チリの風 その134 05年7月18日―24日

会社の昼食時、例によって職工さんと一緒に食べていました。で、彼らに金があるけど友だちがいないのと、金はないけど友だちに恵まれているのとどちらを選ぶか聞いてみました。一人ははっきり、金だねと回答。もう一人が、ぼくは友だちと答えました。みんなでそっちを向くと、彼は付け加えて、で、その友だちに金を貸してくれと頼むんだ・・・これは全員に受けました。(創作ではありません。実際の会話です)


(政治)
1)しかしラゴスもやりますね。逆襲です。親戚が公共事業省不正関連で逮捕されたのを、何とか拘置所から救い出し、担当裁判官のやりかたが適当でないという風に高級裁判所の合議でコメントさせその意気込みをくじくことに成功。しかしそれらをちゃんと自分の息のかかった他の裁判官から情報を抜いているようで、結果が発表になる前、第5州に出張していましたが、状況が有利になっていることを知っていて、マスコミにも今までより親切に対応したりしていたようです。
私のように、自分は左翼ですと言っていても、最近のラゴスのやりかたには、憤るというより悲しみを感じる。彼ほどの人がと言う感じ。
もっとも彼の弁護士は、そのいとこはどの業者との契約書にもサインしていないのだから、裁判官側が、彼が不正の中心と言っても証拠にならないと軽くあしらっています。おまけに彼は公共事業省を7年前に退職しているので、もし不正があったとしても5年間の時効は過ぎていると。なるほどこの弁護士はするどい。
さて野党が、この公共事業省とかコデルコ問題で政府を攻めたてていますが、今週、国会で軍事政権時、(不正に)民営化された国有企業の損害は25億ドルになると発表されました。もちろん一部誤りはあるにしても大半は正しい数字でしょう。その一部がピノチェットの懐に入っているのは疑いも無いところ。で、いつも私が言うように、やっぱり政治の世界は世界中同じで、左翼も右翼もないということになるのでしょう。
さてコデルコをめぐる戦いは右翼対左翼だけでなく、与党内での対立(社会党系対キ民党)に火がついたことになっています。さてどうなるのか?
今週面白かったニュースの中に前大統領フレイの奥さんが、私の夫の時代には今のような醜聞はありませんでしたときつい嫌味。政府は これに対し全く反論もせず・・・

2) 金曜日、コンサートに行きましたが、シベリウスマーラー、会場入り口でエンリケ・コレアを見ました。彼は元大臣ですが、時の人になっていて、その前日の新聞に写真入でニュースが載っていました。それは今、問題になっている97年にチリ電力会社が外国企業に買収された際, 当時の重役が犯したとされるインサイダー取引に関し裁判所が課した巨額の罰金(1億5千万ドル)につき何とか、それを罰金だけにして、それ以降に発生している金利をおまけしてくれないかと仲裁をするいわばロビー活動です。しかし彼のように政治経済の両方に顔が利くとこういう仕事が回ってくるわけです。その金利分は約7千万ドルですから、その半分を免除してもらって、その10分の1をもらえば、そうかサッカーのサラスくらいの収入が彼の懐に入るのか、人生って、運の良い人には楽なのでしょうね。その日のコンサートで彼は指揮者の前の席、私たちは天井桟敷でした。

3) 例のラバンデロ元議員はサンティアゴの最高安全刑務所に入りました。刑務所はどこも安全と思えますが、その中でもとくに安全といわれるところで、ここには他にも有名な囚人が入っています。例えば、軍事政権と密着していたコロニア・ディグニダーの元最高責任者のポール・シェフェル、幼児売春グループ事件のスピニアクとか。しかしこの元議員、テムコの刑務所に出頭したのですが、いきなりサンティアゴに移ってもらうと通告され夜中の道を飛ばして連れてこられました。 その間ずっと報道陣の車がついて、まるで映画のシーンのようでした。75歳の老人ですが, みかけはまだ立派なもので、なぜか20台の若い恋人がいます(それなら年少児と関係してこんな問題を起こす必要が無かっただろうに?)さてこの先狭い刑務所の中で5年間蟄居ですが、独房にはテレビ, PCは持ち込めるみたいです。


(経済)
1)今年4−6月の住宅の売上が過去20年で最高の数字とか。給料があがってきたことと、まだ金利は低いがこれから上昇が見込まれることを考慮すると、無理をしてでも今ローンを組むべきと判断した人が多いわけですね。
自動車の売上が記録的というのもそれと似たようなことでしょうか。
今年度上期は前年対比24%アップで、それまで最高だった97年の記録を更新。現在7人に一人が車を持っているそうです。

