チリの風 その133  05年7月11日―17日

14日の木曜日, 朝から雨で寒い日でしたが, 午前中一杯プルマンブスでタイヤの検品。現場で働くのは面白いです。そして午後はその分析を快適な事務所で、と仕事を楽しんでいます。
読者の方から、私が先々週「コツコツ生きていくしか方法はない」と書いたことに共感するメールをいただきました。文句を言っていてもしょうがありませんよね。
さてその雨のお陰で、アンデスの山並みは再度真っ白になりました。先週も山登りをしましたが、来週も山に登ります。私のアパートのすぐ近くにそんな最適登山コースがあるのですからサンティアゴは素晴らしいです。
土曜日の気温は最低1度、最高12度でした。
話は全然変わりますが、私のスペイン語が上達しません。三つ問題があって、最初は語彙の不足。私のパートナーはチリ大学の医学部で働いていますが、病理学の単語を言われても全く分かりません。日本語なら何とか推定できるのでしょうが、スペイン語ではその推定能力がありません。2番目の問題は文法で、いわゆるテニオハが身についていません。最後は発音で、RとLの有名な問題は当然,分かりませんが簡単そうに思えるFとJの発音も駄目です。例えば、遊びというのはスペイン語でフエゴと言いますが、Jで始まります。(JUEGO)それを私はFで発音してしまうので(FUEGO)それは火と言う全く別の意味になってしまい、チリ人からあかんなと笑われる次第。三重苦です。
チリに20年以上住んで、チリの会社に働いているのにこれですから能力の限界を感じます・・・・くやしい。


(政治)
1)ラゴス大統領は今週オーストラリアに行きましたが、逃げたんかと思われるほど苦しい状況です。先日から奥さんの兄さんが怪しい立場になりましたが、今週は奥さんのいとこが逮捕され収監されました。
ラゴスが公共事業省大臣を務めていたころ、そのいとこを部下として使っていたのですが、給料の積み増しのため架空契約のでっち上げなどを画策した疑い。もちろんそのいとこがやったというより上司の大臣の指示を受けたと言うほうの正当性がありそうですが。
コデルコの事件よりずっと前から調べられている公共事業省の不正事件もそろそろ核心でしょうか。
ところで政府関係者は彼を励ましに何人も監獄を訪問しています。ラゴス大統領も判決が出るまで、彼の無罪を信じていると発言。
同じことを元公共事業省の大臣が逮捕されたときも言っていますが、(結局は有罪判決)自分の親戚が逮捕されること自体が異常で、一見まともな「(大統領の自分は)裁判所の分野に口を入れたくない」などの発言は不適切なことが明白です。なぜ彼が逮捕されたのかの事実関係を元の上司、つまり彼が裁判所に出頭するなりして明白にすべきでしょう。大統領がそんなことをするはずがないという声も聞こえますが、あと半年もすれば、彼は現役の大統領ではありませんから、裁判所も遠慮無しに彼を呼び出し出来るでしょうね。
今週の発表では、公共事業省の不正(もしくは不可解な)契約は03年で60件、合計300億ペソ(約60億円)と言われています。
さらに民間企業に政府機関の高官の給料を払わせるというのは現在も続いているが、それは軍政のときからの習慣だと政府が発表したのには笑ってしまいました。(自分のやっていることを他人の責任にするなんて・・・・)
チリ以外の南米人から、おまえのところの大統領はおれたちの大統領よりずっとましだと何回も聞いたことがありますが、ラゴス大統領任期の最後になって今まで隠れていたことが全部出てきたようです。
にもかかわらず今週発表の世論調査では彼の政権の支持率は60%を越え、高め安定と不安感は見えません。これはチリ人が政治に関心が無いのか、ラゴスの政治手腕とこれらの不祥事を同一の次元で捕らえていないかのどちらかでしょう。
昨年まで考えられないことでしたが、大統領任期の最後が近づいていますから、このままラゴスの側について終末を迎えるのか、思い切ってバチェレットに方向転換してみるかと側近の人間も考え始めたようで政府内での軋みが見え始めました。これは世界中共通のことでしょうが。
例のトランサンティアゴ(市内公共交通機関)計画ですが、実施が遅れています。今週、それに反対する集会が開かれ、もちろん野党側の人間が多く出席して政府批判をしましたが、何と与党のキ民党の党首がこれに出席し、政府は大企業優先の政治をしている中小企業を大事にするよう政策変更を要求すると大声を出したとか。何を考えているのかこのおっさん。

2)これらの不祥事が12月の大統領選挙にどう影響するか興味がありますが、今週発表の世論調査では、全く影響が出ず、与党の推すバチェレットが圧倒的優勢で、第1回選挙で過半数を取れるかどうかのところにいます。最近顔を出したピニィエラはラビンに差をつけられて3位に低迷。こうはっきり差がついてしまえば全く面白くない展開です。
特に右翼側の無策が目立ち、このままでは右翼の4回目の自滅は免れません。(エイルウィン、フレイそしてラゴスと3人大統領が続いていますから)もう少し手はないものだろうか?
ところで彼らのうちの一人が大統領になるわけですが、その任期は現在の6年から縮まって4年となりそうです。(再選はなし)8月開催の国会決定が必要ですが, その任期のほか、大統領は軍隊の長官の罷免権を持つことになります。ピノチェットが陸軍長官の時代、彼がえらいのか大統領が上なのか分かりませんでした。また政府決定の議員や終身議員の廃止も盛り込まれています。

3)先週のチリの風で, 左翼(極左)グループの犯罪者の恩赦があるが、これは極右(軍隊)側の犯罪者とバランスが取れているのだろうかと書きました。すると今週の新聞に、元軍人からそっくり同じ趣旨の投書がありました。私は軍事政権に反対の立場ですが、犯罪行為は極右も極左も同じではないでしょうか?

