チリの風 その117  05年3月21日―27日

秋分の日を過ぎたのにサンティアゴではまだ30度の残暑の日が続いています。
さて座頭市という映画を見ました。日本にいたとき、邦画は好きでなかったのに、外国にきてそれを見にいくのはやっぱり何か懐かしさがあるからでしょう。映画そのものは荒唐無稽の殺人ストーリーでしたが、ちゃんと一本の映画を作り上げ、それを外国に配給することが出来る北野の実力はたいしたものです。


(政治)
1)仕事の始まる月曜日、ブラックアウトが起こりました。会社から町に戻るバスの中で、ラヂオを聞いている人間が、地下鉄が止まっているとか町の中心は信号が消えているので大混乱とか伝えてきます。駅の間で止まってしまった地下鉄の乗客の不安とか、エレベーターに閉じ込められてしまった人間の恐怖とか思い出して、もしかしたら今日は相当歩かなければ・・と覚悟しました。
幸い、全国規模の停電は1時間ほどで終結、じょじょに秩序は回復しました。
私は、地下鉄で家に戻れましたが、最初の頃は、地下鉄は超満員の乗客で混乱するのは分かっていましたから、2駅ほど歩いて、その混乱を避け、通常状態になってから乗車しました。
ここまでは政治ではなく一般の話題のようですが、この停電の原因につき、例のアルゼンチンの天然ガス供給ストップから来る発電所の混乱(ストックに余裕のない状態)が事件の発端のように考えられたので政治問題化し、政府はこれは単に発電所と送電所の間の機械的な問題(故障)で燃料問題ではないと強調しましたが、それを信じない国民は多くいます。
とにかく電力消費の急増問題は、今年05年に関しては新発電所ラルコの稼動でしのげるが、06年から問題は深刻化すると政府は発表しています。
天然ガスの替わりに原油を使えば、サンティアゴのスモッグ問題の深刻さは現在の比ではないでしょう。

2)大統領選挙
地震は起こりませんでした。与党側は、話し合いがついて7月31日にテレビ討論会を実施。野党側は共同でラビンを推すことを確認。なんだ、面白くない・・・。もちろん、それは表向きのことで、与党側はキ民党と社会党ブロックに分かれて争っているし、さらに社会党ブロックも社会党社民党に分かれて争っている。
新聞の投書に、「バチェレッが次の大統領にふさわしいと家族そろって考えていたが、彼女のそばに(アジェンデ時代の)社会党系の人間が並んでいる写真を見るとまるでアジェンデの時と同じ雰囲気を感じてしまった。彼女は社会党の古い人間(彼らが党を牛耳っている)を抑える力はないだろうから、やっぱり彼女は次の大統領には無理だ」とありました。人気投票では彼女が圧倒的にトップを走っているのですが。
さていったん動き出すともう元には戻れない政治の世界、きっと来週はニュースがありますよ。

3)ボリビア
どういうことか、ボリビアが落ち着いてきたようですね。メサ大統領の人気は落ちてきましたが、その対抗相手でコカ生産業者代表のモラレスが国民から見離されてきたといわれます。つまり現政府も頼りないが、それに対抗する勢力も信用できないと国民が自覚してきたというわけです。
結論は、最近のボリビア国内の動きは、自分たちの生活の向上に寄与しないと認識したのでしょうね。おめでとう。

4)ペルー
たまにはペルーのニュースも出なくては。例のクスコの落書きにはチリ人だけでなくペルー人も関連していたとなってきましたが、可愛そうにチリ人はペルーでは特別扱い(特別にひどい扱いを受けると言う意味)。
しかし今回はそれとは別のもう少しレベルの高い?戦い。95年にペルーとエクアドルがぶつかったとき、チリは国際協定を無視してエクアドルに武器を販売していたことが分かりペルーがクレームを入れてきました。と言ってももうとっくに終わった昔のこと。チリ政府は「確かにその武器販売は行われた。ただしそれは戦争の起こる前にサインされた契約を実行しただけで全く問題はない」としています。
チリが国境を接して常に問題を抱える仮想敵国ペルーと戦うエクアドルを支援するのは当然だろうし、(フォークランド戦争ではアルゼンチンと戦ったイギリスの支援をしている)それからその武器の販売でピノチェットの懐に莫大な金が入ったのだろう。
ペルーの大統領は不人気に泣いているから、なんとか国民の目を外に向けようとするのだが、国民が立ち上がらず今回も最後は腰砕け。