2)タバコの宣伝が禁止になり、レストランや公衆が集まる場所での喫煙が一段と厳しくなりそうですが、チリ・タバコ会社は議員を集めてロビー活動を依頼する動きに出たところ、その呼ばれた議員のうちの一部からそれを厳しく批難するコメント出ています。まぁ選ぶ議員の選定に失敗したわけです。タバコ好きで、お金好きな議員を与野党から選べばよかったのに。
彼らに言わせれば、自分たちは正規にタバコを作成し、税金を納めている。自分たちの動きを規制し、消滅させようとすれば、密輸されるタバコが増えるだけで、国民にとっても国家にとっても有利なことではないとしています。

3)チリと中国との自由貿易協定はすすんでいるようですが、それはさておき中国からバスが150台、輸入されました。チリで使用されるバスは大半がブラジル製ですが、それより30%も安いというもの。しかし元が2%切り上がっても30%の差はいかんともしがたくこれからも中国製品のチリ流入は防げないでしょう。もっともバス屋さんだけでなく他の種目でも中国産の品物との熾烈な戦いは日常的ですが、日本品(もしくは日本ブランド)が生き残るには、中国品と価格で勝負するのではなくコスト・パフォーマンスでいくしかありません。ごめん、チリの風とは関係なかった。
中国がチリから買い付けている中心品目は銅です。
一方、日本との自由貿易協定の次回ミーティングは本年9月の予定。

4)株式市場
これが好調で、いつかバブルははじけるのでしょうが、何と今年に入って絶好調。右肩上がりの連続で新記録を更新しています。そうか私の貯金を全部株につぎ込んでいたら今年になってからでも20%は殖えたのにと思っても、いまからでは遅いでしょう。


(一般)
1)空気汚染
サンティアゴの大気汚染は世界的に有名ですが、(こんなことで有名になりたくない)チリでもっとも空気汚染がひどいのは首都サンティアゴではなく第9州のテムコと発表されました。汚染の理由は冬季に暖炉に使用される薪の燃焼によるもので、全く規制が無いことから年々、汚染濃度が上がってきたとされています。そうかサンティアゴは2位か、最下位でなく良かった。もっともサンティアゴの空気が良くなって2位になったのではなく、テムコが悪くなって最下位になっただけのことだが。

2)先月, 美術館からロダンの彫刻を盗んだ大学生に1年間の労働奉仕の判決が出ました。毎週6時間、勤労奉仕をすることになりました。
それから、次に開催されるダリ展の作品が270点,チリに到着しました。私はダリに興味がないので展覧会には多分行きませんが。


(スポーツ)
1)南米オリンピック
06年に開催予定のこの大会はボリビアで開催が決定されていますが、ボリビアの政情不安から開催が危ぶまれています。このためチリで代替開催が考えられていましたが、チリ政府はボリビアとの政治関係を悪化させないため、代替開催を招請しないことを発表しました。これに対し、チリのオリンピック委員会はスポーツ振興に現政権は力を入れないと批判、野党側の大統領候補も批判しています。

2)サッカー
イタリアでインテルに移籍したピサロは絶好調で、同チームに早くも溶け込みチームの最重要メンバーになっています。
一方, 注目のサラスはチリ大学に移籍が決まりファンはその姿をグランドで見るのを夢に見ています。
先週始まった国内リーグ戦はカトリカが2連勝でトップを走っています。今回はカトリカの優勝でしょう。先リーグ戦も同じことを言っていたが。

3)テニス
ATPのオランダ大会でチリのゴンサレスはシングルで決勝に進出, 見事優勝。またダブルスでもマスと組みは決勝に進出しましたが、残念そこまで。でも活躍しています。
さて前回のアテネオリンピックでチリは始めての金メダルをテニスで獲得しましたが,それに貢献したとして政府はアルゼンチン人コーチのペーニャにチリの国籍を乙波しました。(当時は全国民の感激の中で、その案は喜ばれたものです)
それが一向に実施されず、どうなっているのかと思っていましたが、今回国会で、大差でそれが否決されました。彼がチリの国籍をほしいとおねだりしたのではなく、チリ政府がいかがですかと進呈しようとしたものを国会で否決するなんて、この非常識に私は憤っています。


以上