しかも今年の18は4連休になったので、20万台以上の車が首都圏から脱出。しかし天候にも恵まれたこの週、遊びまくった後、仕事に戻る力が残っているのか心配。

私は彼らのように盛大に飲んだり食ったりというのに馴染まないので、週末いつものように変わり映えのしないマラソン練習の他、映画(ユナイティッド93便)に行って、サッカー場で勝利の感激を味わいました(最近不調のカトリカが5対1の大勝でした)

(政治)

1) バチェレットはアルゼンチンに行き敵地でキヒネル大統領と面談。もちろん両方ともスペイン語の国だから通訳なしで1時間ほど話し合ったらしい。例の領土問題や天然ガス供給のハードな問題は避けたようで、最終コメントとして「両国の通話チャンネルが確保できたのは喜ばしい」などと言うわけのわからないことを発表している。しかし彼女にはこんな厳しい局面で相手を説得、脅迫、泣き落としなどの手は仕えないだろうと考えてしまう。商売ならこの手のことは日常ですからね。

さてキヒネルはその面談に遅れて出席、バチェレットはそのあとの日程を変更せざるを得なくなったらしいが、キヒネルは遅刻の常習犯で欧州でもフランスでシラクとの会議に遅れ、プーチンをロシアの空港で待たせ、オランダ女王との夕食会に出席せず・・・しかしよくそれで一国の大統領職が勤まるものですね。

ところでアルゼンチン問題は、領土、天然ガスの他にもあり、例えばチリ南部のバルデビアでアルゼンチン産牛乳がチリ政府の無策で国内産を駆逐する勢いを見せているのに抗議して農民が道路にミルクを撒いたりしたが、バチェレットの耳にはどう入るのだろうか?

2) そうそう例の堕胎ピルの問題ですが、今週、裁判所がこれを違法とし配布取りやめを命じたので、政府はその対策に苦慮中。また、その取り扱いで揉めていた政府とカトリック教会の間での会話が復活の兆しとか。何を裏で取引しているのかな?

それよりもっと大事なのはキューバで開催中の非同盟国の集まりです。少し前までは日本、イギリスのようにアメリカと組むのが発展、前進への国策と考えられていましたが、もうアメリカに往時の力が無いことがはっきりしてきましたから、この会議の参加国のように非同盟国内での切磋琢磨が勝利への近道になるのかもしれませんね。チリ代表(バチェレットは参加せず)もこれに参加しているが、派手な出番はありません。ボリビアのモラレス大統領は出席しましたが、この会議でボリビアの海問題を取り上げませんでした。自重したわけです。

ところで国連の安全保障委員会非常任理事国にベネスエラを推すか他に投票するかチリの与党内で揉めています。これはバチェレットのリーダーシップを見せるいいチャンス。彼女は来週、ニューヨークへ出発。さてチリは投票時ベネスエラを助けるのか?

3) 木曜日バチェレットが公共事業省の新分野に8億ドルの予算を計上し地方の発展を図ると発表、さらに金曜日は5億ドルの追加で教育問題を充実したいとしたのを受けて、土曜日の新聞に最近バチェレットはこのように4日に一度は打ち上げ花火を上げているとし、合計で(従来の予算のほかに)20億ドルのフレッシュマネーが必要となっているが全くまとまりが無い。どこかから不平が出ればそれを抑える(なだめる)総花式予算を組みそうだと痛烈批判。

彼女のお母さんが、私の娘を苛める仕組みが出来ているようで、何をしても批判の嵐、これでは本当に大統領はかわいそうとコメントしました。このチリの風でも彼女の批判は毎週出ていますが、それは何も私が彼女を嫌っているわけでなく、彼女は人間的に魅力のある人だと認識しつつも大統領職には向いていないと毎週色んな事項を取り上げてコメントしているわけです。(あっ、それが批判なのか?)

4) 今週もっとも迫力のあったのは彼女でなく、元大統領候補だった右翼のラビン。右翼というとピノチェットを擁護して左翼・共産党と戦うというのがイメージですが、最右翼UDIの推薦で大統領候補に2度までなった彼がなんと軍事政権に協力した人間はここで自己反省をして世間に謝るべきと発言。UDIの人間からラビンのアホ発言はこれが最後かな?とからかわれていました。しかし彼の発言は右翼の人間にはショックだろう。もっとも反省するのは自分だけにして、他人のことには口を出さない方が良いとの意見もある。

かねて私の言うようにチリの政界は右翼、中道、左翼の三つに分かれて政権争いをすべきでしょう。もっとも今の右翼って魅力ある人間がいないからこの先10年は勝てないでしょうが。

(経済)

1) ある経済雑誌の発表でラテンアメリカの安定性と経済のモラルに関する国別ランキングが発表されました。チリは昨年に続いて首位でした。今年の2位は不思議なことにアルゼンチン、3位はメキシコ、4位はベネスエラで、ブラジルは5位にしか顔を出さないのが厳しい。なんだかんだと言ってもチリはラテンで1番汚職が少ない国ということが実証されているわけ。しかし2位がアルゼンチンというのは想像できないが?

2) 中銀は今年の経済成長は予想より低く5%前後と発表。ただし07年はそれよりずっと延びて5.5%は行くだろうとしています。その根拠は来年は予算が増えて、公共投資の伸びが今年より見込まれるからとか。バチェレットは上手く舵取りできるかな?