(経済)
1)チリの04年経済成長は最終的に6.1%と発表されました。
一人当たり国民生産は6000ドルと上昇。05年もそのままの好調が継続される見込みです。
似たような統計ですが、国民一人当たりの購買力では世界1位はルクセンブルグで66000ドル、日本は10位にも入っていません。
どうして?
チリは54位で11000ドルとなっています。昔チリの購買力は日本の10分の1程度でしたが、今では3分の1を切って接近してきました。

2)原油の値上がりから、国内のガソリン価格の高騰が激しく、1リットルで1ドルのラインに近づいています。チリの価格と日本での価格に差がなくなってきました。これはチリでのガソリン税が極端に高いことを示しているのでしょうね。

3)鉱山への新税が下院で可決しました。昨年はあれだけもめたのに今年はすんなりと。じゃ何故昨年は与野党間であれだけいがみあったのかな?この税が通ると外国企業はチリに新規投資をしなくなるとか言っていたのだが。
昨年は単に税金を上げますというのろしを上げて、様子を見、1年間棚上げをして実行に移すという高等戦術だったのかな?

4)ランチリ
いよいよアルゼンチンに進出が決定。同国のアエロ2000社に資本を入れ、ランアルヘンチーナとして航空機6機で年末に国内線で20%シェア-を狙う由。


(一般)
1)今週末はイースターで3連休。チリはカトリック信者が多いので、その日は聖なる金曜日として仕事はしない、派手な?遊びもしないことになっています。肉類は食べない(変わりに魚貝類)というのも毎年のことです。

2)絶滅の危機
コナフは絶滅の危機にある動植物として数種を選定しその保護にあたることにしました。その中にはフアン・フェルナンデス島(ロビンソン・クルソー島)のスズメバチ、チリ南部の首黒白鳥(最近工場汚染で問題になっている鳥)さらにダーゥインの森で知られる5州のラ・カンパナのチリ・ヤシの木などです。

3)天文台
チリには世界的な天文台が幾つもありますが、そのうちの一つ、4州にあるラ・シヤが地球から1万光年の距離にあるウエスターランド星雲を調査し、約50万個あるそれらの若い星のうちには太陽の100万倍の明るさがあることを発見。しかし銀河系や太陽系と同じような仕組みを持った星雲もきっとどこかにあるのでしょうね。

4)ネルーダ記念館
パブロ・ネルーダと言えば、チリでノーベル賞を受けた二人の詩人のうちの一人ですが、チリ人には特に人気があります。確かに彼の詩を暗誦できる人は多い。で、彼の住んでいた家を記念館として一般に開放していますが、今週末そこに行ってきました。
仕事でその近くは何度も行っているのですが、中に入るのはこれが始めて。昔から、彼の詩に私がメロディをつけて歌っているので、彼には感心がありましたが、これまで縁がなかったわけ。
さて5州のイスラ・ネグラにあるそれは休日ということもあって、訪問客であふれていました。入場料は一人2500ペソと他のどの美術館より高いのにこれだけの入場者があるということは彼の人気の高さの証拠でしょう。
彼は73年9月に軍事革命が起こってから、1ヶ月もしないうちに病死していますが、アジェンデ政権に深くかかわっていた彼は、そのとき病死していなければ、逮捕されて監獄で死ぬことになったかも知れず、上手く死ねて良かったですねと言えるかもしれない。
(もっとも病死に見せかけて殺されたのかもしれないが)
家の中にあふれる、彼の収集癖は見事なものだが、社会主義政権の末期に民衆が生活物資に困窮している時期にも、彼は美味しい洋酒を飲みながら好きなパイプでもふかしていたのだろうと思ってしまった。


(スポーツ)
1)サッカー
日本はイランに負けてグループ3位に沈んでしまい、がっかりさせられましたが、チリはホームにウルグアイを迎え・・・どうなったかな?
土曜日に試合があったのですが、もう前日から熱気があふれ、チリ各地からファンを乗せたバスが首都を目指して続々という感じ。当日夜10時の試合開始を前に午後6時に開門されましたが、6万人の観衆がスタジアムを埋め尽くし、叫びまくっていました。テレビもそれを中継し国中が興奮の極み。
まぁそれほどしなくてもという感じもありますが、それがここでは人生の楽しみなのです。それなのに何と試合は中途半端な引き分けに終わり、ファンはがっかりして家路につきました。これでドイツWカップに参加の夢はおしまいでしょう。しかし大きな試合に勝てなかったときに毎回、繰り広げられたセントロでの乱暴狼藉は今回はなく平穏でした。
クラブチームのレベルではリベルタドールカップでコブレ・ロアが前年チャピオンのコロンビアのチームにホームで競り勝って面目を保ちました・

2)テニス
まぁゴンサレスはマイアミのATPマスターシリーズ大会で3回戦まで進出していますが、今の実力では世界10位台を確保するのは大変ですね。


以上