チリの風  その170   2006年4月3日-9日

チリの風  その170   2006年4月3日-9日

九日、ターボーハチマキの神通力のおかげで50代最後のサンティアゴ国際マラソンを完走しました。記録は目標の3時間台は無理だったけど4時間台だったので文句は言えません。千数百人のランナーがオヒギンス公園を一斉スタート、秋晴れの市内を駆け抜けました。高低差170mの難コースで私はゴールしてから両足痙攣で歩けませんでした。厳しい。


(1) 政治
1)消費税の据え置き発表
 前回ラゴス政府が消費税を18%から19%に上げたとき「銅の値段が65セントで国庫への納税も少なく、アメリカとの自由貿易交渉が締結されたため輸入品に税金がかけられない、こんな状況で皆さんへの福祉のレベルは下げたくない。従って期間限定で1%アップをお願いしたい。」をと言っていましたが、状況は明らかに替わっているのに新政府はそんな昔の話はしりませんと、元の18%に戻す件を一蹴し消費税据え置きを言明。バチェレットは選挙戦で野党も据え置きを謳っていたのだから,いまさらそれを批判するのはいかがなものかとびくともせず。
 しかし国庫は銅価格の急上昇であまるほどの余裕を持つわけで、何も消費税を通して一般市民から取る必要は無いと思うのですが。

2)最高裁判所のメンバーになるには国会の承認が必要です。今回,高等裁判所の裁判官が政府推薦で国会の議題に載りましたが,野党の反対で流れました。野党としてはその裁判官は軍事政権時代の人権問題裁判で反軍事政権の立場を取っているのが気に入らないらしい。
それを批判して、昨年5月に裁判所を辞めた人間が,野党はそれならもっと現職裁判官をチェックすべきとし,あるものは汚職, それから飲酒運転、他にも売春婦と遊んで、また自分の奥さんを殴ったりしているのがいると言いたい放題。しかしこれだけ言われたら、政府だって司法界も反応しないわけには行かないでしょうね。

3)さて隣国ペルーの大統領選挙が行われました。チリと違って職を終えようとするトレドを惜しむ声は全く無く、いてもいなくても同じ状態なのは惨めですね。今週の投票で50%を取る候補がいないので2次選挙が行われることになりました。ウマラ対もう一人は誰?
ところでアメリカ政府がウマラが大統領選挙に勝つと国際政治に悪影響が懸念されるとコメントしています。まぁ自分の言うとおりにならないチャベスの影響でも受ければ大変だというのでしょう。
しかしラテンアメリカの政治は欧州系の一握りの人間が伝統的に取り仕切ってきました。欧州系の人間って全体の10%にもならないと思いますが。
それがラテンアメリカの発展が無い,先進国になれない理由のすべてとはいえませんが、一部の人間の懐を肥やすような政治が続けば進歩が無いのは自明。こういう意味では新しいタイプの政治家が出てくるのは望ましいことです。さてそんな方向に進むかな?


(2) 経済
1)銅の話
 しかしチリの経済にとって本当に銅は重みのあるものですね。私は1980年から銅鉱山関係の仕事を始めましたが、その頃と今を比べると格別の感があります。そのころはエスコンディーダもなかったしコジャワシもカンデラリア鉱山もありませんでした。チュキカマタはありましたが。進歩の一例としてマインで使われるトラックの大型化があります。加速度的に巨大化しました。今のトラックはその当時の2倍の荷重積載量です。
さて銅の値段はもちろんいつも今と同じようなハイレベルではありませんが、最近の価格急上昇は中国が買い付ける量が急増したため、生産が追いつかず、価格に跳ね返ったことになっています。じゃ生産を増やせばよいと考えられますが、今のところ、すぐに生産が増えそうな可能性はありません。(新規開山開発も既存鉱山の生産増加も)2−3年経ってから始めて,ペルーを中心にそれが行われそうです。
ところで、それだけのインパクトを与えている中国がこの先も同じように経済成長を続け、銅の買い付けを増大するのだろうか?中国の成長を鈍化し、そして銅の生産が増加すれば、2010年には銅価格の暴落?さえ考えられる。
中国でオリンピックが開催されますから、その前後まではすべて安泰でしょうが。
 オートバイのハーレダヴィットソンが中国進出と聞くと工業の中国集中はまだまだ続くと思わされるが, 欧州での中国製の靴に対する摩擦を見ると中国に対する風当たりはこの先厳しくなるのは当然とも思えるし・・・

2)重役の給料
 世界的な調査の結果として重役レベルの給料が発表になりました。役職別で一番高いのはファイナンス部門のダイレクターで1位のアメリカで平均年収は32万ドルとか。続いてカナダとか英国。チリもなんとトップクラスの21万ドルになってドイツを越えています???日本が出てこないのは,日本にはそういう平均して高給を取る職種がないからでしょう。(もっとも従業員の平均給料なら日本は世界のトップクラスでしょうが)


