チリの風  その169  06年3月27日―4月2日

チリの風  その169  06年3月27日―4月2日

朝晩涼しいどころか寒いくらいになってきました。スポーツの秋ですね。(私の場合、秋でなくてもスポーツですが・・・)
日本では食欲の秋とも言いますが,チリでは年中食欲の季節で肥満問題が国中の話題です。これも少しスポーツをすれば解決するのに。


(政治)
1)3月に新政府が発足して早くも1ヶ月近くになりましたが,新政府の評価を経済界の要人にしてもらうと、評価は時期尚早とする人もいますが,大半は良くやっている、もしくは財界そろって応援すべきになっており、風は明らかに順風です。

2)厚生年金の支給対象はこれまで男性で65歳,女性は60歳でした。これを女性も65歳にしてはどうかとの具申が年金運用会社からでて、話題になっています
野党はこれが成立して有利なのは政府じゃないかと反対声明。
この案に賛成する側は,男性と女性の定年を違った年齢にするのは不平等、さらに年金受け取り開始年齢を5歳上げることで女性が受け取る金額が平均で61%も上昇すると計算しています。
(注、 対象年齢になる前に早期退職で年金を貰い始めることもできます。その場合受け取り金額がかなり減少しますが、一度貰い始めると同じベースになります。
チリでは平均死亡推定年齢が伸びています。つまり支払い月数が増える傾向にあるわけで,貯めた金額が同じなら毎月の支払い金額が下がる傾向にあります。で、待っていて金額が下がるより早めに貰い始めた方が有利という声もあります。さぁ私はいつまで働いていつから年金をもらおうかな?

3)大気汚染問題
しかし政府の発表では大気汚染問題は規制が効いて良くなっているとなっていますが、今週の新聞報道では汚染測定機械の種類,設置場所の選定に問題あり,測定が上手くできていない上に工場の大気汚染を調べる係員の数が少なすぎる,また交通面でもトランサンティアゴ計画が大幅に遅れ改善は進んでいない。その結果この数年汚染問題の改善は無いと厳しい。
これを受け,政府は環境保全局に短期的と長期的見直し案の早期作成を指示。新聞に先を越されました。

4)今週、軍事政権時殺害された共産党系関係者の記念セレモニーがありました。殺害されたうちの一人の奥さんとバチェレット大統領が友人だったこともあり、大統領もそれに出席し,彼女はこの殺人事件を含む軍事政権時の人権問題につき、私の政権の間は事態究明の捜査は継続する。政治的解決のための(これ以上の事件解明を行わないとする)最終宣言は行わないとコメントしました。
アルゼンチンでは軍事政権時の犯罪はこれ以上責任を追及しないことになっており、チリとは異なった方針をとっています。
バチェレットの父親も刑務所で死亡していますが、それは拷問による死亡ではなく持病の心臓発作が起こったとき、適切な処置を受けられなかったとされています。彼が死んだとき、その場にいた男性が、私の知り合いの親戚ですからこの話は確かでしょう。

5)チリ政府は技術分野の革新に力を入れると言明していたが,今年のWEF発表では情報技術世界ランキングでチリを29位にランクしました。ちなみに1位はアメリカ,ついでシンガポール,デンマークです。日本は16位でした。チリのランキングがラテンアメリカではトップ。ブラジルやメキシコもしのいでいます。

5)テレビジョン・ナショナル(TVN)というのはチリの国営テレビで,日本ならNHKですが、ある国会議員が新聞に論文を掲載し、最近のTVNはチリの国民に正しい報道をすること、また文化芸術レベルの向上に役立つ番組を制作することを怠っていると厳しく批判していました。
チリの場合、聴視料を取っていないので、番組制作にはスポンサーが必要で、どうしても他の民法局と競争し,文化的教育的番組をゴールデン・アワーに流すのは難しいという制約はあるのですが、これななんかNHKの人はどう解釈するでしょうか?

7)隣国の話題
ボリビアで航空会社(LAB)の従業員がストに入り、政府に同社の買取を要請しています。大統領はボリビア政府は大幅赤字の同社を買い取る余裕はないと冷たいですが,彼が反政府の時期は同じようなことをやっていたのは皮肉。
一方ペルーは大統領選挙がまぢかです。1次選挙はウマラが勝つでしょうが、50%以上の投票を獲得できないので2次決戦にもつれこみ、そのとき常識派のフローレスが勝つと見ますがどうかな?
しかしフローレス(女性です)が勝てばチリ.ペルーとも女性大統領となります。アルゼンチンも次期選挙には女性候補が有力と見られ、いったい女性の進出はどこまで続くのか?
アメリカだって次期選挙はライス対ヒラリー・クリントンの争いといわれますからね!