(一般)

1) 18の前に11の話。アメリカでは9月11日というと航空機がニューヨークのビルに突入した事件の日にあたりますが、チリではピノチェットによる軍事革命記念日にあたります。毎年、この日、デモが行われ、多数の逮捕者が出ます。今年もその例外でなく、デモ隊が投げた火炎瓶が何とモネダ宮殿の窓を突き破って中に入り炎上しました。30年以上前の1973年のあの日を思い出させるような事件でした。しかし大統領府の宮殿に火炎瓶を投げているのにそれを警備の警官が阻止逮捕できないものでしょうか?

2) そしてその後に18が来ます。チリ人に18って何をお祝いするのですかと聞くと何と70%の人間が間違って応えたらしい。つまりほとんどの人間がチリの建国記念日、つまり誕生日ですよと応えている。チリのスペインからの独立は9月ではなく2月。で、9月11日に第1回のフンタ(国内政治委員会)が開催されています。チリ人による実質的な政治が始まったわけです。じゃ、何で2月でなく9月を祝うのか聞かれそうですね???

とにかくチリ人にとってこの週は、クエッカを踊る、赤ワインをのむ、アサードを食べる、エンパナーダを食べる、凧を揚げる、フォンダに行って飲んで食べて踊る、チリの旗を掲げるのが愛国の表し方だそうです。

バチェレットもあちこちでクエッカを踊っています。それを踊れない私が言うのもなんですが、彼女の踊りは今ひとつと思います。しかし専門家に言わせるとバチェレットの踊りはエレガントだそうです。

3) 既にお知らせしているように公立病院で働く人たちがストに入っています。で、重傷の病人が何人か死亡しました。適切な治療、医療が受けられなかったためですが、しかしストをしていない費用の高い私立には一般の病人はいけません。困ったことです。

世間の批難がこれに集中したので労働組合は18の間はストは中止、救急病院も含め患者のアテンドをしっかりするそうです。

4) しかしアホなニュースですが、イスラエル大使館の人間がバーで暴れ国外追放になりました。日ごろのストレスか、ピストルを出して暴れたのでしょう。

5) 国道に空軍機が着陸しました。サンティアゴから南に行く道路で、私も仕事で頻繁に使いますが、思いもよらない事故がありました。空軍のプロペラ練習機が、エンジン不調から一般道路に緊急着陸。しかし車が走っているその間に空から降りてきたんですからね。車を運転していた人間は驚いたでしょうね。何するネン?幸い、パイロットにも車の運転手にも怪我人は出ませんでした。

5) 今年からチリの高校で中国語の授業を取り入れたところがありますが、けっこう漢字も分かっているようです。新聞に「私は学生です」(私是学生)とチリ人高校生が書いて、横で中国人の先生が笑っている写真が載っていました。日本語が中国語に負けているのが悔しい。しかし日本語は1億人超、中国語は10億人ですからね。

(スポーツ)

サッカー  

1)またコロコロの話になってしまう。南米大会の2回戦にペルーのタクナに出かけたコロコロは敵地でボロネシと対戦し2対1で負けました。試合の翌日、コロコロファンから藤尾さんのところも嫌がらせをしてくれるねと言われ、何のことか良く分かりませんでしたが、決勝の2点目を決めたのがマサカツ・サワと言う日本人だったようです。サワって沢でしょうね。少し前のことですが、チリに高橋さんがプレーをしに来たときはすぐに親しくなって、彼に私のサッカー教室の助手をしてもらいましたが、ペルーに日本人プレーヤ−がいるのは知りませんでした。

   まぁ来週のホームでは1点差以上で勝って3回戦進出をしてもらいたいもの。たまにはチリのチームにも日が当たらないと寂しい。

   土曜日、ひいきのカトリカの試合を見に行きました。対アウダックス・イタリア−ノでした。前半1対1でしたが、見ていて全く面白くありません。で、警備のおっさんにそれを言うと、「彼はチリのサッカーはそうなんだよ、ゴール近くまで行ってもまだ味方にパスを回してシュートの機会をまとうとする。遅いんだ。その中ではコロコロのフェルナンデス(マティアス)は違う、思い切って打っていく。で、キーパーがそれになれていないから得点の機会が増えるのさ。」そう高い評価を受けたマティアスは来週、スペインのチームに買われることになりました。フームなるほど。

 2)コロコロの宿敵チリ大学(ラー・ウ−)は破産寸前で、破産管理委員会が株式会社化を図っているがそれに反対するグループが力でそれに対抗し、何だかチームごと身売りに出ることになりそうだ。もっとも本家のチリ大学が大学の名前を使うのは認めないとすれば、その新チームはほとんど値打ちの無いものになってしまうので、本気で買いに出る人間が出るかどうか?

テニス  

1)もうここまでくるとスポーツなのかファッションショーなのかわかりませんがチリのATPナンバー1プレーヤ−のゴンサレスにアルゼンチンの女性プレーヤーの恋人が出来、その二人が他のカップルとのダブルスの試合を披露しました。スポーツ部門と芸能部門のテレビ関係者が二人を追いかけて大騒ぎ。まぁ生活を楽しんでください。

2)それからリオス選手は30歳の若さながら今年からシニヤ−の大会に出場しています。何と勝ってばかりで、今まで出場したすべての大会で優勝です。なんと20連勝で、優勝カップが5個。あまり彼ばかり勝つと大会が面白くないと思いますが、現実は彼が出るようになって観客が増えたそうで大会主催者は來シーズンも彼に出てもらいたいと熱い思いをぶつけています。しかし相手が40歳、50歳ではね。

以上