チリの風 その103 04年12月12日―19日

毎日、忙しい日が続いているのでしょうね、日本のみなさんは。あつ、そうかクリスマス、正月は日本もチリも同じか。
でも日本には世界に誇る年末年始休暇があるじゃないですか!素晴らしい、羨ましい。外国では、チリも含む、12月31日まで働き、1月2日から仕事を再開ですからね・・・。
この日曜日、中高生6名をつれて山登りをしました。1500mくらいのところで、休憩を取って木陰で休みました。街の中と違って空気はきれいし、せみの声が周り中で聞こえました。すっかりリフレッシュです。


(政治)
1)ピノチェットが起訴されました。で、それは世界中に大々的に報道されたようですが、チリではその後にもっと面白い事件?が起こったので、かすんでしまいました。
さて普通、国会での争いと言うと与党と野党の戦いと決まっていますが、今回は与党の中の争い。下院議長を務める人間が公共事業省の長官を痛烈に批判。これに政府が反発し、公式行事の席上で、ラゴス大統領は他の出席者と握手しても彼とは手を握らない。
しかもその発言が政治問題になった後も、その議長は大臣に謝罪発言をせず。意地を通している。公共事業省の給料不正支払い問題や橋梁が落ちた問題まで、つまり政治的、技術的な問題が山積しているのに、大臣としてなんら解決の方法を示していないと言う彼の発言を公に支持する与党議員もいて問題は複雑化。
この種の発言は普通、野党からでるものですが、現在野党は2党間で対立し、そのため与党に対する政治的対抗力を持っていないのが実情。つまり与野党間は無風状態が続いています。

2) 元チリ共産党の委員長、マリンがピンチ。
彼女は現在キューバで癌の治療中ですが、様態が思わしくなく、万が一のことも考えられるので、療養先のキューバからクリスマス以前にチリに帰国することを考慮しているとのこと。しかしピノチェットにとって長い間、彼女が一番の頭痛の種だったのではないか思います。何しろ、彼女の歯に衣をきせぬ発言は痛烈だったですから。

3)ピノチェットの起訴について、彼の弁護士は、担当裁判官を変えてほしいと最高裁に持ち込んでいます。その根拠として既に、ロンドンでも、その直後チリでも、ピノチェットは裁判に耐えうる力がないと起訴猶予になっているのに、その医師団の出した診断書を覆す新事実も無いのに、再度起訴に持ち込んだのは裁判官としての資格をもっていないと言うわけ。
確かに・・・、この事態は当然想定されただろうし、それをどう乗り越える考えで起訴したのか、興味津々。弁護側は、反ピノチェットの波にのって起訴しただけで、その根拠は薄いと、軽いジャブを入れている。
で、そのピノチェットはめまいがしたとかで今週、陸軍病院に入院しました。この頃、めまいがするのも、ちゃんと計算されているのでしょうね。
それにしても軍事政権が終わってから(88年)16年にもなるのに、まだ人権問題が日常的に問題になるのは、その傷がよほど深いからだろう。現に毎日のようにニュースが出て、驚かされる。
ついでに、ピノチェットの息子の裁判が終わって541日の懲役が確定しました。まぁ何かと理由をつけて刑期の途中で出てくるのでしょうが、ひとまず彼は刑務所行きです。

4)メルコスールの総会がブラジルで行われ、それに出席したチリとボリビアの大統領は、喫茶店でコーヒーを飲みながら二人で話し合う時間を持ったそうですが、ニュースによると今年続いた係争、紛争を終わらせ前向きな会議を始めようじゃないかとまとまったらしい。本当かな?
その日、アルゼンチン大統領はチリ外相と面談し、来年3月のチリ訪問を確認したとか、ちょっと前、彼はチリ外相を認めないと厳しいコメントを出していたのですが、政治の世界はすぐに風が変わりますね。 
ところで、APECに目が行くチリは南米共同市場を目指すメルコスールにはさっぱり注力しません。近隣諸国との協調もやはり必要なのでは・・・。
もちろん、政府はそれを「全くの誤りです。チリは近隣諸国と上手くやるよう最善の努力を重ねています」と言っているが。


(経済)
1)中銀、経団連などの報告で、今年のチリ企業の利益率は過去10年間で最大のものなるだろうといわれている。そして05年は世界景気の復活とチリ景気の上昇から今年の好経済は継続されるだろうとのこと。
ただ来年の大統領選挙が、チリ経済に影響するだろうとは大方の見方。
もっともチリだけでなく南米全体でも今年は5.5%の伸びを示し、1980年以来、24年ぶりの大幅伸長となるらしい。

2)為替
ドルの下落はひどいもので、1ドルは18日に574ペソ今年2月以来の低い水準を記録。貯金をドルにして持っている人の泣き声が聞こえそう。2002年は720ペソでしたからね。


