チリの風 その167 06年3月13日―19日

チリの風 その167 06年3月13日―19日

夏時間が終わって冬時間(自然時間)が始まった今週,季節はかなり変化しました。朝晩は涼しいというより寒くなってきたし、昼だってもう30度を越えることが少なくなってきました。秋ですね。
そんな土曜日、マラソン練習でいつものコースを2周、32Kを走りました。2時間58分で完走。しかしここまでは来られるのですが,4月9日のマラソンは魔の35Kが待っていますから・・・怖いです。
ところでチリの風の旅行記コーナーにチリ銅鉱山について書いたものを掲載しました。題は固いけど内容は全然違いますから読んでください。チリで鉱山に関係した仕事の人でも知らないことがあるかもしれませんよ。


(政治)
1)バチェレットの政治が始まりました。無難な幕開けといえるでしょうか、トピックは二つです。
先ずなんと60歳以上の中高年層に医療費の無料化を行うことになりました。先進国ではこの種の恩典はよくありますが,チリもその仲間入りをしたわけです。素晴らしい。
この無料化の恩典にいろんな条件があるのか詳しいことは分かりませんが,公共診療所で即実施とか。私の場合は医療保険に入っていて、高い保険料を毎月払わされていますから、必要なら公共でなく民間の医療機関にかかっています。したがって60歳になってもこの恩典を受けることはないかもしれませんが。
それからこれに関して、今まで夫婦なら、ご主人がその保険に入っていれば、奥さんもその適応を享受できました。それが今回, 戸籍上の夫婦でなくても同棲だけで同様メリットを享受できることになりました。現実が理論に勝っていくということでしょう。これで40万カップルがこの変更の恩典を利用できるとか。それと夫婦の場合で,奥さんが保険に入っていれば、その逆にご主人がそのメリットを受けることができることになりました。今まではそれは不許可でした。チリは女性の進出が目覚しい、その一例と言えるでしょう。
もう一つのトピックは与党の混乱を示すもので、任命されたばかりの郡知事が、同じ与党内からの批判で辞任しました。その女性は軍事政権時ピノチェット側で働いたというものです。政府の人事選定に問題があったわけですが、調整ができていないことと批判があればすぐに屈する弱い姿勢を見せてしまいました。まぁ大した問題でないともいえますが。
さて彼女の最初の外遊は来週アルゼンチンですが, ここでは天然ガスの供給削減問題が議題ですから、大したことはないではすみません。厳しい状況です。これに関連して、エネルギー源の価格上昇から電気代の値上げは避けられないと早くも政府発表がありました。
一方,ボリビアは3月23日、「ボリビアの海」記念日を迎えます。この日はトパテルの戦い(トパテルは現在のチリではカラマ)が始まった日です。(注・カラマは世界最大級の銅鉱山チュキカマタのある町です)
さぁボリビアの海をめぐっての戦いの行方は?
ところでバチェレットの父親は空軍軍人で,しかも軍事革命時に殺されていますから、その被害者たちの間では、彼女が大統領になったら73年以降の軍による行方不明者事件の究明が進むと考えられていました。ところが、今週彼女がバルパライソに海軍の帆船エスメラルダを訪問した際、その船で拷問殺害が行われていた事実を全く不問にし、船長以下と歓談して帰ったと被害者の家族が疑問を投げかけています。大統領はそれに関し、過去の事実は消し去ることはできないが、現在すべきことは将来を見て歩くことだとコメントしています。
しかしこの4年で貧困層の撲滅(減少)をスローガンに走り始めたバチェレット政権, 上手くいってほしいものです。

2)野党が弱いと書きましたが、その野党第1党UDIの次期執行部選考にあたり、党員一人一票で投票を行って決めるのか、幹部間の調整で決定するのかもめました。新しい風を入れるためには投票をするのが当然ですが, それを現執行部が嫌がり、従来どおりの事前根回しで何とか解決しようとしました。権力を持った人間がそれを放したくないというのは世界中どこでも同じです。
結局同党の民主化を要求していたラス・コンデス区長の要求は通らず, 逆に同党の結束を乱したと批判される結果に終わりましたが、もちろんこの抗争は継続するでしょうね。

3)大統領の交代式典に日本代表できた中川は内務大臣のサルディバルと面談し,フジモリ問題でチリ政府が適切な対応を取るよう要請したらしい。
しかしチリもフジモリを飼い殺しというか見殺しというか、ペルーに送る, 日本に戻す、またはチリ内で自宅監禁に処分を緩めるなどの進展を取らず何も対応しないまま放置している。フジモリにとって最悪のケース。この先どうなるのか?

