チリの風 その165  06年2月27日―3月5日

チリの風 その165  06年2月27日―3月5日

いっとき涼しくなったのに週末また暑くなりました。三寒四温ならぬ三温四寒でしょうね。
ところで新学年が始まり、夏休みも終わった学生、サラリーマンが一斉に通勤,通学を始めました。で、もちろん交通渋滞が増加し、今まで10分だったところが20分かかったりします。イライラすると身心に悪いので、のんびり諦めるほかありません。
私の住むアパートの前の林に野生のインコが群生し、綺麗な羽の色を見せています。ただ鳴き声は他の野鳥と比べてギャ-ギャ-うるさいですが。


(政治)
1)来ました。例の公共事業省の給料不正支払い問題でラゴス大統領のところに質問状がでました。この件で、担当裁判官のチェヴェリッシは既にかなりの人間を訴訟しています。その中には元担当大臣やラゴスの奥さんの親戚で公共事業省の役職に着いていた人間も含まれます。
さてこの事件に関し、彼女は上司から大統領を巻き込まないようにと(不正な)指示を受けていましたが、彼が大統領職を終了する間際になってこの措置を取ったもの。大統領はその質問状に回答し、自分は不正な給料支払いについては何ら感知しない。省は毎年監督を受けるのだから、不正があったかどうかはその監督庁に問い合わせるのが適切ではないかとしています。フーム苦しい。大統領の交替まであと1週間ですからね。

2)各省の次官とか州知事など残っていた新政府メンバーの名前の発表がありました。公約どおり、男女の数はほぼ半数ずつでした。ところで州知事の年齢は平均40歳くらいですが、第1州なんて33歳の女性です。大丈夫かな?経験も少なくて。
さて、与党を構成する各党は、前回に比べて獲得した次官の数が少ないとか、選挙の投票率より次官の分配率が少ないとかクレームしています。勝手に文句を言っておけといいたくなりますが。
ところで、チリの与党グループの政党は世界的に珍しいことが二つあります。他の国ではキリスト教民主党(DC)は全部右翼グループに属するのにチリでは左翼グループと組んでいます。また社会党というのは社会主義政党なのにチリの社会党はその信条を替えて資本主義をその基本にしている世界で例を見ない存在です。やっぱり無理があるのか、チリは融通性が高いのか?
ラゴス大統領は「左翼=アジェンデのイメージに当初苦しんだが,チリの社会党は国を運営する力があることをこの6年間で示せた」とコメント。

3)隣国の話題
 その1) 先週、アイルランドのロックグループU2が国立競技場に満員の7万人を集め演奏しました。
   そのグループのボーカリスト・ボノをラゴス大統領はモネダ宮殿に呼び勲章を授与しましたが、その時彼にお土産としてチャランゴを渡しました。それについてボリビアチャランゴボリビアの楽器,チリのものではないと抗議。彼らにすると、ボリビア政府がイースター島のモアイをお客様に差し上げるようなものとか。これに対し、ラゴスチャランゴアンデス高地(アルチプラーノ)の楽器。チリの北部もアンデス高地に含まれ、この地域の各国が共有する文化といえるでしょうと軽く反発。ボノはこのあと、ブエノス・アイレスのショウ-でこのチャランゴを弾いています。
   この程度のレベルの問題なら両国間に波風は立ちません。しかし本当に両国間の関係は改善されつつあるのか、表面的に良くなっただけかは,次の2−3ヶ月ではっきりします。

その2)フジモリの婚約者がチリを訪問し彼と面談しました。彼女はしばらくチリにいるのかな?その片岡さんはフジモリがチリで拘置されてから3ヵ月半も彼を訪問しなかったが,今回、突然チリに来て、先週末、刑務官学校に収容されている彼を訪問した由。ある新聞では1週間,違う新聞では3週間チリに滞在するらしい。新聞報道では彼女は日本の自民党と関係が深く,その政治力を使ってフジモリ支援が出来るか?
  さて今週、メーカーの人間と昼食会を持つ機会がありました。その訪問者の一人にペルー人がいたので、彼にフジモリ人気を聞いたところ、政党としてはフジモリ党は力がない。しかしフジモリ時代に甘い汁を吸った連中が未だにフジモリ擁護を叫んでいるのは目にするとか。

その3)ベネスエラのチャベスがバチェレット就任式に來チしますが、彼はチリではほとんど人気がありません。普通、ピエロ(道化)と呼ばれているほど。石油の販売権を一手に握り、その資金で巨大な権力を独り占めしている彼はやりたい放題で、もはや国内無敵らしい。しかし道路や橋梁の建設も十分ではなく,最近そこを訪れた人の話で、飛行場からカラカスの中心まで何時間もかかったなど信じられないような話が聞こえてきます。
  ただアメリカに表面切ってケンカを挑むので日本のアカハタ新聞では評判が良いようです。カストロが死んだ後のキューバをベネスエラの属国にしようとしたらどうなるかな?

