チリの風  その149  05年10月31日―11月6日

急に気温が上がり暑い日になってきました。30度近い日もあって、外で働いていると目が回る?暑さです。最も朝晩は涼しいですが。
さてクリスマス・ツリーに使う飾り物が商店街だけでなくスーパーマーケットにまで置かれました。もう年末も近い。
しかし、スポーツ中年の私はマラソンに登山にと張り切っています。友人の内藤さんに教えてもらったナンバ走法をマスターし, 今週火曜日(祝)32kを3時間1分で走りました。ナンバ走法とは足を蹴る力で前に進むのではなく主に腰を動かして前進しエネルギーのロスを少なくする方法です。で、まだ夏も来ていないのに私は顔も腕も足も真黒です。
サンティアゴは登山,マラソン好きの私にぴったりの素晴らしい場所です。


(政治)
1)今週のチリの話題はペルーとの領海問題の一点につきます。ペルーは国会で自国の領海の範囲を変更しました。現在チリの領海になっているところを自国のものに変更したわけです。もっともそれを相手国チリが認証すれば、有効ですが、チリは当然それを承認しませんから、今のところ実効力はありません。
チリ側認識では領土, 領海に関してチリとペルー両国の間には協定が結ばれており(1952年と54年)またそれに先立つ1929年条項で懸案になっていたものは1999年に時の大統領フジモリとフレイの間で調印され、全く懸案事項はないことになっています。
ペルーからの情報ではトレド大統領にはこのアイデアはなく前外務大臣の考えとされています。ペルーでは来年4月に選挙が実施されますが、現在トレドの国民支持率はわずか10%と南米で最下位レベルをキープし、大げさに言えば誰からも支持されていない彼が起死回生の策としてとったもの。
これが国際機関の審議事項になれば、ペルーとしては何一つ失うものはなくもしかすればチリからの譲歩を得られるかもしれない・・・,
まさに棚ボタ。
もし現実にチリの漁船がその海域でペルーの海上警備隊に拿捕されるようなことがあると戦争に発展する可能性があります。さて今週領海侵犯でペルーの漁船がアリカ(チリ側の国境の町)で拿捕されましたが、チリの業業組合の人間は、船がその日の魚の動きで漁場を少し南北に動かすのは当然で、捕まったペルー船の船員は私たちが面倒を見ている。また自分たちが向こうで捕まったら彼らが私たちを助けてくれるとコメントしていました。政治家にくらべ現実のライバルには友情があるのですね。
さて武器による衝突を防ぐため、チリとしては、アメリカ機構などの国際機関に提訴するか検討中ですが、国内世論はその是非について二分されています。ちゃんと見るところを見ているわけです。確かにアメリカ機構は政治機関で国際裁判所の役割を所持していない。
しかし興味深かったのはなぜこんな非常事態にまでなったのかと言う点で,テレビの番組で国際問題の専門家とかが討論していましたが、ある人間のコメントで「最近10年でチリが経済的に大きな成長をとげ、隣国と格差をつけたが、これにともない、認識しているかどうかは別にして、チリ国(チリ国民)が隣国を圧迫,差別化し始め,その傲慢な態度が隣国からの反発を招いているのは疑いもない事実。これをチリ政府は是正しようとしてこなかったのが問題の根源」とコメント。言えてるかも知れませんね。日本も東南アジアなんかどこでもこの種の反発を受けているでしょうから。
それからこれでボリビアに続きペルーがチリと国境問題で争うことになりましたが、この次は当然アルゼンチンでしょう。チリの南部のパタゴニアをアルゼンチンに渡してくださいと言い出すはずです。
しかし3カ国と国境線を持つチリがその全部と争うことになってはたまりませんね。それら3カ国はどこかで裏会談をしているでしょうね、当然のことながら。で、チリもそれに対抗してエクアドル、ブラジルなどに助けを求めているのでしょう。
新聞に投書が載って、だから言わんことではない、早急にボリビアの海を実現させましょう。つまり彼らの言うようにアリカの近辺を彼らに戻し、同様面積の領土を、例えばタリハ地区で、彼らから譲り受ければそこから出る天然ガスで燃料問題は解決し、ペルーとの国境問題も消滅する。これって同じことを私は大分前から言っているのですが。

2)今週、アルゼンチンで第4回米州サミット会議が開催されています。内容よりブッシュ大統領訪問反対の過激なデモで有名になったようですが、ここでもペルーの新領土宣言が問題になりました。ラゴス大統領はブッシュ大統領との面談時にこの問題を提起したと明言しています。もっともブッシュが何それ?と回答したのかもしれませんが。
ところでこの会議に出席したブッシュ訪問に反対する集会にわざわざベネスエラのチャべス大統領が参加し、またアルゼンチンではサッカー選手のマラドナ、ボリビアとチリから大統領候補のモラレス、ヒルチが出席するなどけっこうなメンバーでした。

3)と言うわけで、今週は大統領選挙関連のニュースはほとんどありません。ただ懸案の領海にラビン候補が漁船で入り、ここはチリの英雄たちが命をかけて勝ち取ったところだけに、誰にも渡すわけにはいかないとテレビカメラの前で宣言。他の候補は子供だましの政治宣伝は止めなさいと冷たい反応。さて11月16日の第2回テレビ討論会はどんなことになるのかな?

