チリの風  その168  06年3月20日-26日

チリの風  その168  06年3月20日-26日

日本からチリに家族訪問に来られたご夫妻と友人宅で会食させてもらった。お二人ともランナーで、特にご主人の場合は、私のように口先だけのランナーでなく、何とウルトラ・マラソン(100K)も走っておられるとか。しかし日本もすごい。彼のようなスーパーランナーがたくさんいるのですから。しっかり励まされました。そしてプレゼントしてもらったハチマキを絞めて土曜日も日曜日も練習をしたら、疲れてはててしまった。アホやな。
エジプト紀行文も原稿用紙で70枚を越えました。200枚目標で書いています。乞うご期待。


(政治)
1)もちろん、最初はバチェレットの外遊でしょうね。
しかし不思議なのはチリのメディアの取り扱い方で、新聞の1面トップで大騒ぎとかテレビで夜のニュースで大特集という感じがありませんでした。毎回お知らせしているように選挙のときなど必要以上に過剰反応するチリのメディアが、彼女の始めての外遊を冷めた感じで取り扱っていることは何か理由があるのでしょう。
例の天然ガスの供給問題では、チリの家庭には全く迷惑をかけないと言うアルゼンチン政府の言質を取り付けたとバチェレットは喜んで報告していますが, 同行の外務大臣は今年は昨年以上にガスの供給削減に直面するだろうとコメントしています。家庭用はともかく工場用の天然ガスは来るか来ないか全く分からないと言っているわけです。アルゼンチンからの天然ガスを大量に買い付ける契約をして一般家庭や中小工場にその安全供給を約束したときと、現在のアルゼンチンの態度は全く違うのにそれを攻められないのが弱いところ。その他の懸案事項にもさっぱり明快な回答が出ていません。いったい何をしに行ったのかな?この結果がわかっていて何故最初の外遊先をアルゼンチンにしたのか不思議です。もちろんそれなりの理由があるのでしょうが。
その後、少しウルグアイにも寄ったようですが、アルゼンチンでの動きよりさらに控えめなニュースしかありません。
それから分けのわからないニュースですが、最近チリ海軍がオランダで購入した駆逐艦が差し押さえられました。何でも軍事政権時チロエ島の土地をもっていた企業が当時の政府と税金か何かで揉め,その所有権を外国(オランダ)企業に譲渡,その企業はチリ国を訴えていましたが,まったくチリ側が反応しないため26年経ってからオランダの法廷に訴え出たもの。金利もついて6000万ドルと大した金額。チリ政府はそれは国内問題、オランダの裁判所の管轄ではないとしていますが、軍艦はチリに来るのかな?

2)それから次は国民年金の支給額の引き上げです。最低支給額を10%アップとか。
もちろん、国民に大きな期待を抱かせるものです。法案が国会に回ってそれが可決されてから実現する夢ですが,期待しましょう。
せめて年金の最低支払額は給料の最低賃金分と同じにしてほしいとか、何十年も働いてこんな年金では生活できないというクレームもありますが、自分が積み立てた額から年金は払われるわけで,国も国民に年金として給料は払えません。それでもこの改正で約120万人の国民が恩恵を受けます。例え僅かでも無いよりましです。

3)各政党の次期執行部の選挙が近いのですが,新聞の論調に次のような厳しいものが掲載されました。
チリの政党の中で4つの政党が民主(D)という単語を使用しているが(DC,PPD,PSRDとUDI),そのいずれも民主主義で執行部が選ばれているようには見えない。もっとも民主を使っていない他の政党も(社会党,共産党など)長年同じ人間が執行部を牛耳っており,これも民主主義とは思えない。つまりチリ国が民主化するのに最初に変革が必要なのは政党だ。当たっている?