4)ラバンデロ議員が年少児性的虐待事件で有罪判決を受けながら保護観察処分が付帯したことにより、収監されませんでしたが、それを不服として再審要求が出ていました。その判決が今週でて、何と5年間監獄で過してもらいましょうとなりました。彼以外は全員ハッピーなようです。彼の属するキ民党でも少し前と違ってもう彼をかばう同僚は全くいません。それどころか法律の前には誰も同じとする決り文句で、彼を葬り去って国民の信頼を取り戻したいとの意向が見え見え。
彼はもちろん最高裁まで持ち込むでしょうね

3)ボリビアとの国境に設置された地雷の撤去作業が今月から開始
チリ陸軍はボリビアとの国境地区にあるチュンガラ湖周辺に設置された7千個の地雷を4ヶ月かけて撤去すると発表。
平和が近いのか、これらの地雷は役に立たないと判断したからか?


(経済)

1) 国別危険率でチリは過去最低の危険率となりスプレッドは0.59%と世界最低レベル。チリ経済の長期安定性は世界的に認められていると言えるでしょう。

2) チリの国民一人当たりの購買能力についての世界銀行の調べでは、過去10年間でラテンアメリカ諸国のなかで最も上昇し、04年の数字はアルゼンチンについで第2位。9810ドルとか。1位アルゼンチンは11410ドル。ちょっと前,チリはアルゼンチンを抜いていた時期もあったのですが・・・ブラジルは5位と低く7510ドルにとどまっています。

3)チリの貿易相手国の発表がありましたが、今年の1−6月の統計です。チリからの輸出先としては従来アメリカに続いて日本が2位だったのですが、何と今年は中国が2位、日本は3位に沈みました。中国はチリ産品を大量に買い付けしているわけですね。また輸入についてもアジアからの1位は中国、2位は韓国、日本は3位でした。日本品は高価でチリの市場には適応していないわけです。もっとも日本ブランドでも他の国で作られたものも多くありますが。


(一般)
1)先週お知らせしたおかしな女性裁判官(グリンベルグという苗字ですが)の件は今週も話題を呼び、彼女は上司から圧力を加えられているとか、私を陥れるようとするのはある同僚をひいきしているためとか発言して我が身をかばっています。で、それを調べる裁判官が任命されて・・・この忙しいのに下らないことで時間をつぶすのは止めてもらいたい。彼らの給料は国民が払っているのだから。

2)マリワナおばあさんが無罪に
今年の2月に自宅の庭にマリワナを40本持っていたとして逮捕された71歳のおばあさんは仮釈放中でしたが今週無罪になりました。彼女は持病の苦痛を和らげるため従来からマリワナを栽培、収穫しそれを吸っていたが、他人に販売するためではないと主張し、それが認められたもの。この女性の元夫がキ民党のハミルトン議員というので当時は話題を呼びましたが、結局無罪となり、おばあちゃん今も家でゆっくりマリワナ吸っているのでしょうね。彼女の家はラス・コンデスで私のアパートの近所です。

3)サンティアゴの道路状態について先週のチリの風に付いて書いたら、チリの新聞も同じことを感じていたのか?今週記事が出ました。それによるとメイン道路のアラメダでも道路の舗装が悪く穴があいていると写真つきです。その場所は1年半前に再舗装したばかりなんですが・・・


(スポーツ)
1)サッカー
 いろいろありますが、選手の話から、イタリアでプレーするピサロが念願のインテルに移籍。チリ人としては2番目の高額移籍金だった由。彼の年棒は180万ドルとか。
先日、マーク・ゴンサレスがイギリスのリバープールに移籍したりして、チリ人プレーヤーも活発に移籍しています。ところでアルゼンチンでプレーするサラスはリバープレーと揉めて契約更改せず、行方が注目されています。アルゼンチンの新聞にはデブのサラスはリバーを裏切ったなどと書きたてているようですが、年棒が大幅に下がったことをサラスが嫌った様子。それなら50万ドルとチリでは破格の給料を彼に乙波する古巣のチリ大学でプレーすればよいのですが(他の選手には給料を払えないラ・ウーもサラスにはちゃんと払うでしょうから)
さて心配されたチリ05年後期サッカーリーグですが、ちゃんと開始されました。サッカー連盟が分けのわからない条件(年内に経済問題を解消できないチームは連盟から除名する)で合意に達したらしい。こんないいかげんな条件では、選手の給料は保証できません。12月になったらクラブは選手を呼んでこう言うはずです。「このままではクラブが消滅する、そうなるのがいやだったらまず給料の未払いの半額を今払うから、受領証にサインしろ。残りはそのうち支払う・・・」
もっと不思議なのはチリのサッカーリーグが国際サッカー連盟の発表では世界で14番目という高い評価になっています。これにはチリ人もびっくり。南米でアルゼンチン,ブラジル,そしてコロンビアの次にチリが,それも世界で14番目に来るなんてと。自分たちでも信じられないところ。

2)ボート
 なんと世界選手権の第3戦でチリの二人組みが優勝。次の大会は日本の岐阜。私はこれらの大会の重要性がよく分からないのですが、まぁ世界選手権でチリが優勝と聞くと何でも喜んでしまいます。
 ところで政府が補助してくれれば日本に行けると彼らは言っています。つまり参加資格はあっても行ける資金がないわけですね。世界大会で優勝なら、サッカーで言うとピサロのレベルでしょうが、彼が年に180万ドルも稼げるのにマイナーなボートなんかでは年に1万ドルも稼げないのでしょうね。スポーツとしての価値はサッカーもボートも同じと思えるのですが。

3)南米オリンピック(ODESUR)はまだボリビアで開催するかチリが肩代わりするか決定されていません。

以上