チリの風 その132  05年7月4日―10日

5日の夕方のアンデスは素晴らしかった。雪山の白さが太陽に映えていたと思ったら、次は黄金色に変化し、最後は真っ赤な夕焼けの中に荘厳さを漂わせ、事務所の窓から見ていた私を魅了しました。しかしサンティアゴの冬のアンデス、すごいですね。


(政治)
1)しかし今週最も迫力あったニュースはアルゼンチンからのそれでした。チリの極左グループのリーダーで殺人、誘拐事件で捕まっていた犯人アパブラサが、なんと無罪になりました。チリから同国に逃亡していたのですが、昨年11月に逮捕され今まで7ヶ月牢屋に入っていました。それが一転、証拠不十分で釈放になりました。本人も家族もテレビに出て大喜び。チリ政府のチリへの強制送還依頼を踏みにじっての決定でした。チリ政府は面目丸つぶれ。
ところでチリの監獄でも政治犯が釈放を要求してハンガーストライキを実行中です。私は思うのですが、殺人や誘拐を実行して、その動機が政治的なものだから一般犯罪者と同じ扱いをするのは止めてほしいというのはちょっと虫が良さ過ぎるのではないだろうかって。それなら軍事政権時の軍隊の犯罪も同じように対応する必要が出てくるはず。新聞社のオーナーの息子がこいつに誘拐されているのですが、その息子の身になればこの判決はとても喜べるものではないでしょう。
2)大統領選挙は、決定的なヒットが出ないまま時間がたっていることをお伝えしていますが、これはもちろん、爆発する時間は今ではないと夫々の陣営でじっと自重しているわけです。ところで今週笑ってしまったのは、右翼のメイン政党UDI(ウディと発音します)の前党首が次の大統領選挙に出馬したいと発言。全員驚きました。何で今ごろ?という感じ。05年の選挙中に次回選挙の出馬宣言なんて。同党が推しているラビンが伸び悩んでいるので、一度これを出してみて、世間がじゃ次回とは言わず今回出てみたらと言うのを期待してのことでしょうが、やり方が汚い。しかしちょっと前まで右翼の連合候補だったラビンはもう全く勝ち目もなく口先は、バチェレットを追い上げていると言っても誰も信用しないのがつらい。
その与党のバチェレットはドジさえ踏まなければ勝てるのだから、どんなに野党側から挑発されても乗らないでしょうね。
ところで彼女が若いとき、極左グループに属していた人間と同棲していたというニュースが流れましたが、これなんか選挙の終盤戦では細かいことまで出てくるのでしょうね。そのグループとは上記1)で出てくるグループですから、話は乗ってきますね。
3)先週はチリの風のトップでお知らせしたコデルコ事件は今週も同じような状況が続き、大統領夫人の兄ちゃんの取調べが始まりましたが、もう私はすっかり興味を失いました。結局あつかましく居座るのしょうね。大統領候補のバチェレットが私の政権ではこの状況は繰り返さないと発言したら政府側からあまり張り切らないようにと注意が出たらしい。くだらない。何とか穏便に、とする現行政府のやりかたでは選挙民の注目をひけない彼女はクリーンを強調するしかないし・・・
実際、チリの銅山は、昨年対比、生産コストが軒並み上がっているが、大手鉱山の例でエスコンディーダで14%、ぺランブレで21%アップとなっている。ところがコデルコは61%もアップしているらしい。この差はちょっと説明が苦しい。おかしな金をたくさん使っているんでしょうね。
ついでに、先週の風でお知らせしたコデルコがNASAに寄贈した1トンの銅は弾丸となって見事に惑星に激突し目的達成。鉄でなく銅というのが面白い。
4)チリとペルーの外相レベルがリマに集まって話し合い。ミーティングは上手くいきましたと両方とも発表しているけど、問題山積の中、ニコニコ話の出来る状況ではないのですが、外交とは不思議なものですね。
両国間の自由貿易協定なんていうのも交渉中らしいですが、どうも信用できません。それから両国国民はパスポートなしに相互に通行できるようにする交渉もあるそうです。でも観光に行って牢屋に入るようでは・・・
5)ピノチェット裁判ですが、もう訴訟は山のようにあります。その内の一つ、新しいケースで、コロンボ作戦がなんと裁判官の中で揉め、11対10で彼の罷免権を除き、裁判にかけられることを決定。でもこれも裁判所が働いていることを見せているだけで、実体は何もないのでしょうね。人権問題とリッグス銀行問題などですでに裁判にかかることになった案件は3件もありこれは4件目です。彼にすれば裁判案件が3件でも4件でも同じだ、ドンと来いという感じでしょう。まったくめげないピノチェットはすごい。


(経済)
1)チリ経済は好調というのが毎週のようにニュースとなって聞かれるですが、実態としては甘い話ばかりでないのも真実なようで、会社の倒産件数は10年前の3倍とか。05年の上半期の倒産件数は138社ですが、97年にはわずか41件だったらしい。その前の92年はもっと少なかったようですが。
2)アルゼンチンで労働者がストに入り天然ガスのチリ供給が止まるとの話。どうなるかな?チリ側で雨が降ったのでダムにたまった水を利用して水力発電の分を極力増やし、市民生活に迷惑かけないように政府は必死でしょうね。
3)物価上昇率
6月の物価上昇率は0.4%で1−6月の合計は1.8%となりました。一方チリ経済は05年1−5月で6%の上昇を示し、順調だった04年の数字を継続しています。