(経済) 
1)銅価格
  いったいどうなってしまうのか?また今週も銅価格が上昇新記録を書き換えました。1ポンド2ドル50セント。
ガソリン価格が高騰してチリで市民生活に厳しいパンチとなっているのと同じように、この銅価格上昇が世界にインパクトを与えていますが、チリには逆に神風になっています。しかしこんなに銅山の収益が上がれば、いったい会社や国家はどう対処するのだろう?
もちろん銅を素材として使用している企業はこの価格上昇を製品価格に組み入れられないだろうから,赤字操業転落も考えられ,逆に銅以外の素材への転出速度も速められるはず。それがチリに戻ってくることは十分想像できるから何事もほどほどが大切。

2)原油価格の沸騰から製品価格も上がっているのはチリだけではなく世界共通の問題ですが、チリの場合、ディーゼル油は政府が保険をかけていて一定価格以上には上がらないことになっています。この保険が切れるのですが、政府は保険金額が高すぎると継続しないことを発表しました。このため原油価格の上昇は即時チリでも製品価格に影響することになりました。これを受けトラック組合などはストを含む実力行使もありうると政府の政策に反対の声明しています。
ディーゼルオイルでもガソリンでも税金が大きな部分を占めているから,政府は価格が上昇すれば,即時税収アップになる。それなら、税金均分を下げても税収の安定は図られるし、同時に価格安定もはかれるがどうか?

3)失業率が順調に下がって最近の3ヶ月(12−2月)で7.3%まで下降。このため政府は従来の非常事態制度を取りやめ,特別失業対策を通常シフトに転換することにしました。


(一般)
1)学校の先生は生徒の評価をするのですが,最近政府が学校の先生を評価する試みを行い,その結果が発表されました。何と41%の先生が低い評価(更なる努力が必要)になっています。
その中では30代の先生が最も高い評価を受け,低い評価の先生は高年齢層に集中しました。経験があっても気力体力が伴わないのか?
低い評価を受けた先生の一人が、その評価方法についてクレームを出し、自分は政府表彰も受けたことがあり、地区の学校内で他の先生のレベルを高める仕事をしているのに先生に値しないなんてどういうことかと怒っていました。逆に政府側からはテストで不十分の評価を受けた教師は次のテストに合格するまで自宅謹慎にすべきなどとの強硬意見も出ています。

2)サンティアゴの3月の気温は通常ではなかったと発表されました。気象庁の発表では通年の平均最高気温は26.9度,今年はそれが何と28.3度。この違いは大きい。やっぱり暑かったんですね、今年の3月は。さて4月はどうなるかな?

3)今週から6月までスペインの3大画家展覧会が開かれます。ピカソ,ミロとゴヤです。これも見に行かなければなりませんね。昔バルセロナピカソ美術館を訪ねたとき、彼が10代で描いた作品を見て驚いた経験がありますが、彼は10代で人の死(さらにはその近親者の苦しみ)について表現しようとしていました。さすが天才ですね。

4)今週、フィダエと呼ばれる航空見本市がサンティアゴ空港で開催され、週末は一般市民にも開かれました。世界各国からの最新鋭航空機が展示即売?され、航空ショウーもあるので家族づれで見に行く人が多いのですが,飛行場までの道路がそれほど多くの車を一度に受け入れるようになっていないので、ひどい交通渋滞が起こり僅か2Kくらいの距離を2時間もかかったとブーブー言っていました。この渋滞で飛行場につけず、出発する飛行機に乗り遅れた乗客も出たとか。いやはや運の悪い人はどこにもいるものです。


(スポーツ)
1)サッカー
 今週のリベルタドール杯はチリに取っては最高でした。今年この大会にチリから参加しているのはウニオン・エスパニョ-ラとカトリカ大学ですが、前者はボリビアで対戦、勝利を収め,これはチリのチームが高地ラ.パスでの初めての勝利と歴史的。またカトリカはコロンビアでこれまた勝利を収め、なんとチリチームが連勝でした。両チームの1次リーグ突破を祈ります。
 国内では練習試合でチリの2大人気チームのコロコロとチリ大学が対戦。チリ大学(ラ・ウー)が勝ちました。試合は第8州のチアンで行われましたが,試合終了後、両チームのファンが騒ぎを起こし、逮捕者多数と見苦しい結果。
 リーグ戦では無敗だったラ・ウーが敗れたため上位チームの差が無くなり混沌としてきました。

2)テニス
 デービスカップ前哨戦のATPマイアミ大会で不本意な負け方をしてしまったチリ選手は場所をカリフォリニアに移し来週のデービスカップに備え練習中。
一方,若くして選手生命を終えたリオスは今週始めてシニアのツァーに出場しドーハ大会で優勝。次は香港大会とか。しかし昔の世界トップレベルが参加するこのシリーズだが、30歳のリオスと40歳以上の選手が対戦するのはちょっとおかしい気もするが。


以上