チリの風  その171  06年4月10日―16日

チリの風  その171  06年4月10日―16日

しかし気温が下がってきました。今週一番寒かった日は最高気温19度,最低3度でした。さて木曜日の朝5時頃目がさめましたが、ボーウィンドウに雨が当たる音でした。今年始めての本格的な雨でした。
でも復活祭の週末はそれも回復して素晴らしい青空で、最後の日曜日のミサにカトリックではない私も、バレリアに付き合って教会に行きました。もちろん満員の盛況でさすがにイースターが人気のある行事と言うことが分かりました。
さて日本の土曜日、文化放送の番組に出演しました。番組の最後は「チリはこんなに住みやすいころです。是非日本の皆さんに来ていただきたい」と締めくくるつもりだったのに、最近でもっともインパクトのあるニュースはなんですかと聞かれ例のばらばら殺人事件を言ってしまいました。どじな終わり方に自分でもがっかり。でもその翌日2通メールが入って、チリについて興味をもちましたって。良かった。


(政治)
1)バチェレットの外遊
  大統領は今週ブラジルとパラグアイを訪問しました。アルゼンチンともめたとき,助けになるかもしれないのはブラジルの存在です。バチェレットも先のアルゼンチン訪問の後,どうしてもブラジルは避けられません。ただ現ブラジル政府は賄賂問題で揺れており,国民の信頼を得ていないのが悲しいところ。パラグアイについてはほとんど新聞報道にもでませんでした。しかしバチェレットに関するニュースがテレビや新聞に少なくなりました。なんでかな?
ところでこの外遊に出発するとき飛行機の前面ガラスにひびが入って、それを取り替えるため出発が3時間遅れました。古い飛行機はやめて新しい大統領機を購入してはと言う声が出ています。

2)ボリビアの海問題
  ボリビア米州機構などに泣きつく方針をやめ、チリとボリビアの2国間で協議するとしたので、チリ政府もこの問題を除外しないことを盛り込んだ上で政府間交渉の開始を受諾しました。チャベスカストロを盟友とするモラレスですが、以前の大統領より実務能力があるのではと私は考えます。そして自分の懐だけを考えてはいないと思うのですがどうでしょう。もうボリビアもそろそろ大人になって天然ガスは私たちのもの、これは誰にも渡さないなんて言うのは止め、これを武器に国力発展に努めるにしてほしいもの。チリだってボリビアの発展は両国間の貿易の面だけでなく願ってもないこと。99年間の条件でチリ港の自由使用権をボリビアに与えることも(使用権を販売することも)考えられるはず。その港の建設,運営だってチリ側が請け負うことだって出来るし。
  一方のペルーはもう一週間もたったのに先週の大統領選挙の公式結果発表が無く,決戦はウマラ対ガルシアだろうと言われるも不可解。
  これはチリ拘留中のフジモリには非常に有利な状況で、両者のどちらにも自分のグループの票を,彼をこれ以上訴訟しないという条件で乙波できるわけです。さてこれが上手くいって今年の6−7月にはリマで悠々と自派議員を集めて作戦会議が開けるかな?

3)軍事政権時の人権問題
  1973年アリカで起こった左翼主義者の殺人事件「死の行進」計画で首謀者として逮捕されていた元陸軍大将スタークが恩赦されました。バチェレット大統領が人権問題は最後まで正義を貫くと発言した後ですが,政府の意向と司法の考えには大きな差があるようで、この恩赦は議論を呼んでいます。
  一方,軍事政権時の秘密警察とディグニダド.コロニーが組んで左翼運動者の拷問殺人を行っていた事件では、元のコロニー・リーダーでドイツ人のシェフェルと元DINA長官のコントレーラスが訴訟に値するとする裁判官セペダの判断が出ました。これは有罪に向って一直線でしょう。もちろんこの元秘密警察の後ろにピノチェットが位置するわけですが。


(経済)
1)やっぱりこれからのチリの最大の課題はエネルギー源の確保でしょうね
  それについてチリの財閥グループ・マッテがチリ最南部のアイセン州にエンデサが計画中の水力発電事業に相乗りしたいと表明し、この計画が一段と注目をあつめています。これを受けてコルブンの株価が急上昇とかで、エネルギー源を持つものが次の世界の勝者でしょうか?
  このアイセン地区で最大地主がアメリカ人トンプキンスで、自然破壊反対としてこの発電所計画に反対しています。このため発電所建設を計画しているエンデサ社幹部がこのアメリカ人の家を訪問し、計画の細部について説明したとか。
  一方,チリ北部の大手銅鉱山は共同でエネルギー源確保に乗り出したもよう。600MW規模の石炭もしくは天然ガスによる電力発電工場を設置したいとしている。
  エネルギー源と言えば,中国のエネルギーの80%は石炭発電ですが、世界の工場として機能している国が石炭による発電では大気汚染問題が世界的規模で拡散するのは避けられません。困ったことです。
そうそう先週、ハーレーダヴィッドソンのアメリカ製オートバイの中国進出をチリの風で書きましたが,今週CNNを見ていると北京や上海で販売が始まったことは報道していましたが,まだ生産開始ではないようで、早とちりをしたようです。

2)外国からチリへの投資額が05年は72億ドルが記録され,これはラテンアメリカではメキシコ,ブラジルについて3位です。しかしラ米3位の地位もチリは馴染んできましたね。驚きません。こんな小さな国なのに。

