チリの風 その144 05年9月25日―10月2日

チリのお祭り18も終わったので、春に向かってまっしぐらかと思ったら、ブレーキがかかってしまいまだ肌寒い日が続いています。


(政治)
1)ブラジルで南米大統領会議が開催され、ラゴス大統領は専用機でそれに出席しました。会談の前後に、アルゼンチン、ボリビア、ペルーの大統領と個別面談しています。
ペルーとは例のルクシック問題(後述)が中心だったようですが、ボリビアの場合はもっと根本的な両国の関係改善の話でした。さて次のボリビア大統領選挙の話ですが、コカの生産業者代表のモラレスが最新の人気投票でトップに立ったことをどう評価するかだったようです。彼は自分が大統領になったらコカの栽培を自由化すると公表しています。彼は外国メディアがコカとコカインを同じように扱っているのは許しがたい謀略とし、ボリビアでは有史以前からコカの葉を栽培し愛用してきた。それを化学的に変化させ麻薬のコカインにするのはアメリカなどの外国人がやっている悪行だ。コカとコカインは全く別のものである。
たしかに自国の悪行を他国になすりつけるのはアメリカが使う作戦。つまり彼の言っていることの一部は正しいが、根本的に彼が嘘をついているのは、農民は伝統的な産物としてのコカの葉を栽培しようとしているのではなく、コカインの原料としてのコカの葉を栽培したいということだ。
自分たちが家庭で使うコカの量なんてしれているし市場での売値はすずめの涙だ。これがコカイン業者が買いに入ればその値段は・・・。
つまりコカの葉は一枚も国外に持ち出させないと、彼が公表すれば話は変わってきます。でもボリビアの農民は馬鹿ではありません。
しかしチリにとってもっと重要な発言は,「自分がボリビア大統領になったら天然ガスを国有化し、国としてチリにそれを輸出する」です。
ボリビアが70年代のチリのように産業の国有化を断行し、その利益を国民にばらまいたら最初の1.2年は南米で注目を引く存在になるでしょう。しかしその後、それらの企業を自国民で上手く運営する能力が無いので、破綻に向かい、最後は倒産。職を失った人間が町にあふれることになるのではないでしょうか。アメリカはこれを恐れボリビアに介入の可能性を示唆するような動きを見せています。もちろんこれにボリビアは反抗姿勢。
ところで反アメリカの波はここだけではなく、ベネスエラ、アルゼンチン、ブラジルでも根強く、アメリカの南米政策の拙さが目に付きますね。
それから、それらの混乱に乗じて、サンタクルス州が独立とか、タリハが他の州と違った特権を要求するなど国内の緊迫事態も起こりうるでしょう。
しかし彼の人気が今のところ一番といってもたった25%ほどで、すぐその下に他の候補もおり、12月の選挙まで予断を許さない。
それから12月の選挙が実施されなければ(延期とかされて)現在の暫定大統領は辞任するとコメントしています。
さてボリビアにあるウユニ塩湖は日本でも知られた観光地ですが、ボリビアの混乱からラパス経由で行きにくくなれば、チリのカラマからそこへ行くツァーが出ているので、それを利用することになるかもしれません。もちろんそんな混乱が起こらなければ良いのですが。
ところで、ペルーに続いて、ボリビアとの間でも協定が出来、お互いにパスポート無しに両国民が自由に往来できるようになりました。またそれに続いて自由貿易交渉の締結が急がれています。つまりチリとボリビアの関係は知らないうちに改善されつつあるようです。いつにない雰囲気ですが、ベースが無いので、まぁ12月の両国の選挙までのことかもしれません。

2)政治と司法の戦い
その1)大統領夫人のいとこが公共事業省関連で逮捕された事件はチリの風その133で書きました。7月のことです。その人間が再び、裁判所に呼び出しをかけられました。今回は役所の金を使って前回の大統領選挙のホームページ製作を行った疑いです。
しかしその疑惑の金額はたった百万円くらいで、もう少しマシな疑惑は無いのかと思ってしまいます。これが突破口で後は芋づる式とでも言うのでしょうか?

