チリの風  その177  06年5月22日-28日

チリの風  その177  06年5月22日-28日

サンティアゴでサッカーの世界大会が始まりました。1回戦日本はチリと対戦。これを4対2で破り, 2回戦のイタリアには3対3の引き分けの後PK戦で辛勝。これで準決勝に進出。これがドイツのWカップの話ならもっと良いのですが、実はサンティアゴで行われているイタリア大使館、商工会議所主催の素人サッカー大会です。私も初戦の応援に息子と駆けつけましたが、なんと言っても勝つのは気持ちの良いもので、ニコニコしながら試合場を後にしました。
それから今週はエジプト紀行文のその3が掲載されます。知人から藤尾さんの紀行文は長すぎて読み終えるのに苦労するとコメントされましたが、何を言うとんや、書くほうがもっと苦労するわい。ねっ。


(政治)
1)高校生の反政府デモが依然と勢いを緩めず、全国に飛び火。大問題になってきました。彼らの要求は大学入試費用の無料化,登校下校時のバス代の無料化,学校の全日化(現在は半日制が多い)などですが多数の高校がスト突入もしくは学生に校舎を占拠されています。
面白いのは16歳や17歳のリーダーが一人前に自分は社会党とかUDIとか名乗っているところ。社会党に14歳で入党し、選挙の時には候補者と一緒に選挙民の家庭訪問をしたなどと言われると余りの早熟ぶりに開いた口がふさがらない。
で、彼らの間でどうして連絡をとっているのか、携帯電話では大変な費用だろうなと思ったら、PCですね、インターネットなら全国の同志とあっという間に意思の疎通が出来ますから、さすが近代兵器。
来週には大学生もこれに参加とか, どうなるのか?

2)フランスの大統領のシラクがチリ訪問。フランスの首長のチリ訪問は40年以上ぶりのこととかで、シラクはバチェレットと楽しそうにお話をしていました。政治的, 経済的な重要議題は無かった模様。

3)キリスト教民主党に続いて,他の政党でも党首の交代が進んでいます。保守派と改革派の戦いは世界中どこでも同じ。権力を握った人間はそれを放したがらないし,それを持っていない人間はその奪取を図る。特に右翼のUDIのトップ交代劇が注目されましたが、改革派代表のラス・コンデス区長は選挙戦にもでることが出来ず涙をのみました。

4)先週のトップニュースのフジモリは今週にも登場。自由の身になった彼はサンティアゴの南にある第6州ランカグアを訪問しましたが, そこで高校生のガキが彼に悪口雑言をぶつけ、フジモリの乗った車を叩き始めたらしい。しかし警察の護衛つきなのに何故そんなことが起り得るのか不可解。もっとも私にすれば高校生が彼に何故「ペルーに帰れ,この泥棒野郎」と狼藉を働かなければいけないのか、良く理解できませんが、それもチリ人のペルーに対する一般感情なのかもしれません。一方、ペルーのテレビ番組でバチェレットを馬鹿にするコミック番組があるそうで,チリの3流新聞のトップにその写真が出ました。
ところでフジモリは注意深く発言しており、ペルーで実施中の大統領選挙について触れていません。にもかかわらずトレド政府はチリ側にフジモリがやかましいから静かにさせてくれと2度にわたって注文を出し, チリ側でもそれの対応に関し、政府内で対応の不一致問題が出ています。
日本大使館の人間がフジモリの家を訪問している写真が新聞に出ました。
それに比べると明快ですっきりしているのが3国同盟です。キューバ,ベネスエラとボリビアはもう仲良し子供会のようにいつも一緒です。ベネスエラはボリビアに投資を行ってボリビア人に仕事を与え、キューバは医療, スポーツ面でボリビアを支援し、3国でアメリカ帝国主義に対抗すると謳っています。
しかしチャベスのやり方を見ていると一国の首長と言うより中小企業のおやじが、「この会社はワシのもんや、どないしようと自分の勝手や」と言っているように見えます。世界でこれほど国を私有化している例は他に無いでしょうね。本当に不思議な気がします。まるで中世の歴史のようです。
それに影響されてか、ボリビア国内でのモラレスの人気は近年にないものでなんと最近の人気投票で80%以上の国民が彼を支持すると表明しています。
さてこれがチリにどう影響するのか?信用できないアルゼンチンに替わってボリビアから天然ガスが来るかもしれない、ベネスエラから安い石油が入るかもしれない・・・あのチャベスのおっさんならチリに石油を出すなんて、条件さえ整えば簡単に決定するでしょうね。ボリビア側では現在アルゼンチンに出している天然ガスの値段の2倍でもチリは支払うだろうと推定しているそうです。それでもチリには出さない??
いずれにしてもチリの命運をその3カ国連盟が替えるかもしれないと言うところで、アメリカ政府が釘をさしました。来月ワシントン訪問予定のバチェレットにチリとアメリカの関係の重要性を良く考えるようにとの指示を出してきました。例のわからずやの3カ国との交際禁止を言ってきたわけです。もちろんチリ政府内ではこの先の2週間激しい論戦があるでしょう。最後は波風を立てないように対処すると言うのが結論でしょうが。


