チリの風  その172  06年4月17日―23日

チリの風  その172  06年4月17日―23日

日本から若手バイオリン奏者佐藤さんが来てモーツァルトを演奏すると言うので、家族でそれを聞くことにしました。私は日本人学校で今年度始めてのサッカー教室を終えてからその会場、チリで一番のコンサートホール、ムニシパル市民劇場に向いました。入場券を買おうとしてあっと驚きましたが,その日は学生だけのコンサートとか。前日の新聞にはそんなことは一言もありませんでした(そのアホな新聞はラ・テルセラ)。で、子供二人はそのコンサートを楽しめましたが,私とバレリアは入れません!!演奏内容は最高に良かったそうですが、満席ではなく空席もあったとか。悔しい。帰る前にその劇場の東の隅にある喫茶店でコーヒーを飲みましたが、シャンデリアや鏡など装飾品が欧州調で、昔モーツァルトを聞きに言ったウィーンやザルツブルグの雰囲気でした。


(政治)
1)今週はバチェレットがニュースにかなり出ましたが、余りパッとしたニュースではありません。
a) その中では第12州のマガジャネス州(チリで最南端部)にある天然ガスの発掘現場視察が明るい話題。もしここから期待されるほどの量の天然ガスが出れば、同州やその近辺にそれをあて、チリのエネルギー問題の軽減に大きく寄与するものと期待されています。彼女は現場で労働者と話をし、次回はここでシャンパンを飲むことにしたいと笑っていました。来月最終的にどれだけの埋蔵量が見込まれるか発表ある由。
b) 次は軍事政権時のニュースが二つ。最初は軍に殺害され秘密に埋葬されていた人間の身元を間違って通知していた事件。遺族会がかんかんに怒っています。これなんか、もう面倒だからいいかげんに発表しておこう,どうせ分かりはしないと言う考えがあったのでしょうか?
それから不思議なのは同じく軍事政権時,軍の側について秘密行動をしていた化学者が、ウルグアイに逃げ、そこで暗殺された事件です。その殺人事件に関与したウルグアイ軍の人間3人が容疑者として今週チリに護送されてきました。殺された人間がチリで何をしたのか,何故逃げなければならなかったのか、チリ陸軍は何を恐れて彼の口を封じたのか、それに何故ウルグアイ軍が関与したのか、明らかになってくると思われます。それにしてもウルグアイ側があっさり自国民をチリに送ったのは、それを承認した裁判官が銃撃される事件が起こったからと言われますが、(時間をかけて検討するわけにはいかなった)本当かな?
しかしその殺人からもう10年以上立っているのに事件解明がウルグアイ側で全く進まなかったのは当然政治介入があったからと考えるべきでしょうね。

c) それから先の選挙のとき、失業対策費用を使って自派の選挙運動をしたと社会党議員が訴えられていますが、それに対し、バチェレットは前大統領の失業対策計画の見直しを発表しました。同じグループの政党だから自分の不正を自分で正せるのかな?

d) さらに学校制度のことですがラゴスのときからチリの学校は午前と午後の二部制度を廃止し、全国どこの学校も全日制にすると発表したのに未だに一部の地区でそれが実施されていません。予算が無いからと言われますが、国の収入が空前絶後の好調の現在では理解できませんね。
同じく新健康保険制度(アウへ)の導入で,少しは良くなったと見られる医療制度も公共医療機関は多額の借金で身動きが取れないと報道され,政府の出方が注目される。

2)隣国の話題
ペルーの大統領選挙はもう2週間も過ぎてまだ最終結果が出ません。全く理解できませんが,ペルーではその遅れはさほど重要問題ではないようです。まぁ決戦投票はウマラとガルシアでしょうが、もちろんウマラの方が新鮮味はあります。どうなるかわからないというドキドキするところがあります。ガルシアはもう20年前,ペルーを破滅させ国外逃亡した実績がありますからね。でもウマラも後ろめたいことをかなりやっているようで,それが漏れ始めました。
一方のボリビアは新大統領が依然として高い支持率を受けながら、タリハやサンタ・クルス独立運動に悩まされています。チリとの関係は確かに良くなっています。早いうちに最初の事務会談が開催されれば良いのですが。テレビの番組でチリとボリビアの比較がされていましたが,一人あたりの収入でチリはボリビアの4倍とか、平均寿命でもチリが77歳,ボリビアは65歳と余りにも大きな差が付いています。がんばれボリビアと言いたい。天然ガスを上手く外国に売って教育,医療にそれをつぎ込み南米のスイスと言われるようになってほしい。


(経済)
1)弱いドル
弱いドルをどうするかの問題は深刻さを帯びています。政府(中銀)が介入してドルを買い支える作戦もあるでしょうが、今のところドルが落ちるのを黙ってみているだけの状態。
それから銅が連日のように高値の新記録を繰り返し,国庫収入が予想を上回る速度で膨れ上がっているわけで、これを単に金庫に寝かせておくのではなくどう投資するのか的確に発表してほしいもの。
チリの風に記載があったようにポンド当たり銅価が3ドルを越えたら、バス代も地下鉄代も無料を実施してはどうかな?(もう3ドルは越えましたよ!)