(一般)
1)陸軍の死の行進
アンツコ火山の近くで吹雪の中を行進していた45名の陸軍兵士が凍死した事件からもう50日もたちましたが、やっと今週最後の1名の死体が発見され、一応事件の終着を迎えました。しかし45人の死者は多すぎる。
2)女性裁判官の秘密
この人、最近の超有名人です。まるで映画俳優のように、カメラマンが彼女のあとを追いかけています。昨年、わずか2日で数百件の判決を出し、それに納得しない人が被害者の会?を作って上級裁判所に訴えでたり、ある差し押さえになった豪邸を、自分が通常価格よりはるかに安い値段で落札(ちゃんと他の一般人に応札の機会を与えたのか疑われている)。昨年末パーティの後、車を運転して自宅に戻るときに交通事故。それをもみ消そうとして・・・。
しかしこれだけうさんくさい裁判官も世界的に珍しい? 給料が良いのか、いつもばっちりきまったブランドものの服とサングラス、写真にとられても写りは良いです、もう年齢は相当のおばあちゃんなのに。この先この人はどうなるのか、現在30日の職務停止処分です。
3)第11州のバルマセダで最低温度21度を記録。この冬一番の寒さ。
4)新聞の投書に道路の舗装状態が悪く、このため交通渋滞が起こったり、事故の原因になっているとありました。いったい道路を管理する政府の部署は何をしているのかと怒っています。
最近のサンティアゴの発展は目覚しく、高速道路が整備され、高層ビルが建ち並び、そこだけを見ると世界最新鋭の都市のようです。昔ここに住んでいた人でも驚くほどの変化があります。ところがそれを離れると、この投書のように20年前と変わらない首都のサンティアゴがあります。大手トラック会社は町の中心部には広大な敷地を持てないため、こうしたセンターから離れたところに車庫を持っています。そのため、この投書のように、私がそこへ行こうとすると道路は半舗装状態で、雨の後には通行不能なんてことになります。まだまだ先進国への道は遠い。
5)最南部のマガジャネス州で外来種族のビーバーが自然破壊というのは、私の今年の旅行記にも書かれていますが、それを人間が退治することを始めました。
その行為を自然保護というのか自然破壊というのか、迷ってしまいますが。カナダから持ってきた罠をしかけ最初の1週間で150匹を捕獲したとか。最も全部で6万匹と推定されているのでこれではほとんど影響しないでしょうが。
同じようにロビンソン・クルーソ島として知られるファン・フェルナンデス島でもウサギ、山羊などを駆除する計画がでています。
6)アメリカの人類の起源
ベーリング海峡が凍結していた時代にアジア人がそれをわたってアメリカの到達したというのがアメリカ人類起源のもっとも通常に考えられている説ですが、それによると1万年から1万2500年前のことを言われています。
今回メキシコのトルキーラで採取された人間の足跡が4万年前のものと発表され、これにアメリカ・テキサスでの発見された28000年前のものを考え合わせると従来の説では説明できません。で、アジア人が船を使ってベーリング海峡から南下していったと言う説が出てきています。チリの第10州プエルト・モンの近くのモンテ・ベルデは氷河期に影響されなかった地区にありますが、これも3万年前のものと言う説が出てきて、学者はその正当性の説明に必死です。


(スポーツ)
1)サッカー  前期リーグの決勝戦の結果はウニオン・エスパニョ-ラでした。
一方,選手組合が、もう我慢できないと、後期リーグの開幕戦から試合のボイコットを選手に呼びかけています。ちゃんと選手の給料を払ってほしいというわけです。
しかしチリ社会の近代化は最低賃金の改定とか、失業保険の整備とか労働者の保護をゆっくり確保してきていますが、ことサッカーでは全く遅れています。これは現在のサッカー連盟の会長(チョコパンダの愛称で親しまれている、いや馬鹿にされている)がこの2年間、自分が会長の席につくのを確保するため、弱小球団保護として、いくら負けても2部リーグへの降格をなくし、リーグ戦を面白く無くさせたので、スポンサーは減る、客の数が減るで、リーグにとっても球団にとっても懐が厳しい状態が続き、その結果、選手への給料の遅延、未払いが発生しているもの。昨年チリの1部リーグに所属した高橋さんもこの問題にはすっかり苦労されていました。
2)テニス
最近、チリのテニス選手というとゴンサレスと決まっていたものですが、今週は彼の相棒マスが活躍、スイスのATP大会で準決勝まで行きましたがそこまで、惜しかった。
4)次々回のオリンピックがイギリスに決まりましたが、その予算は23億ドルとか,フーム、スゴイ。ところでボリビアで来年開催予定の南米オリンピックはその開催が危ぶまれていますが、このほどもしボリビアからクレームがでなければそれをチリで代替開催しても良いと政府が発表しました。そのための予算は1千万ドルとか。なんとオリンピックの200分の1。規模が違いすぎる!


以上