(経済)
1) 銅の値段はかなり下がって最高値から約10%下げ、一方ガソリンの値段はかなり上がって新記録。こんな新記録は困ります。で,ドルの値段が上がって1ドル530ペソ近くまで来ました。

2)チリの株式市場がその取引高でこの5月、史上最高を記録しました。日本の株式市場が株の下落で苦しんでいるのとは対照的ですね。チリの好調を示す一つの印でしょうか。

3)自由貿易協定
台湾がチリとの自由貿易協定の締結をしたいと発表。チリは既に極東の国では中国, 韓国と同協定を結んでおり、現在日本と交渉中(先週,チリで両国の第2回ミーティングが開催されています)

4)電力発電
しかしこのまま行くとチリのエネルギー源の不足は深刻化してきます。チリではLNGが問題解決の切り札のように言われていますが, はたしてそうだろうか? 
諸外国の例ではフランスは80%が原子力発電で電気代は欧州1安いとか。スウェーデンは水力と原子力が半分ずつで大気汚染はほぼゼロ。日本は原子力27%、石炭27%、ガス22%、他になっている。
じゃチリではどれが一番安くて安全で、しかも安定性があるのか・・・。

5)日本の鉱山会社ルミナ銅鉱山が第3州に新鉱山を開発。社長はコデルコの北部門社長だったピサロとか。彼はチリの鉱山を数社にわたって指揮をとり、いつも成功する才能の持ち主だから,今回も上手く行くでしょう。
さて他の鉱山の話題ですが、今週,チリで最大の鉱山用機械見本市がサンティアゴで開催されました。私も一日見学に出かけましたが、パネルディスカッションなど内容もあり参加者もかなりありましたが、何か盛り上がりにかけているように感じました。
 A)GPSなどはもはや新型兵器ではなく通常の機械になってしまい、他に目玉に欠ける。
 B)タイヤなんか製品が無く、コデルコの購買のえらいさんがこのタイヤが30本ほしいと言うのに2,3本なら出せますがと言うのでは見本市としてはつらい。
 C)大型車両のトップメーカーが参加せず新型マシ―ンの展示が無かった・・・からでしょうか。


(一般)
1)首都圏高速の発達は目覚しく,サンティアゴの顔をドンドン変えていますが、今週とうとうサン・クリストバルの丘の下を通るトンネル建設がはじまりました。7千万ドルの総経費で行われるそうです

2)全国の住みやすさの統計が発表されました
人間環境調査の結果では首都圏が圧勝。区単位では1位はビタクラ、2位はラス・コンデス,3位がロ・バルネチェアでした。最悪の部は第7州、と第9州になっています。投資が行われなければ,住宅道路など良くなるわけがありません。

3)殺人事件
チリで殺人事件は珍しくありませんが,これほど長期間話題になっているのはこれ以外にはありません。それはコンセプシオンで当時大学生だった若者マツテ・ジョンスがディスコで殺され長期間行方不明になり, ディスコ関連の人間が何人も逮捕されたのに裁判が進まず, 数年して死体が見つかってからも犯人決定が出来ず、今週これ以上裁判を維持できないと犯人不明のまま終結宣言。遺族はローマ法王にでも訴えて奇跡を待つしかないとしています。犯人とされた人間が同地区での有力者の子供だったなど裁判の公正も疑われており, 悲しい結果です

4)動物のクローン
チリで始めて動物のクローン実験に成功。12月初旬にその牛の赤ちゃんが誕生の由。


(スポーツ)
1)サッカー  
しかし勝ちましたね。チリが欧州チームに。チリの欧州遠征第一戦はダブリンでの対アイルランド戦。満員の競技場での対戦、見事1対0で完封勝ち。敵地での勝負でしたか、自陣にこもって引き分け狙いでなく積極的に勝ちに行った姿勢が評価できる。次はパリでWカップのアフリカ代表のアイボリー・コーストと。
ところで、そこまでは楽しい雰囲気で来たのだが、その晩、二人の選手の部屋に女性が入っているのが見つかり、監督は即刻、規律違反でその二人をチームから除外する決断。二人のうちのゴンサレスはこのチリの風にも何度も登場していますが、若手でもっとも注目される選手で、大事なときに何をしたのかと非常に悲しい。もう一人はこの種の問題の常連で代表から外した方が良いでしょう。

2)テニス  国別の世界選手権で第1戦のスペインに圧勝したチリは第2戦にアメリカと対戦。先日のデービスカップの屈辱を見事に果たし、これにも勝利。そうか今年も世界1に手が届くかと思わされましたが, 第3戦に破れてそこまで。しかし健闘しました。来週はパリでのATPの4大大会ロランド・ガロです。

以上