チリの風  その97  04年10月31日―11月6日

チリの風  その97  04年10月31日―11月6日

さて31日の日曜日、投票に行ってきました。私は国籍をチリに変更はしていませんが、選挙権を持っています。チリでは永住権をとって5年すると選挙権をもらえます。もっとも選挙人登録をすると投票が権利だけでなく義務になるので、それを嫌ってチリ人の間でも、登録しない人がいます。(私の息子も登録していません)
さて投票は朝8時から始まります。朝一番にいくと捕まる恐れがあるので、少し遅らせていきます。これは冗談ではなく、任命された選挙立会人が病気などで欠席の場合、最初に投票にきた人が捕まって、その日一日中、その場にいなければなりません。逃げようとして逮捕された人も出てくるのですから・・・
(選挙は権利と義務とした、力まかせなところが面白いですね)
歩いて15分のところにある学校が、私の投票所です。近づくともうたくさんの人が歩いています。投票所周辺の道路は交通遮断ですから、車もバスも通っていません。警察官がたくさんでています。投票所の安全管理は軍隊の責任なので、陸軍の兵士が銃をもってあちこちに立っています。なんだか老人の多いのが目立ちました、ここでも日本のように老齢化が進んでいるのでしょう。老人が背広を着てネクタイを締めて、歩いているのには笑ってしまいます。きっと神聖な選挙と考えているのでしょうね。私はジャージを着ていました。
投票所の中では、ほとんど待たされること無く、投票が終わりました。


(政治)
1)選挙
間違いました。私は与野党が接近した成績で選挙が終わると見ましたが、与党の圧勝でした。投票率で与党48%、野党38%、その他14%でした。負けた野党側は、これは地方選挙で大統領選挙ではないと負け惜しみ。でも何故政府側がこんなに勝ったのか私は理解できません。
これが来年の大統領選挙にどう影響するか話題を呼んでいますが、まけた右翼陣営の軋みが聞こえてきます。

2)APECに関連して
アメリカ大統領ブッシュが国際犯罪人として訴えられました。イラクでのアメリカ兵が、留置所で拷問を行っていたことが明らかになっていますが、その責任はブッシュだとして彼をチリの法廷で裁いてほしいというものです。ピノチェットがスペインで訴えられ、イギリスで拘束されたのを同じ方式。面白そうだと注目しましたが、結局証拠不十分との理由で裁判手続きに入りませんでした。ブッシュの護衛とチリの警察の争いなんて世界中の注目を集めそうでしたが。
もちろん、新聞に投書が載って、現実を認識しよう。裁判所は人手不足で困っているのだから、アメリカ大統領を訴えると言うのが如何に馬鹿げているかは子供にも分かるはずって。

3)陸軍長官の自己批判
人権問題に関して、陸軍長官が73年の軍事革命以降に軍隊がチリ市民に行ったことは弁明の余地の無い行為だったと表明しました。
ピノチェットが存命中はこの手の自己批判はでないと考えられていただけに新鮮な驚きがあります。かって、こうした拷問行為はなかったと言明してきた海軍には大打撃でしょう。
軍事政権側だった人間からも同様の自己批判も出始め、野党は従来のスタンスを変えてきました。もう野党側にもピノチェットの影響力がなくなったということでしょう。
しかし同長官もそれらの拷問行為を行っていたはずで、自己批判だけでなく、彼も裁判にかかるべきとの声もあるし、拷問の詳細が暴露され始めると再度国中を巻き込んだ大事件になるはず。


(経済)
1)9月の成長率が発表されましたが、7.7%と過去7年間で最高のものとなり、政府はさらに成長率アップを狙った政策を実行するとしています。(04年の年間成長率は5.5%と見込まれています)
これで政府としては、経済回復期はすでに通過し、現在は成長期に入っているとしています。

2)ルクシックグループの分割。
ルクシック・グループといえばチリを代表する財閥ですが、今週その元締めのアンドロニコ・ルクシック氏が、彼の引退とその3人の息子に事業を分割して統治させることを発表。同グループはこれで銀行系、工業系、さらに鉱山会社に分かれるわけです。しかしこの親父(78歳)はクロアシア(旧ユーゴスラビア)から移民してきた夫婦の子供で、わずか50年で裸一貫から世界140位(推定資産36億ドル)になったのですから・・・すごい。
ところで、長男(チリ銀行を受け持つ)は今年50歳の誕生日をエヴェレストで迎えています!