(一般)
1)教育水準
TIMSSの発表で、世界45カ国の中2生徒の学力水準が発表されましたが、チリはほとんど最低の部に入っています。それほどひどいと言う理由が私には分からないのですが、もっと不思議なのは、これに対し、抗議、要求などの声が津々浦々から上がっていないことです。諦めている?(注 南米ではチリだけが調査対象になっている)
しかしそんな子供がチリの中枢になる20―30年後が恐ろしいと思いますが。日本はその中で数学などで5位の評価。まぁまぁですね。
もちろん、これはチリ政府の責任で、生徒数が多すぎることと、ちゃんとした教師を学校に派遣していないからだと新聞に投書があり。

2)労働時間
昼食時、一緒に食事をしている職工さんから日本の労働時間は何時間か聞かれ、いいかげんに週40時間と回答。すると、「チリでは48時間なんだよね、それを短縮することで政界、財界がもめているんだけど、しかし何だろうな、日本は40時間労働でも、正味30時間は働くだろう。ここでは見かけは長いけど、実際は24時間じゃないか?で、日本の方が効率良いんだよな。」
そこで私が、「じゃ何かい、チリでは係長、課長クラスが工員の管理をちゃんとしていないと言うことかい?」と聞くと、
「それもあるけど、仕事の段取りが悪いんだ。修理に車両が入ってきて、その修理に必要な部品がないときなんか、他の班の仕事に手を出すのも悪いから、じっと待っているなんてこと・・・、日本じゃないだろな。」
チリ人が、意外に殊勝なことを言っています。私が日本で損害保険の会社に働いていたとき、時間中はのんびりしていて、残業時間になると元気の出てくる人もいましたが・・・。

3)首都圏高速
しかしチリらしい。高速道路が出来て、道路状況が改善したと先週書きましたが、今週はなんと全く異なったニュース。
事故がありまして、何と高速道路を走っていた一般バスが、急に止まったので後ろの車が追突。で、それは・・・バスは乗客を拾うため止まったのです。
高速道路を通行人が歩いていたり、自転車が走ったり、つまり全部の工事が終わっていないので、まだ隙間があちこちにあるわけですね。で、そこを歩行者や、自転車が通行すると言うわけ、いやはや。
バス会社のほうは、ちゃんと停留所を設置してもらわなくてはとクレーム。しかし停留所があってもチリ人はどこでもバスを止めようとしますからね。

4)借金
チリ人は給料の44%に当たる借金を持っている由。そしてそのパーセントがじりじり上がっているらしい。テレビの宣伝で、現在は金利が最低水準、すぐに借金をしてでもほしいものを手に入れましょうと言うのに乗せられているのでしょうね。(もっとも家を買って借金が増えるのは仕様が無いのかな?)

5)チリと日本の住みやすさ
先週の風でなにやら書きましたが、読み返して見ると、文章のまずいのもあるが、ピンとのあっていないことには、我ながらがっかりです。
つまり書き方が悪いわけです。で、見方を変えて、もし日本にお住みで、チリに来てみたいと思った方へのアドバイスと絞ってみると、もし1000万円があれば、チリで高級マンションが買えます。そして年金10万円をもらえれば何不自由ない暮らしができます。で、チリ人に碁、将棋を教えるとか、逆にチリ人に柔道、空手、合気道を習うとか、日本人会で日本語の教室をやっていますから、そこで助手をするとか(給料はもらえなくても有意義な時間の使い方)。
冬はスキー場まで1時間半、夏は浜辺まで1時間半、3000m級の山に登りたければ、登山口まで10分程度。もちろんゴルフもテニスも楽しめます。バス代はどこまで乗っても50円。週末はクラッシクの演奏会を(天井桟敷の安いところでは)300円で楽しめます。どうですか?楽しそうじゃないですか?

6)バルディビアの首黒白鳥死亡問題
環境汚染から白鳥が多数死亡している事件で、環境庁は特定の企業(セルロースの工場)が問題を起こしているのではないとの調査結果を発表しましたが、これに関し、いろんな方面から疑問疑惑が上がっています。


(スポーツ) 
1)サッカー   
後期リーグの決勝戦はコロコロを破ったコブレ・ロアとカトリカを破ったウニオン・エスパニョールの対戦。 ウニオンはもう30年近く優勝したことがないと言うので、サンティアゴの地元ファンは大騒ぎ。一方のコブレ・ロアは北のカラマのチームですが、地元のファンはチリのサッカーはね、首都じゃないんだ、地方に良いチームがあるんだよ、私らのコブレ・ロアのようにね・・・。結局、第2州、カラマのチーム、コブレ・ロア(コブレと言うのは銅、ロアはその地方の名前)が8回目の優勝を飾って後期リーグは終了。

2)テニス
チリのマスは今年の南米最高テニスプレーヤーに選出されました。

3)ボートでの急流くだり
世界的にはやっているスポーツですが、チリの第10州に位置するフタレエフ川は、難度はそれほどではないと言われるのに、過去十年間で6人の水難者をだしています。犠牲者は全員外人、そうでしょうね、チリ人で好きこんで危険なスポーツをするのは、いないでしょうから(そうでもないかな) 結論は、冒険ツァーを運営している会社がしっかりしていないかららしい。


以上