4)ピノチェットの財産が一億ドルを越えていると国家安全委員会のメンバーがアメリカ訪問して調査したり, ピノチェットノ弁護士がそれらの金は88年の投票のときの寄付金だとコメントするなど, いつも同じニュースは珍しくありませんが、次のニュースはそのような繰り返しの例とは違います。
セマチリと言うのは軍事政権時、大きな影響力を持っていた市民団体で,ピノチェットの奥さんのルシアが代表をしていました。軍人を中心に一般女性市民や子供の社会活動を助ける名義で各地にその集会所を持ち活発な行動が見られました。今回, 軍事政権が終わってから既に16年も立ちますが、そのセマチリへの経済援助を打ち切ることが決定されました。その援助とは、宝くじの売上からまわされると法律で決められており軍事政権時はともかく民政化してからも16年間で総計25億ペソが支払われているとか。今回の措置はその巨額の援助金の行方が不明なことも含め, 軍事政権時の組織の清算をしてしまおうと言う事だろう。


(経済)
1)銅の輸出がこの2月前年対比70%の増加。
このタイトルを見れば, 私は新しい鉱山が活動を始めたのかと思いました。それにしてはそんな鉱山なんて思い当たらないけれど。なんだ、銅の価格が急上昇しているので輸出価格が70%増加とのこと。 1―2月合計でも前年の52%アップとか。今年もチリの輸出金額の半分以上が銅で、それも好調の継続のようですね。
コデルコの社長が交代しました。同社がどう動くか楽しみです。コデルコは国営なので大統領が替わると、他の大手の国営企業と同じく社長以下ダイレクタ-の大幅変更があります。新旧社長ともマインの仕事には全く経験なく、キリスト教民主党のメンバーという共通点があります。

2)2月のチリ輸出で目に付くのはアメリカ向けが21%アップ, 2位の日本向けも11%アップです。日本の場合, 一方的にチリの出超でもっと日本品を買ってもらいたいもの。ところで両国の自由貿易協定はチリ側の見解では今年9月に締結できるとか。

3)一方,ガソリンの方も価格上昇で,来週月曜日からとうとう1リットル600ペソを越えます。今年になって1リットルで平均36ペソ(7円)の上昇。

4)自動車が売れるのは経済が好調の証しでしょうが、06年1−2月の売れ行きは記録的な売上を記録した05年を更に上回りそうです。乗用車の売上のトップはトヨタのジャリスでした。そうか車は日本が売上の上位を占めているのか。


(一般)
1)チリの家族感
  しかしわずかの間にチリの家族は大きな変化をしました。1960年には1家族に平均5.4人の子供がいたのに、今では1.9人です。結婚年齢が過去20年で3年遅くなりました。現在では男性が平均29歳,女性は26.4歳とか。
  1960には夫婦間以外から子供が生まれる率は16%でしたが,昨年では58%,結婚制度の崩壊を示しています。女性が家族の中心になっている家族が38%, 大統領のバチェレットもこの中に入ります。
  しかし保守的とかカトリックの国と言われるチリが他国の影響をもろに受けて急速な変化をしているのがこれらの数字から分かります。

2)高速道路の建設は首都サンティアゴだけでなく全国で広範囲に渡って行なわれ,それが失業率低下の一因にもなっています。
さてサンティアゴで現在注目されているのはサン・クリストバル丘の下にトンネルを作る計画ですがを,この穴のあけ方が,チリでは始めての掘削機を使っての方式になりました。地下鉱山ではおなじみの機械ですが、トンネル建設では初めての例。 1年くらいで丘の下に1キロほどのトンネルが出来上がります。

2)ペニャロレンの土地不法占拠
  やぁ続いていますね。いいかげんにしてほしい。空き地に勝手に入り込みそこに掘っ立て小屋を建て住み着いてしまう。その排除に来た警察と戦う。
最後は政府も折れて彼らに安い住宅を建設する。このやりかたで一部のグループが成功したのでそれを真似するほかのグループが出てくるわけですが, 今週のニュースではそのグループを指揮しているのはアルゼンチンから来ているその種の運動のプロと言うことです。しかし・・・

3)クリコの警官殺害
  クリコは第7州の街ですが,そこで自転車泥棒を目撃した非番の警官がその犯人を取り押さえようとしたところ、犯人が銃を持っており,逆に射殺されました。そしてその犯人が何と未青年だったので大騒ぎ。二人の犯人は裁判所に出頭しても全く自分たちが犯人との自覚もなく、裁判に傍聴に来た知り合いに手を振って挨拶。これでは殺された警察も浮かばれません。

5)鳥のインフルエンサ
  チリにはまだその症状が出ていませんが、政府はその対処として鶏舎で働く人間2万人に予防接種をするなど準備を進めています。チリは鶏肉の輸出国ですから, この病気が発生すれば大変な社会問題になります。私も鶏肉が食べられないとなれば, 夜の献立に困るようになる?

6)ロバート・ケネディと言えば暗殺されたケネディ家の大統領候補ですが、その息子がチリに来てパタゴニアの自然保護の運動をしました。その一つが第11州のアイセンで計画中の発電用のダム建設に反対です。

(スポーツ)
1)サッカー
 チリ・ナショナルチームの欧州遠征はお知らせしましたが,それに引退寸前のサラスを加えるかどうか問題になっています。監督のアコスタはサラスをメンバーにしたい意向があるらしいが、若いメンバーに場数を踏ませる方が良いんじゃないでしょうか?
 国内の話題では、せっかくチームとしてカトリカは勝ちつづけているのに,その応援団の中で傷害事件が発生。さいわい死亡にはいたりませんでしたが、ナイフで切りつける事件が起こりました。カトリカはチリの中では一番常識的なチームと考えられこの種の事故とは縁が無いはずだったのですが・・・やっぱりチリの社会問題は豊かになるにつれて深くなっていくようです。
 そのカトリカですが、来週,リベルタドーレス杯で本拠地のサン・カルロス・デ・アポキンドでコロンビアのチームを迎えます。これに勝って2回戦進出に向け安定した地位を確定したいところ。


以上