2)しかし国の景気が良いとか、経済が上向きで国民の購買欲もとどまるところを知らないなんか言われますが,結局、借金が増えているだけではないでしょうか。それが購買ブームになって景気を上向きにしているのなら遅かれ早かれ借金漬けの国民が差し押さえの波にさらわれてしまうのですが。
  建築ブームで家やアパートの建築は首都圏だけでなく全国的に大規模に行われています。テレビでこの支払い例の比較がでていました。同じレベルの家を5年前に買えば,毎月の返済は28万ペソ。昨年なら金利が下がって22万ペソ、今年は23万ペソだそうで、借家に住めば20万ペソ近く払う必要があるとか。つまり無理してもここで家を買うべしとなっています。それを受けて国民が我が家を持ちたいと張り切っているわけです。昨年空前のマンションブームと言われましたが,今年はその昨年をさらに4%上回る売れ行きとか,好調継続ですね
 似たような話題で、今週5百万の顧客に有名デパートが金利の取りすぎ分を返却することになりました。これは政府の調べで,各百貨店が分割払いを受ける際、法律で決められた金利を越えてチャージしていたのが咎められたもの。しかし各百貨店のその支払総額は3千万ドルにもなり、いかにチリ家庭が借金で買い物をしているかとの状況を表しています。


(一般)
1)例のペニャロレン空き地不法占拠問題は継続です。チリが先進国に近づいている現状と全く違った顔を見せているこの問題は、都市の中の巨大な空き地にたくさんの貧民が最初はテント,そのうち掘っ立て小屋を建て不法に住み始めるもの。この土地で数年にわたり不法占拠をしていた多くの家族が当初の目的を果たし政府の援助で先日来、新居に移転を開始しました。
そしてそれらの掘っ立て小屋を取り壊し,そこを公園にするのが政府案。ところがまた空き地になってきたそこに新しく貧民が入り込み、それを許さじとする警察と抗争。負傷者逮捕者多数が出ています。現政府としても前政府の政策と同じドジを踏みたくないので一応強攻策に出ていますが,これで死者でも出れば、また手のひらを変えて懐柔策に変わるでしょう。しかし悲しい現実。
それから先月,サンティアゴセントロで犯人グループが弁護士事務所に立てこもり警官と打ち合いをした事件がありましたが、撃たれて負傷の弁護士は確かに警官の撃った弾丸で負傷と分かりました。警察は当初それを否定していましたが。

2)チリ北部第2州の火山ラスカルが活発な火山活動を行っています。それに関し,ラジオの番組が大変だ,火山の噴火で溶岩が流れ出し外人登山客が行方不明と放送。地元の警察と消防署が救助隊を出して捜索しましたが、それが後で冗談だと分かりカンカンです。ペルーでも火山活動のため小さな村全体の避難勧告が出て住民が涙ながらに離村しているニュースがありました。やっぱり地球の中ではチリもペルーも連結しているのでしょうね。

3)幼児わいせつで刑務所に入っていた人間が4年ほどの刑を終えて出てきました。それを待っていた被害者の母親グループがその男をよってたかってボコボコに殴りました。警察もその近くにいましたが、余り本気に止めに入っていませんでした。このニュースは日本でも報道されたとか。やっぱり世界の人の興味のあることは似ているのですね。

4)バラバラ殺人事件の被害者の写真がインターネットに流れ問題になっています。そんな身体の各部の写真を私は見たいとも思いませんが、警察か病院関係者で情報を漏らした人間がいるのでしょうね

5)大気汚染減少の切り札たる新交通計画トランサンティアゴは計画実施が遅れていますが,今週812台の旧型バスの廃車,新型バスの導入が行われました。これに関し,旧型バスの運転手たちが抗議行動を起こし(自分たちはこれで失業者のリストに入ってしまったと)市民の足に影響が出ました。政府はこの計画の成功を繰り返していますが,外から見ているととても上手く言っているようには見えません。
大気汚染問題の軽減のために自動車は排気ガス対策エンジンを搭載したものしか輸入できません。サンティアゴで走る80万台の車のうち67万台がその対策車。しかしせっかくのエンジンもメンテナンスが悪く、その半数は問題を抱えているとか?


(スポーツ)
1)テニス
チリで3人目のATPランキングでトップ10に入った選手が出ました。
これまでリオス、マスがそれに該当しましたが,ゴンサレスが今週開催のモンテカルロ大会で準決勝まで勝ち残り、ランキングで10位まで上昇したもの。世界のトップ10なんてすごいものです。

2)サッカー
しかしサッカーの話題はそれと違って暗いもの。リベルタドール杯の1次予選の最終戦が今週行われました。各グループ4チームが参加し,上位2チームが2次予選に進めます。さてウニオン・エスパニューラは2位で最終戦に挑み、敵地ブラジルで堂々の引き分け。ところが4位のアルゼンチンのチームが3位に大勝したため勝ち点で並び、ウニオンは得失点差で3位に転落し失格。一方のカトリカはグループ1位で、メキシコに向かい、そこで引き分けなら2次予選通過でした。90分の試合時間が終わり0対0、これでカトリカは合格と誰もが思ったのですが、ロスタイムに痛恨のゴールを浴び、敗戦。勝ち点で上位チームが並んだのですが、得失点差でカトリカも3位に転落。失格。翌日,事務所や食堂でカトリカファンの私はひどい嫌味を言われることになりました。
   このーム対抗の南米大会で2次予選に進めなかった国はチリ、ペルー、ボリビア、ベネスエラの4カ国でこの国はワールド・カップにも縁のない国です。チリがその中に入るなんて悔しい。
   さて日曜日国内リーグでコロコロがカトリカと対戦。その前日、サッカー教室のため日本人学校に行くとき,私はカトリカのユニフォームを着ていったら,もうバスから、車から罵詈雑言,悪口の限りを受けました。チリではコロコロファンがカトリカに比べると圧倒的に多いですから。試合の結果はカトリカが3対2で逆転勝ち。また月曜日,会社でもめるだろうな!
   明るい話題としては欧州で活躍中の若手二人が今週もゴールを決めました。スペインのゴンサレスとイタリアのヒメネスです。
またコブレロアでプレーするサンチェスは若干17歳でイタリアに移籍が決定。250万ドルの契約金とか。チリにもそんな若手がいるのですね。


以上