その2)これは政治との戦いではなく一般市民との戦いでしょうね。郊外の公園でデートしていたアベックが3人組に襲われ、女性は車の後ろの荷物入れに入れられ、男性を後部座席に乗せた犯人は銀行にいきキャッシュカードで現金を引き出そうとしたが上手くいかず、結局財布などを取っただけで車を奪い逃走を開始。被害者から連絡を受けた警察は追跡を始め、これを捕獲。ここまではまぁよくある話。しかしこの先は尋常ではない。
警察から犯人を受けた裁判所は、彼らをスピード違反で捕まった人間と同じ取り扱いをして判決が出るまで、保釈金を積んで仮釈放。被害者も検察側もこれを非常識だと怒っています。しかももっとあきれる話は、同じ犯人が再度、窃盗で逮捕されました・・・・
これらの日常の異常さ?(もしくは異常の日常さ)が大統領選挙の重要な争点になってきて、野党候補のラビンはラゴス大統領が数々の実績をあげながら犯罪阻止については全く無策で、これを継承するバチェレットにも期待できない。従い犯罪者グループの人間はすべて彼女の投票するだろう、しかし私は最後まであきらめない。犯罪の抑制のために戦えるのは私だけだとアッピールしています。
それからもっと可笑しいのは、裁判の矛盾を記者からつかれた最高裁長官が「問題は裁判官じゃないんだ、国会さ。私たちは決められた法律の運用を任されているのであって、社会正義,モラルなどの作成の任務は無いのですよ。今年改定された新裁判方式はシステムそのものに問題があるのですがそれを国会が認識しなくっちゃ」それで良いのかな?

3)大統領選挙
先週の風で、候補者間の討論会も無いと書きましたが、10月19日にいよいよ第1回討論会が始まります。なぜかTVN(日本のNHK)ではなくCNNが中心になって準備されるとか?

4)ピノチェット
我がピノチェット問題を書かなければ、チリの風,政治欄は終われません。
今週、例のアメリカのリッグス銀行に関連して、彼の子供たちが裁判所から呼び出しを食いました。同じことを何故何度もと思うのは素人の考えですです。プロは真綿で首をしめるようなこのやりかたにしびれているはずです。(注・私は素人だから早く結論だしてほしいな・・)


(経済)
1)世界ランキングって良くチリの風に紹介されますが、これは出色ですよ。
世界経済フォーラムの発表で117か国中、経済運営方法でチリが世界1位にランキングされました。2位がシンガポール、3位がフィンランドです。
で、それらを含めた総合の国別競争力では23位でした。日本は13位。

2)ペルーもやりますね。ペルーの法廷に呼び出されていたルケッチ・パスタ会社の重役3人が出頭しなかったことにより,彼らを国際警察経由で指名手配させました。3人は出頭することも念頭に作戦を練っていたのですが、法廷からそのまま留置場に送り込まれる可能性が高いとしてこれを拒否したもの。さてチリの大手財閥ルクシックはこれに対抗して、ペルーではなくアメリ国際法廷に提訴する予定。国際的にペルーと真っ向から挑戦。ペルーのトレド大統領はこの事態を政治解決するため努力したいとコメントしています。
これと全く逆の動きですが、チリのファラベラ百貨店は新しく3支店をペルーに開店すると発表。既存の支店の商売が上手くいっているのでしょう。

3)先週のチリの風でチリの通貨ペソがこの先、米ドルに対し切りあがっていくのか、切り下がっていくのかとの論議がさかんとのニュースを載せましたが、少なくとも今週の段階では切りあがり、ペソは強くなっています。
もちろんこれはチリ経済の順調な伸びをあらわしているのでしょう。
1ドル530ペソで過去5年間で最低のレベル。
失業率は8.7%まで下がり、これは1998年以来の低い水準。

