チリの風  その183  06年7月3日-9日

チリの風  その183  06年7月3日-9日

首都サンティアゴは金曜日,土曜日,日曜日と連続して雨になりました。金曜日は第5州のサン・アントニオ周辺で働きましたが、タイヤを検品していて雨に少し濡れました。サンティアゴも雨と聞いたのでどうだったかなと思っているといつものとおり、道路が冠水、車の通行不能となっていました。雨の量はたったの14ミリだったのですが。
土曜日のサッカー教室は中止、でもその夜、日本人会で日本食フェァがあり賑わいました。日曜日はいつもの仲間とマラソン練習,でも雨に濡れて16Kコースを走りきれず。やっぱり中高年に雨のマラソンは厳しい。


(政治)
このチリの風を日本(もしくはチリ以外の国)で、読んでおられる方は先週私が,オバちゃんなに言うてんの?と書いたのを受けて、じゃそのおばさんは来週(つまり今週)どうリアクションするのか考えられたと思います。それが当たるようになるとチリ・ウォッチャ―としての精度が高いことになりますね。じゃ、彼女は今週どう動いたか、見てみましょう。

1) バチェレットの人気が急下降。一ヶ月で10ポイント落ちて44%に。これは彼女にとって厳しい試練です。おまけに拒否率が20%から35%に大幅アップ。これが続くといつまでこの女性が大統領職についているのかなどと言われそう。
しかし野党側の人気も同じく下降しているのか注目されます。チリの風はそれを見抜いて先週既に指摘しましたが、与党の失策をテイクチャンスできない野党の情けない実力を国民は見抜いているわけですね。
    さて懸案の犯罪の増加について、ある新聞は一面で犯罪の犠牲者になったと届け出た家族は今年になって減少していると報道しました。
笑ってしまいましたが,これなんか政府の依頼に新聞社が応えた例でしょうね。それはラ・テルセラ新聞です。その新聞は前日には刑務所に入る人間の75%は再犯と政府攻撃の記事を書いているのですが・・・。
会社の昼食時、横に座った整備工場の工員さんが,苦い顔をして昨日私のアパートに泥棒が入って・・・DVDとか盗まれたそう。もう怖いからアパートを近々変えますと聞きました。その日、私の部下のセールスマンが、事務所に入ってきて車から工具や事務用品を盗まれた。その書類の中に定価表が入っていたので,再発行してもらえないかって。なんだか泥棒の話ばかりになりそうですね。
    今週,その朝釈放された犯人が同じ日の午後,警官に発砲して逮捕されたというのも話題になりました。裁判所の方はその犯人が再犯で犯罪をすぐにでも犯す可能性があるとの情報をちゃんと知らされなければ、必要以上の拘置を請求するわけには行かないとしています。つまり犯罪者管理のシステムに問題があるわけですね。
    政府は国会に大急ぎで、再犯犯罪者の刑罰改正,警察の拘置権拡大などの法案を提案準備しているようです。これを日本では泥縄と言うのでしょうか。
ともかく先週と違って,今週はバチェレットは犯罪者にはマノ・ヅラ(固い手、つまり腰を据えてというスペイン語式表現)で行きますと表明しましたが、どうかな?
    土曜日のウルチマ・ノチシア新聞はトップに「かあさんの苦しい日」と見出しをつけました。言えてる。

    不調の続くバチェレットですが,他の今週の失敗は?
a)しかしこれもひどい話ですね、政府は何を考えているのか。家のない家族に政府が援助で安く家を作ってあげるというのは良い話ですが,その家が何と9m3しかなければどうでしょう。ベッドを一つ置くともう空いた場所がなく食事は外でするなんて笑い話みたいです。住宅環境庁の次官がこれをベースに部屋の拡張をすればよいのですよなんてまじめな顔をして言っていたが、そいつの脳みその中が心配です。
b)さて先週、厚生年金の改定を検討していたマルセル委員会の最終答申が発表されましたが,それに関連して政府は今週最低年金支給額を全員75000ペソにしたいと提案。この他にも政府は若年労働者に年金積み立ての補助をするなど大判振る舞い的に笑みをばらまいています。これは将来の政府に影響することで、バチェレットの人気取り政策を数世代先の政府がどう取るか?
c)本土とチロエ島の間に架けられることになっている橋について政府(公共事業省)と民間会社がもめています。橋をかけることは決まっていた事項なのですが,新大臣がその実効性について疑問をはさみ,橋の通行料は誰にも払えないほどの高額になってしまうからこの橋の建設は再度検討する必要があるとしたもの。しかしそういう計算は既に終わってその結果、GOサインが出たのでしょうが・・・
d)アメリカの麻薬取締り委員会がチリの北部は麻薬の動きが極度に活発化していると警告しチリ政府の警戒強化を訴えています。
そんなわけで日曜日の新聞の特集記事にバチェレット・フィーバーの終焉かときつい内容が掲載されました。さて来週はどんな人気取りを発表するのでしょうか?