4)お隣りのボリビア米州機構ボリビアの海回復について緊急会議の申請を行いました。もちろんバチェレットはこの種の議論は二国間で行われるもので国際機関の介入する問題ではないとコメントしています。これは従来と同じ展開で新味もないし、発展もありません。まぁ一応形式だけと言う感じ。
ところでラ・パスで爆弾騒ぎがあり、犯人のカップルが捕まりましたが, なんと男はアメリカ人でした。わざわざボリビアまで爆弾攻撃をしに行かなくても。
もう一つのお隣りさんペルー関連では、間近かに迫った大統領選挙でわけの分からない元軍人ウマラの人気急上昇とか。しかしトレドで失敗したのにまた同じ類の大統領を選ぶなんて不思議な国民だ。彼はランペルーがペルーの空独占は容認しがたいなど、反チリを前面に出している。
ダウジョーンズがこのニュースに反応してペルー国の危険度を上げました。

ところでメルクリオ紙の日曜特集にフジモリが大きく出たのはまだ彼に望みがあるということか?私の目ではもう可能性なしなのだが、専門家は他のニュースソースを持っているから・・・ 日本政府のさらなる介入なんてあるのかな?


(経済)
1)銅の価格
また記録を破ってポンドあたり2ドル38セントになりました。1ドルにならない時期もあったのですが、それが,ここまで・・・。チリにとって1セントの上昇が一億ドル(100億円)の収入増ですからね。06年もチリの好調は間違いないでしょう。
コデルコなんて大盤振る舞いで昨年は部長課長クラスでもボーナス何か月分,ダイレクタ-なんかもっと懐に入ったらしい。うらやましい。民間の鉱山会社はそれほど従業員に甘い顔を見せていないらしいが。
コデルコの前社長は常々、会社の目標はコストを下げることではなく、生産量を上げることだと強気一本槍でしたから、こんなことが許されるのでしょう。
このお陰でチリの株式市況も過去数ヶ月で最高のレベルに戻っています。

2)生活費
2005年におけるチリ家庭の生活費用の分類統計が発表されましたが,それによると貧しい家族クラスが対前年14%の支出増になっているのに対し富裕な層では2%の増加しか記録されていません。支出増の項目では貧困層では衣服靴類が増加のトップで富裕層ではコミュニケーション関係費用がトップでした。そうでしょうね。

3)新規採用に必要な労働者の見込み数が発表になりましたが,今年は公共事業,建設,鉱業の3業種の伸びが一番目立っており、それぞれ3万人くらいの雇用をする見込み。07年はビルなどの需要が更に伸びる見込みで、建設業界の大きな伸びが見込まれている。
つまり失業率は更に減少する予定。


(一般)
1)しかし運の良い人はどこでもいるものですね。今週の宝くじで過去最高の金額なんと21億ペソ(約4億円)当たった人がいます。サンティアゴのその人はガードマンをしていて給料は5万円だそうです
当たったことが分かったとき、お金がなかったので、みんなで水道の水で乾杯をしたとか。 ご主人は今住んでいる地区からもっと違うところに替わりたいと言い,奥さんは貧民街でも、馴染んだここを移るつもりはないと揉めているらしい。飛行機に乗るのが怖いので、お祝いの当選記念旅行は国内旅行になるとか。

2)首都圏高速道が開通し、市民生活に馴染んできましたが、予想以上に交通渋滞の問題が出ています。この問題を解決するためのアイデアとして、通行料金の値上げが考えられています。市民は開通したばかりの高速で渋滞が起こるのは設計の問題で,それを値上げの口実にするなんて全く理屈に合わないとカンカンですが,業者と政府の契約条項の中にこの渋滞による値上げはちゃんと盛り込まれており、合法らしい。
これに関連して、サンティアゴで車を持っていると現在月に13万ペソかかるらしい。それがわずか3年前には8万ペソだったのだから、車の維持費の急上昇が目立つ。この費用アップの主要原因はガソリン代の上昇と高速道路の通行費です。