3)ある日、2流新聞の一面に豪州がチリ人移民12万人受け入れと大きな見出し。誰でも驚くビッグニュースは他の新聞には載っていません、特だね?
その日、部下と仕事で地方に出ましたが、当然その話になって。藤尾さん、豪州、よさそうだね。給料もいいし。
もちろん世の中そんな甘いものではありません。豪州政府がチリ人限定に移民枠を設けるわけは無いし、向こうに行けば誰にも仕事があるわけではありません。おまけに時間あたり賃金が掲載されていましたが、毎日8時間仕事がなければ結局物価の高い豪州では生きていけないはずです。翌日補足のニュースで、パスポート、ビサなどすべての準備を整えるのに100万円以上の経費がかかるとなり、チリ人の豪州移民の夢は一日で消えました。

4)サーモン問題
これも長々と続いていますね。アメリカ人の大富豪で個人としてはチリの大地主トップのトンプキンスがサーモンの養殖が自然破壊に関与しているから政府は何らかの規制をするべきではないかというのが発端。それ対し、業者や学識経験者から、素人が何を口出しするのかと厳しいコメントが続きましたが、今週なんと政府が彼の側に立ったような発言。すなわち一部のサーモン業者のやりかたは自然破壊、汚染に関与している。これは激震でしょうね・・・。今まで、私たちは政府の規制の下、厳しい制限を守って生産してきているというのが業者側の一つの錦の御旗だったのですから。

5)ガソリン価格の上昇
来週の月曜日からガソリンの価格が再度上昇しますが、政府は約束したように政府補助を出し、上昇金額をミニマムにする予定。


(一般)
1)海賊の宝
昔、子供のころ、海賊の宝が隠してある島を探検する話を何かの本で読んだ記憶がありますが、今回のフアン・フェルナンデス島の話はその現代版ですね。もちろんこの島にあるかどうかはともかく財宝が、島や近海に眠っているというのは絶対ある話と思いますがどうでしょう。
しかし笑ってしまったのはこのニュースがでてから島へわたる観光客が急増しホテルが一杯とのこと。道を歩いていて宝石が見つかるかもしれないと思うのでしょうね
で、見つかった財宝って、本当なんでしょうか。1週間たっても全くその現物がニュースに出ません。それどころかアメリカの資産家が数年前から財宝を捜してこれまでに多額の金をつぎ込みながらなお成功しないという話のほうが信憑性が高い・・。

2)武器の不正輸出
これに関連して現職や元陸軍軍人が裁判所から呼び出されています。軍隊の武器庫から武器が無くなりそれが闇市場で売られていたなんて冗談の世界だけでしょう。しかしチリの軍隊の規律もどうなっているのだろうか?
そうはいってもどこの組織にも悪いやつはいるものだけれど。その武器がイランなど表立っては武器を売れない国に流れていたんでしょうね。で、その金の一部はピノチェットにとか。
また例のドイツ人の共同体も不正に武器を輸入してそれをさらに輸出していたという話もあります。その底は同じだったりして・・・。


(スポーツ)
1)サッカー
カップの南米予選も残り2試合。まだ大会に出場の可能性のあるチリではグッーと盛り上がりはずなのですが、先のブラジル戦の大敗が尾を引いてしらけたムードが漂っています。チリのサッカー協会としては、次のコロンビア戦(アウェー)に勝てば、最後の試合はホームだから、国立競技場は超満員、しっかり稼げると選手に札束を積んでやる気を出させる作戦ですが・・・そうは上手くいかないでしょうね。
さてキーパーはタピアと決まっていたのですが、ブラジル戦で失敗、現在プレーするコロンビアでもエラーが続き、今は補欠の身の上。他の控え選手を連れて行ったほうが良い経験になるのでしょうが、

2)テニス
サッカーに比べると、テニスはまだましです。先週パキスタンに勝って世界リーグに復帰の決まったチリの次の対戦相手はスロバキアです。それは今年準決勝でアルゼンチンを破り,現在決勝進出中の最強国ですが、場所がチリでの戦いになったので、もしかすれば勝利の可能性も・・・来年2月のことですが。

3)モトクロス
エジプトの世界大会でチリのデ・ガバルドは総合で2位になりました。


以上