(一般)
1)天候不順
なんだか夏が始まったのに、今ひとつはっきりしない日が続いています。金曜日、天気予報では最低温度6度、最高気温27度でした。朝、出るとき寒かったので私はセーターの上にジャンパーを着ました。バスに乗ったら、隣りに座った若い女性は半そでで、よく6度の気温で、半そでで我慢できるものだと思いましたが、午後、戻ってくるときは私もセーターもジャンパーも脱いで半そででした。
さて今週も出張でチリの南の森林に路線調査に行きました。8州、チヤンからアンデス山脈のほうに入っていくと、途中から雨になり、それが山の上のほうで、なんと雪になりました。地面が雪で真っ白になりましたが、下界が30度近いというのに雪ですよ!山の向こうはアルゼンチンとか。しかいひどい悪路で、身体がつぶれてしまいそうでした。

2)今週、一般の話題で注目を浴びたのは一人のチリ人女性の殺人事件。べつに殺人事件は珍しいことではありませんが、彼女はインターネットで知り合ったカナダ人と交際を始め、お互いに相手側の国を訪問した後、今年8月に結婚。モントリオールで住みはじめ、わずか3ヶ月あとに、夫が妻を殺したというわけ。理由は報道されていません。

3)マプチェの犯罪
ミニンコ林業などを襲ったテロリストとして起訴されていた8名のマプチェの判決が今週ありました。マプチェというのはチリにもともと住んでいたインディへナの種族のなかでもっとも人数の多い種族です。もちろん、彼らはチリ人です。
判決は政府が提出した事実だけでは彼らを有罪とするには当たらないというもので、早速4名は釈放、他の4名は他の事件の犯罪人として拘置所に行くことになりました。
この例のように、覆面をして、林業事務所を襲ったり、トラックに火をつける事件で、犯人が捕まってもほとんど有罪にはなりません。
政治的な判断が、通常事件とは違った判断を下すのでしょう。

4)航空旅
9月の乗客数が発表になりました。国内線は相変わらず上り調子が続いていますが、国際線は2年ぶりに0.5%の下降を示しました。
ところでランチリの子会社としてペルーに進出したランペルーが司法局の判決で苦戦していることは既に皆さんご存知のとおりですが、そのペルーで例の怪しい航空会社ヌエヴォ・コンチネンテが破局におちいっています。
つまりこれでペルーの2大航空会社が消えてしまうかもしれません??


(スポーツ)
1)テニス
もうあかんな! チリのテニス。最近負けてばっかりで。
それでもマスはATPのパリ大会で準決勝までいったのに、腰を痛めて退場。今シーズンの大会参加を不完全燃焼で終えました。

2)オートバイ
こっちは逆に、デ・ガバルトが好調で、アルゼンチンで行われたモトクロス世界選手権で優勝。今年に入って4回目の勝利で、年間優勝も確定的とか。なんでも世界1はすごい。

3)サッカー
国内リーグはプレーオフ出場をかけて最終戦が行われていますが、今のところカトリカがトップを走っています。今の成績はプレーオフ出場を決めるだけで、それ以上の値打ちはありません。
それよりWカップの南米予選、対ペルーの方が心配。アルゼンチン戦のような迫力のある試合をしてくれるのかな?
サッカーの試合の話ではありませんが、コロコロが財政破綻して、所有するサッカー場が競売にかけられそうです。それに反対したファンが土曜日、首都のセンターで暴れだし、警察と衝突、交通を遮断して大騒ぎ。彼らは政府の介入を要求しています。

さてどうなるのか?


以上