3)アエロリネア・ランがアルゼンチンの航空業界に参入して1年立ちましたが、業績の伸びが目覚しく、今年は同国の3分の1のシェアと黒字化を狙っています。
一方,本体のランチリはチリの75%のシェアを持ち2006年の売上目標は30億ドルとか。ランチリのペルー会社は来月の大統領選挙の後、かなりの政治影響を受けそうですが、トレド政府がランペルーの操業縮小を命令しても、他の会社がランペルーと同じようなサービスを提供できなかったので、一般市民はそれを受け入れなかった事実が示すようにウマラが勝ってもランペルー憎しだけではやっていけません。

4)これまたもうチリの弱点になってしまったペニャロレンの不法占拠問題。これを放置すると、貧乏人がかってに(新築でまだ入居者がいない)他人の家に入り込み,私たちは過去何年も家がなくて苦しんできた,自分たちも家に住む権利があるはずだと泣き叫び,そのまま他人の家を自分のものにする不法が通る可能性があります。バチェレット政権もしっかりした対応をしてほしもの。
この土地不法占拠グループで政府の譲歩を勝ち取った最初のグループの新しい家への引っ越しが始まりました。軍隊の援助で最初の5家族が新居に。

5)アリカに豪華客船がつくと、その乗客が一日ツァーで近郊の観光地を訪問します。ここまでは日常で何ら問題はないのですが,この水曜日チュンガラ湖からの戻り、そのアメリカ人観光客を乗せたマイクロバスががけ下に転落。ほぼ全員の12名の観光客が死亡しました。
しかし観光船で外国に出たとき,入国した国で一日観光をするのは通常ですが,まさかこんな大事故になるとは・・。運転手とガイドはチリ人でしたが,二人とも生き延びました。

6)チリは火山国ですが、現在一番活動が盛んで噴火による被害が心配されているのは北部のサン・ペドロ・デ・アタカマから近いラスカル山です。

7)野犬の問題
先月エジプトに行ったとき、野犬が一匹もいないのに驚きましたが、きっと食べてしまうのでしょうね、ところがサンティアゴでは推定25万匹もいて毎日40人がそれに噛まれる事故が起こっているとか。確かにセントロ(中心部)に行ってもちゃんと野犬はいます。先日の大統領交代の式典に先立ち、その周辺の野犬狩りをしたらしい。新聞では30匹捕獲と報道されています。野犬は人間に噛み付くだけでなく伝染病の媒体となるわけで彼らの処理が検討されています。

8)2100年には南極大陸に氷原はなくなるとか、2050年にはアマゾン原始林の半分は消滅とか言われていますが, チリも環境破壊に反対して自然保護にもっと力を入れてもらいたいものです。確かに、もちろん失業率を下げるのも大問題で、環境保全とは相反することになることもありますが・・・。 
じゃ2005年に国民総生産が過去8年間の最高の6.3%アップしたのは自然保護には悪い報せ?


(スポーツ)
1)カトリカの勝利
サッカーの弱小国になってしまったチリのチームが外国チームに勝つのは珍しい。
今週カトリカはリベルタドーレス杯の第4グループでコロンビアのデポルティボ・カリと対戦しました。
その日サッカー場に行くため私はカトリカのユニフォームを着て道路に立ってバスを待ちました。すると一台の車が止まって、「おーい、中国人、乗れ!」と叫びました。私は中国人ではありませんが、サッカー場までのせてもらいました。
満員の観衆が熱狂的に声援する中、カトリカは2対1で勝利。グループのトップを占め1次予選突破の見込みです。他のメンバーはブラジルとメキシコのチームです。
さて国内リーグのほうはトップを走っていたイタリアーノが負け、チリ大学が浮上。今年はカトリカ、コロコロとこのチリ大学の3チームの争いになってきました。

2)テニス
デービスカップの試合が近づいて来ましたが、それに先立ったマイアミのATP大会でチリの選手は順調に勝ち進んで第3回戦まで進出しましたが、そこまで。残念。


以上