4)で、ペルーの件ですが、日曜日、夜の定時ニュースを見ていると突然、元ペルー大統領のフジモリがサンティアゴに到着と流れました。彼は国際警察から指名手配になっているので、空港で逮捕されるのかと思いましたが、そのまま市内に入り高給ホテルにチェックイン。随伴の人間が彼の書いたものを記者団に示し、近日中に記者会見をおこなうと発表。しかしペルーともめている時期にいらぬ問題を抱えてしまったチリ政府は苦悩でしょうね。
私はペルー人で日本人ではないと選挙のとき言っていた彼が日本では自分は日本人とし、やっぱり日本人というよりラテンの考え方が身についていることを世界に見せましたが、ここはチリで粘ってペルー政府と交渉でしょうね。


(経済)
1)物価上昇率
10月の物価上昇率は0.5%を記録し、今年に入ってからでは4.1%になりました。これは当初の計画よりずっと高く累計12ヶ月で4%を越えるのは最近にはなかったこと。政府はインフレ・コントロールは十分と自信は失っていないようですが・・・
さて来週の月曜日,ガソリン価格は1リットルあたり28ペソ下がる由。一方銅の価格はさらに上昇して、良かったですね。
ところで経済評論家の間では来年もこの銅価格の好調が続くのかどうかで議論を呼んでいます。政府の来年度財政を銅価格が堅調として、大盤振る舞い式の予算を立てるのか、いつまでも天気が良いわけではないと引き締めを進めるのが良いのかと言うわけです。難しい問題。
EUが環境汚染などに関し鉱業生産に新しい規制を実効しようとしていますが、これが実現すると全輸出の約30%を占める欧州向けの製品にもろに影響が出ます。これを回避するためには規制に沿った生産体制をとる必要がありますが、そのコストアップはチリ全体で三億ドルと見込まれ安易なものではありません。政府は業界と一体になってこの規制の実施を注目しているとか。

2)アンジェリーニ・グループはチリを代表する財閥ですが、その漁業部門コルペスカ社はチリで最大手の会社。そしてその漁獲高の3分の1は現在ペルーが領有権を主張している海域からの水揚げとか。しかし政治の社会は当然経済活動に影響してきますよね。

3)陸上交通見本市
来週1週間、サンティアゴでトラックなどの展示会が開催されます。南米では最大規模らしく、世界各国からの出品があって賑わいます。22ブランドのバス,トラックが展示されますが、最新鋭のマシンを見るのは楽しいものです。私の場合は仕事ですが・・・


(一般)
1)最大の話題はアントファガスタ港での油流失事件
港の前に停泊中の香港船から原油が流れ出し、町中が大騒ぎ。可愛そうにペンギン、亀、ペリカン、アザラシなどその近辺に生息する動物が油にまみれて生き延びれるかどうか心配されています。もちろん人間生活にも影響するでしょうが。
現在、懸命にその原油を回収しようとしていますが、最大7キロにもわたって汚染されてしまった海域を洗浄するのには時間がかかりそう。6千万ドルの保証金をその船会社に要求中。
この船は2004年に建造されたばかりの船なので、設備が古くて・・・ではなさそうですが。

2)赤潮問題
チリ北部の第3州と4州で赤潮が発生。100人近い人が、それに汚染された海産物を食べて入院騒ぎ。赤潮って結局人間の環境汚染の結果なのでしょうね。もちろんアントファガスタの原油汚染なんか環境汚染の直接例ですが。

3)100キロのコカイン押収
コロンビアから欧州に送るのにチリを基地にしていた麻薬グループが逮捕されました。トラックを改装して、コカインを収納し、コロンビアからチリまで6千キロを走破して来ましたが、待ち受けていた警察に捕まったと言うもの。2億ペソの価値のものらしい。
それでも今年のコカイン押収量は昨年より低いらしいから、麻薬グループの作戦が警察力を上回っているのだろう。
他の統計ではチリの労働者の20%は昨年1年間に何らかの麻薬を使用したことになっています。


(スポーツ)
1)サッカー 国内リーグは二つの話題。トップのカトリカは今週も引き分けで無敗を保持。2位のコロコロはカラマでコブレ・ロアと対戦。1対0でこれを破りましたが、試合の最後のほうに選手同士のケンカのような戦いがあって、観客席から物が投げ込まれ、審判は残り時間があるのにもかかわらず終了を宣言。惨めな終わり方。
もう一つは、06年のドイツWカップにチームとしては参加できませんが、審判が一人参加できそうです。

2)テニス  今シーズンATP大会で3回優勝したゴンサレスは目標のトップ10にもう少しの所で今シーズンを終えました。
昨年オリンピックでシングル、ダブルで優勝したマスは全く良いところがなく疑問のうちに今シーズンを終えています。

以上