3)中銀が公定金利を5%にアップしました。2年前は2%を切っていたのですから大幅上昇です。しかし銅の値段が上がり,ドルの値打ちが下がる構図は変わらず,輸入業者はニコニコで輸出業者は死活問題です。
  銅の価格はこの2週間で16%アップですからね。いったいどうなっているのか?
  もっとも石油価格の上昇によるガソリン価格のアップもひどく毎週のように値段が上がり政府の必要補助額もうなぎのぼり。93オクタンの場合、今年に入って約90ペソアップし来週月曜日は620ペソになります。

4)消費税問題
  既にお知らせした通り消費税は国会で19%据え置きが決定しました。新聞に投書が載って16%だった消費税をエイルウィンが18%に上げた。次のフレイはそれを元に戻さず維持し、更にラゴスはそれを19%に上げた。貧しい人のためと言うが当初6%に過ぎなかった消費税が国庫に占める割合が昨年は65%にまでなっている。つまり高額所得者や事業主からとっていた税金を一般国民から多く取るようにしたわけだ。これが低所得者を擁護するやり方と言えるのか・・・。言えてる?
銅がポンドあたり3ドルを越えたら当分国中の交通機関を無料にしますと言えばどうなるかな?地下鉄とバスだけなら国が払ってもやっていけると思うけど。おまけにチリ国中の活性化が図れて!外国から旅行者が来たら驚くでしょうね,外人も誰でもバスも地下鉄も無料だったら。
  (注・上記案に飛行機は除く)
  政府側は世界主要62国の消費税の平均は16.4%であり、チリのそれが突出しているわけではないと弁護しています。

5)とは言ってもチリの世界の中における存在は小さいものです。ラテン・アメリカが世界総生産に占める割合は僅か5.4%。そのうちチリが占める割 合はその4.3%。つまり世界総生産の0.2%強がチリです。

6)世界のどこに住めば良い暮らしが出来るか,1位はスイスのチュリッヒ。2位同じくスイスのジュネーブ。ついでカナダのバンクーバー。4位はオーストリアのウィーン。この辺りまで私もかって訪問したことがあります。
東京は35位。チリのサンティアゴ台北と同ランクで81位。アルゼンチンのブエノス・アイレス78位に負けたのが悔しい。


(一般)
1)上記の中国の大気汚染と関連して,サンティアゴの大気汚染問題で二つの話題。
その一つはサンティアゴの空気は南米の主要都市でペルーのアレキパについで最悪のものとの発表されました。第3位はコロンビアのボゴダ。その昔、汚い空気で有名だったサオパウロやメキシコ市を越えている。情けない。
そしてサンティアゴの汚染の55%は自動車からの排ガス。そのためにトランサンティアゴ計画を実施中だが上手くいっていない。政府も本腰を入れてほしいもの。その新交通計画で最大手の一つがコロンビア資本の会社ですが,組織が上手く機能しておらず崩壊寸前と言う噂もあり。で、その社長をしていた人間がそこを逃げ出し,なんと今週、地下鉄の総裁におさまりました。えっ?そんなことあり?
車両の増加は最近顕著で05年は対前年15万台増加し,総計250万台になっています。従い,根本的な対策は,首都圏を縮小することで、そうでなけければ抜本対策はできないと言う声が高まってきています。
もっともこの大気汚染問題は最近のものではなく私がチリに入った1979年に既に問題になっていました。
もう一つの話題は先週の日曜日,大気汚染が許容限度を超え車両の走行規制や工場の操業中止を実施しなければいけない状態だったにもかかわらず政府機関の怠慢でそれが行われませんでした。まぁ間違いのあったのは事実ですがたいしたことはありませんと発表した首都県知事に批判が集まっています。ところでもしそれが実施されていたら,先週のマラソンは延期になっていたかも知れないそうです??!!危なかった。
で、来週の月曜日はその警戒警報が出され、交通規制が厳しくなります。

2)ばらばら殺人事件は自殺した区役所職員が犯人となってきました。彼が自殺したときに使った銃が殺害された被害者にも使用されていたからです。もちろんか他に共犯者がいるかどうかはこれからの捜査によります。しかし区の職員としていろんな行事に参加し、テレビのニュースにも出ていたような人間が裏で二重人格として何をしていたのか明らかになってきますが、悲しいですね。こんなニュース。

3)首都圏の地価は過去11年で2倍になりました。一番平均価格の高いのはプロビデンシア区, 2番がラス・コンデス区です。1m2で8万円ですからけっこうなものですね。

4)復活祭の休日にサンティアゴから市民が郊外に大挙して出かけるのは毎年のことですが,毎年問題になるのがその期間のバス代の値上げ。同じ区間がその時期だけ2倍とかそれ以上に値上がりします。黙っていてもバスが満席になるのだから値上げしましょうと考えるわけですが,10%くらいなら可愛いですが,2倍ともなるとえげつない。テレビのニュースで乗客が切符を見せながら先月は5000ペソでいけたのに今週は12000ペソですとクレームしていた。チリ人って状況を見るのが上手い。


(スポーツ)
1)今チリ人のサッカー選手で一番活きの良いのはマーク・ゴンサレスでしょう。彼はカトリカからリバプールに移籍したのですが、イギリスの労働ビザがとれず、スペインのレアル・ソシエダにレンタル移籍してプレーしています。その彼がスペインリーグで好調で,先週はレアル・マドリッド戦で、さらに今週も得点を重ねています。リバプールの監督は何故彼のビザがおりないのかと毎日怒り狂っているらしい。

2)一方,リベルタドール杯に参加中のチリの2チーム,ウニオン・エスパニョ―ラとカトリカは最終戦を残す段階でそれぞれ2,1位につけています。そして両チームとも最終戦は敵地です。それに勝てば次に進み、引き分けると他のチームの結果により2次予選に進出。負けるとあっさり1次予選で敗退の厳しい状況。さて来週どうなるかな?


以上