チリの風 その115  05年3月7日―13日

やっと落ち着きました。30度を越える暑い日にうんざりだったサンティアゴ市民ですが週末、金曜日から雨になり、気温も20度くらいとすごしやすくなりました。アンデス山脈の頂はうっすら雪化粧です。いつまで続くのかな?
それから、13日で夏時間が終わり、通常時間に戻ります。つまり13日深夜0時が12日午後11時になるわけ。その夜は1時間ゆっくり眠れます。


(政治)
1)しかしちゃんと1週間に一つビッグニュースが出るなんて、まるで週刊誌のために準備されたみたいです。先週のチリの風で共産党の星マリンの死を報告しましたが(チリ共産党は彼女の葬式で実証された熱狂的なマリン人気を次の選挙に使えないかと作戦計画中)、今週はチェッフェルの逮捕でしょうね。このドイツ人、もう83歳と老人ですが、悪の塊みたいな人間で、それがアルゼンチンで逮捕されました。フーム。これだけじゃチリの風の読者の皆さんは誰も分からないでしょうね。アルゼンチンの新聞の見出しに、「ピノチェット側近で幼児強姦者のドイツ人ナチが逮捕」とありました。これが味噌で、彼はナチ(だったのでしょう)で、敗戦後、南米に渡り、チリの田舎でドイツ共同体を作りその首領になって好き放題のことをやってきました。軍事政権のピノチェットと結びつき、軍側は、その広大な敷地を利用して逮捕した左翼の人間の拷問に利用するなど、非合法処置の隠れ場としてその共同体を重用。その後、民政化してから税金の件で国税庁ともめ、共同体の登録も取り消されたりしましたが、いつもうやむやのうちに嫌疑が消えていた。
外面の良い彼は、共同体内で音楽団を結成し、文化レベルの高さを誇り、病院を地域に開放して他の町村とも仲良くやってきたが、その共同体の中では、少年の性的虐待などが絶えず、この共同体を脱出した人間の訴えで警察の調べが同所に何回も入ったのにどこかに隠れている彼を逮捕できなかった。それが今回、国際警察の協力で非合法に国外脱出していたアルゼンチンで逮捕されたもの。彼はチリのほか、ドイツ、フランスからも逮捕要求が出ており、チリ政府の同人強制送還要求が通るかどうか疑問と私は考えた。彼はピノチェットの秘密を知りすぎえているから。
しかしアルゼンチン政府は彼を国外追放にしたので彼のチリ帰国が決定。彼のチリ送還はチリ国政の一層の混乱を呼ぶに違いない。
私も仕事で、この共同体の近くを通り、ちょっと寄り道してそこの喫茶店でコーヒーを飲んだ記憶がある。もちろん全く普通の雰囲気で異常な気配はなかった。
彼の逮捕で共同体は崩壊するのか通常共同体として再生するのか興味深い。チェッファー側近グループ対正常化グループの対抗になるのでしょうね。

2)アルゼンチンのキヒネル大統領のチリ訪問が実現
天然ガス供給問題で両国の間がギクシャクしているのでチリ訪問は今回も(過去3回中止されている)中止と見られていたが、13日の日曜日に来チ。やっぱり例のドイツ人をチリにプレゼントしたことで天然ガス問題のクレームは会議に出さないよう合意したのでしょうね。

3)ピル(経口避妊剤)問題から厚生次官更迭
チリでは昨年からこのピル(事後に服用して懐妊を防ぐ効果のあるピル)の服用は法律上の堕胎罪と齟齬しないか問題になってきました。今回、厚生次官が 世界女性の日に講演し、すべての女性がこのピルを自由に服用できるよう図りたいと発表しましたが、各方面からの反応が強く、結局同次官を罷免して決着になりました。政府自体がピル解禁に向けて勉強中といっているので、次官の勇み足ともとれるが、今年の大統領選挙に向けて、候補者の考え方を調べる実験をしているのかもしれない。


(経済)
1)アルゼンチンからの天然ガス供給に黄色信号がともり、すべての企業供給削減処置が開始されたことから、一部の企業では操業停止が言われ、そのさいは従業員の削減も噂されています。
チリ政府はそうなっても保証は一切行わないと発表していますが、数年前、エネルギー源をアルゼンチンの天然ガスに切り替える際、そういう供に関する一切の心配は不要ですと国民に告げていたのですが。
私のアパートも熱源はアルゼンチンからの天然ガスですから、極端な場合、風呂にも入れないし、食事も作れないことになります・・・。

2)その暗いニュースとは全く逆に銅の価格はとうとう過去16年間で最高という水準まで来ました。1ポンドあたり154セントと、1989年以来の高水準。止まるところを知らないという感じ。どこまで行くのかな?
チリ経済の好調の原因は、この高い銅価格にあり、チリ国民の努力というより運が良いだけということも出来そうです。で、いつまで?