2) アルゼンチンを訪問したチリ政府代表団は天然ガスの問題で厳しい壁にぶつかりました。値上げを取って安定供給を確保するか,あくまで値上げに反対して供給問題を常に抱えるかの選択です。出発前から何も期待できない代表団とされていましたが、確かにその通りで代表団はこれを両国大統領のネゴにまかせる事にするようです。
天然ガスの料金を50%アップくらいの所で落ち合って,両方とも勝ったと言うコメントを出すのでしょうか?

さてボリビアの選挙ですが、同国の新聞には「反分離派が勝って国の分離が始まった」と出たそうです。つまり全体では51%が反対に投票、しかし9州のうち4州で分離賛成派が勝ったからです。ボリビアの古くて新しい問題、東西格差問題(国の東に位置するサンタ・クルスは西側の州、ラ.パスやオルロなどとは肌が合わない)は継続です。

   メキシコの大統領選挙はかってない混乱の内に終わりましたが、新大統領はチリについてラテンアメリカのモデルともいうべき国で、その発展振りは注目に値するとしています。そういう風にチリは外からは見られているわけですね。


(経済)
1)  今年上期の貿易収支は歴史的な大黒字となりました。黒字が102億ド ルとなり何と前年対比90%のアップ。すすすごい!
輸出が270億ドル,輸入が168億ドルです。しかし銅価格の高騰がこれをもたらしたわけですが、神風ですね,チリにとって。
先週3.4ドルまで戻りましたと銅の価格をお知らせしましたが、今週は3.5ドルに付けています。
で、5月の経済成長は6.1%を記録し、それまで06年は期待したほど成長が見込めないとの予想を覆しました。
と言いながら、5月の物価成長率は0.6%を記録し、同月の記録としては11年ぶりの高いものになり黄色信号。ガソリン代のアップが大きく影響しています。北朝鮮のミサイルでガソリン価格高騰となり、何でも過去26年間で最高の値段とか。もちろん、チリの消費者物価を上げるだけではありませんね,世界経済への影響必至です。

2) 欧州ワイン戦争
    こっちの方は1)の戦争とは違いますが、欧州に進出する輸入ワインが欧州のワイン業者を脅かしワイン生産業者に与える補助金助成金)が15億ドルにもなるそうで、抜本的改革に迫られているらしい。外国産のワインは主にチリ、米国, 南ア、豪州から来るが, 品質と価格でチリ産が競争力を持ち、今年も前年対比5%ほど輸出量を延ばしている。こういう競争には勝ってほしいものです。

3) チリの企業家グループが日本を訪問して,チリの南米における位置などを説明するらしい。一般市民はともかく日本企業でチリの重要性を知らないのはないと思いますが,何はともあれ接触の機会を増やすことは良いことです。健闘を祈りましょう。


(一般)
1)  最近の調査で、いつ職を失うかもしれないという危機感をチリ人は常に持っているので,職場で同僚が敵に見え、調和を持って働くことの出来ない人間が増加していると発表されました。それなら失職の危険性を考えて消費を抑え,貯金が増えるはずですが,実態は全く逆で消費をコントロールできず,借金が増え,一般国民は給料の10倍の借金を抱えていると報道されました。見栄か、単に幼児的に消費をコントロールできないのかですが、もう社会問題ですね。

2)  サンティアゴのスモッグは世界基準を上回り,その中でもPM2.5と呼 ばれる人間に害をする物質は許容量をはるかに越える最悪のレベルにあるらしい。車両や工場から排出されるこれらの廃棄物系のスモッグをコントロールする体勢がないのが問題と新聞報道されている。コントロールが全く無いわけではありませんね, だって大気汚染がひどいときは車両の交通規制がされたり工場の閉鎖がされますから。政府の規制が不十分なわけです。
問題となっている新交通システムだって原案が何度も訂正され、完全実施が遅れるばかりで,それを咎めるバス会社を政府は押さえ込むのに必死のありさま。ちゃんと計画を立てられない、それを実行できないのは情けないですね。
同じく交通の話題ですが、サンティアゴの高速道路を通行するには高速道路通行料を支払う必要がありますが,その支払いは料金徴収所で払うのではなくTAGという機械を使って,毎月払い込むことになっています。使用料は通行時間や距離によって異なりますが,100ペソから300ペソくらいの金額です。その通行料が今年は昨年の2倍になるだろうと発表がありました。高速道路を使うメリットが認識されてきたのか,運転手の懐が暖かくなったからでしょう。


(スポーツ)
1) サッカーの国内リーグはコロコロの優勝で幕を下ろしましたが,その優勝チーム・コロコロの主力選手が外国に売られていきました。キーパーやMFで既に出発したのが二人,他に2.3人が交渉中です。それから監督にもメキシコから乙波が来ています。一方,負けた方のラ・ウーは補強も全くままならず苦しんでいますが、勝てば官軍の見本みたいなものですね。


以上