(3) 一般
1)今週テレビのニュースで一番話題になったのはばらばら死体事件でしょう。サンティアゴ市内の南部地区で手や足の一部が見つかり始め、殺人事件は珍しくない市民もその猟奇さに驚きました。最後にその被害者の身元が分かったのですが、若干20歳の彼の人生はそれがまた気の毒の見本みたいなもので、話題を呼んでいます。何しろ幼児の頃、実の母に捨てられ,どこかの家に預けられて、一応学校に通い始めたのですが、高校に入るころは麻薬に溺れてしまい、家の中のものを盗むので追い出され,同じように他の家にも世話になっては追い出される結果とか。そんな風で、犯罪に染まり警察の厄介になっています。仕事がないので窃盗をするかホモとして売春の仕事もしていたらしい。そんな彼が一児の父親だったというのですが、いったいどうなっているのか。最後は捨てられていたトラックの中で寝泊りしていたらしいが、麻薬犯罪の競争相手に殺されたとのかもしれないらしい。さらに不可解なのはその殺人事件の容疑者が、警察が彼に職務訊問をするため家宅捜査を始めたとき自殺しています。家族は自殺ではなく警察に殺されたと言うのですが?
最近行ったエジプトはチリよりずっと貧しい国でしたが,少なくともこんな犯罪は無いでしょう。この殺人犯罪はチリ繁栄の後ろに潜む世界の象徴みたいでした。

2)離婚法
離婚法が成立してもなかなかスムースに離婚できないとあちこちから批判が出ていましたが,今回インターネットによる離婚申請が認められました。チリ別居者連合の報告では,メンバーがこの方式で離婚を申請、書類が整った段階で家庭裁判所に呼ばれ,それは双方の出席が義務付けられているが、1時間で審議は終わり離婚が認められたとか。これで裁判にかかる不愉快な時間,費用が大幅短縮されたとなっています。

3)来週の週末はイースターの休日です。しかしチリではもう宗教祝日というより家族旅行に出る休日になっています。サンティアゴからは180万人がその祝日を利用して郊外に出るそうで、第5州のビーニャとか、4州のラ・セレナが人気があります。近隣諸国では値段の安いアルゼンチンとブラジル行きの便は満席とか。


(4) スポーツ
1)9日、サンティアゴ国際マラソンが開催されました。世界各国から有名ランナーが多数参加してオヒギンス公園を起点に市内を回るコースで行われました。その21の参加国のなかに日本もありました・・・・ごめん、事実と冗談が混ざってしまった。大会開催は事実ですが、各国から有名ランナーが参加は冗談です。日本人は、フルは私だけですが,ハーフマラソンに女性が参加されていたようです。
なにしろ優勝記録は2時間20分ですからね。

2)テニス
待ちに待ったという感じで、キャリフォル二アでチリ対アメリカ戦が開催されました。初戦,ゴンサレスの勝利で始まりこれは行けるかもと思われましたが,残念最後は腰砕けで3対2で負けてしまいました。

3)サッカー
チリの2大人気チーム,コロコロとラ・ウーが国内リーグ戦で対戦。
その応援団が国立競技場に向う同じ地下鉄に偶然乗ってしまったが、柄の悪い歌を全員が怒鳴っているのを聞いていると不愉快になる。もっともこれは私の好きなカトリカのファンでも品の無いのは同じことですが・・・結果はコロコロが3対1で勝ち、その前にリベルタドーレス杯でカトリカは本拠地でブラジルチャンピオンのコリンチャンズと対戦。3対2で敗れました。後1試合で1次予選が終わりますが,まだ予選突破は決まっていません。翌日,会社に行くと,大勢の同僚,部下が私のところに寄ってきてカトリカの敗戦を馬鹿にします。勝ったときは私が威張っているのでそのお返しにくるわけです。ショウもないチリの習慣です。
 ところで欧州チャンピオンカップがもう準決勝まできていますが,欧州の4大チームの一つにスペインのビジャレアルが入っています。人口4万5千人の小さな町を本拠地とし、予算も他の有名チームの半分どころが10分の1のようなチームが並みいる強豪を押しのけてそこまで来るのは立派なもの。その監督がチリ人なのでチリではビジャレアルのニュースはまるで国内ニュースのように報道されます。

ところで文化放送志の輔ラヂオ土曜がいいという番組から出演依頼が来ました。私の出演は日本時間今週の土曜日(15日)午前11時時半ごろ放送される
とか。関東圏だけの放送でそれ以外の地区では聞けないそうですが、このチリの風を東京地区で読んでおられる方にお知らせします。  

以上