3)ボリビア問題
先週の風で、突然ボリビアの危機を書きましたが、その翌日メサ大統領が辞任を表明。私も南米ウォッチャーとして目のあるところを見せました。ネッ。その後、彼は辞任を取り消して大統領職を継続中です。
で、その問題の争点になっている道路の閉鎖ですが、一部地区では尚も継続されています。このためチリのイキケ港に入った荷物をボリビアへ送できず、このため港の動きが縮小し、それにともなって陸上輸送のトラックも大半が止まり、チリ側でも深刻な問題になっているとか。
しかしそれで困るのは当の道路を封鎖している人たちじゃないのかと私は思います。たとえばラ・パスとその隣りで飛行場のあるエル・アルトの間の道が封鎖されると、歩いていくしかありませんが、エル・アルトの住民の大半はラ・パスで働いているわけで、毎日不利益を蒙ります。日常生活に必要なパンや野菜の輸送にも困るはずで、どうして彼らが道路閉鎖を日常的に実行できるのか理解できません。(注 私は今までに観光、仕事で20回以上ボリビアに入っています。それでも・・・彼らの考えが分かりません)
ボリビアの問題はもはや国内問題ではなく南米全体の安定化へ逆行する問題と受け止められています。

4)チリのサーモンの60%は日本に。(05年の数字)
そうか、日本人がサーモンを買うのをやめれば、チリのサーモン産業は崩壊するのか?しかし日本もすごい。
チリが日本車を買わなくても日本の車両メーカーはびくともしないが、60%もの顧客を失えばどんな産業だって崩壊する。チリの鮭には日本の味方が必要。


(一般)
1)パイネの山火事は峠を越えました。結局、雨が降ったことが幸いし鎮火の方向です
しかしその焼失した森林の前に立つと、外国人観光客はこんなところを見に来たのではないと反発するか、ショックを受け、早く元の森林に戻れるよう祈っていますとするかのどちらかだと言われます。それにしても森林の焼けた匂いが遠くまで届き、被害は深刻らしい。
既に多くの観光客がここから国境を渡ってアルゼンチンのカラファテに向かっている由。
パタゴニア(チリ・アルゼンチン)は広大な地域にほとんど人間の手が入ってない地球上に残された数少ない本物の自然ですね。
世界遺産に入る価値ありです。大事にしなくては。

2)世界で物価の高い都市
スイス連合銀行の調べて、世界の都市で最も物価の高いのはノルエーのオスロ、つづいてコペンハーゲン、3位に東京。まぁ想像できますね。
サンティアゴは安いほうで下から14番目。(南米で4番目) インド、パキスタンが最下位?を占め、下から3番目にブエノス・アイレス。

3)チリで住みやすい区
チリにある220の区を大(75000人以上)それ以下、田舎の3種類に分類してそれぞれのランクで、どこが一番住みやすいか検討した結果の発表がありました。道路などのインフラ、犯罪率など種々の統計の総合ですが、1番住みやすいのはサンティアゴのラス・コンデスでした。(私はそのラス・コンデスに20年以上住んでいます)
それから大きな区の部で最南端の町、プンタ・アレナスが8位に出てきて驚きました。


(スポーツ)
1)サッカー
南米のクラブ対抗戦、リベルタドールカップで、チリのコブレ・ロアはアルゼンチンのチームと敵地で引き分け。38歳のゴールキーパー、ネルソン・タピアの活躍が光りました。もう一方のチリ大学はブラジルで4対2と敗戦。チリのチームは敵地で勝てないという過去の記録を証明しました。
一方、後10日に迫ったWカップ南米予選、対ウルグアイア戦のメンバーが発表になりましたが、得点を取れそうなフォワードが見つからず、今回も貧弱な試合になりそうです。
一方、20歳以下の世界選手権は6月からオランダで開催されますが、その組み合わせが発表になり、チリはスペイン、モロッコホンデュラスの組みに入りました。一見して、上手くいきそうです。
この一時予選を抜け出して、2回戦で日本と当たったりして・・・。

2)テニス
昨年はオリンピックで金メダル、デービス・カップで世界リーグへ復帰と好調の波が継続しましたが、今年になって個人的にもチームとしても不調のどん底で、対ロシア戦敗退の後、デ杯キャプテンだったデ・ラ・ぺニャを解任、その他のスキャンダルも出て最悪の状態。


今年1月にアルゼンチンのパタアゴニアに行きましたが、そのときの様子をHPにその1からその3までに分けて掲載しました。たんにその地方の旅行記ではなく南米全体にも関連したものになるよう書いたつもりです。かなり長いのでどうか時間を作って読んでください。感想文もいただければ幸甚です。 

以上