その4)しかしこれが今週最大の、最悪の話題でしょうね。なんとブラジルのルラ大統領はアマゾンの開発権を民間に許可したと発表。アマゾン領域の3%に当たる部分,チリで言えば第2州に当たる広さの開発権を販売するらしい。もちろんブラジル政府にすればこれで1億ドルの税収が見込まれ、今年は一息でしょうが、これが進むに連れ地球的に酸素が失われることになり、私の孫の時代には酸素が不足で人間が死んでいくのかな。
  もっともブラジル政府の見解では、こうしてちゃんと政府が開発を把握していなければ,結果的には何がなんだかわからないうちに(なし崩し的に)アマゾンは開発されてしまうと警告しています。


(経済)
1)2月の消費者物価の上昇率はマイナス0.1%となり、1−2月の合計数字は0%の物価上昇です。チリの経済が落ち着いていることを示しています。

2)失業率も継続的に低下し、チリの安定した成長を物語っています。
05年11月から06年1月の3ヶ月平均で7.0%になり、過去8年間で最低の水準になりました。

3)しかし経済の大企業集中の気配は変わりません。2005年に記録されたチリの輸出企業は6880社ですが、その内のわずか10社で全輸出の半分を占めています。もっと極端に言うなら、トップ30社のうち70%が鉱山会社ですから、とにかくチリは銅の国ということでしょう。

4)アルゼンチンからの天然ガスの供給削減がまた問題になっていますが、アルゼンチン側の専門家は「投資がなければ供給量を増加できないのは当然でこれは天然ガス保有量の問題ではない」ときっぱり。そうでしょうね,今のアルゼンチン政府の状態ではそれを望むのはかなり難しい気がします。で、チリ側の小規模工場はエネルギー源(不足)問題と、アルゼンチン製品との競争の二大問題を抱えるわけです。「あいつらのコストときたら、エネルギー源はほとんど無料みたいなものだからね」とチリ側企業は、アルゼンチン政府が自国内でのガス,電気の料金を極めて低く設定していることを憤っています。


(一般)
1)一番話題を呼んだのはラテンアメリカで一番高いビルの建設がはじまったことでしょう。このビルの最初の基礎石をラゴス大統領が置きました。出来上がりの2009年にはバチェレット大統領を呼んで竣工式を行いたいとオーナーのポールマンが言っています。彼はドイツ人で、チリでスーパーマーケットやデパートを持つ成功者です。
このビルは250mの高さを持ち、南アメリカではもっとも高層のビルとなる。工費は全部で3億ドルとか。

2)地下鉄4号線でペンディングになっていた区間が開通。これでトバラバとプエンテ・アルト間が全線開通し、今までより1時間も短縮されます。往復で2時間バスより早いなんて同地区の住民には涙の出るほどうれしいニュースです。早く1号線や2号線の延長も完成してほしい。

3)次の土曜日,11日に夏時間が終わり、通常時間の開始になります。


(スポーツ)
1)やっぱりマラドーナでしょうね、今週の話題は。詳しいことはわかりませんが、チリサッカー選手協会が、チリナショナル・チームと前年のチャンピオン、カトリカの試合を企画し、それにマラドーナを目玉として呼んだわけ。来るのか来ないのかと気をもんで待っていると、遅れて到着、あわてて競技場に行かなければならないところ、まずはホテルでチェックイン。サッカー場に到着したときは、もう試合は後半戦といつもの通り、いいかげんな様子でしたが,さすがに世界のマラドーナ,一歩ピッチに立つと、観衆は自然とマラドーナの名前を叫びだし、カトリカのユニフォームもぴったり決まって試合に参加。もっともこんな試合をいくらしてもチリの選手レベルは上がりませんが。
次の正式な国際試合は4月25日、チリでのニュージーランド戦です。
国内リーグ戦はアウダクッス・イタリアーノが首位を守り,その後を、チリ
大学、コロコロ、カトリカが追いかけています。
しかしワールドカップに参加できないチリと違って日本はワクワクする日が近いのですが、この週、日本はボスニアと引き分け、同じ組で対戦するクロアシアはアルゼンチンに勝ちましたからね。ワールドカップの予選も日本にとって厳しいです。

2)水泳の話題。現在コロンビアで実施中の南米大会で、チリは既に金メダルを獲得、特に女性泳者のケブリッチの活躍が目覚しい。
 なにしろ彼女は金メダル3個と,いくら南米大会が世界から遠いといっても素晴らしい活躍でした。