チリの風 その95 04年10月17日―23日

日本の台風は大変だったようですね。チリのテレビ・新聞でも報道されました。
しかし被災者の中に老人の占める割合が高かったようですが、老齢化が進んでいることと、元気な老人が多いため、昔のように家の中でじっとしていないで、強風の海を見に行って高波にさらわれたりするのでしょうね。変な話ですが。
そしてその直後、新潟の大地震、しかし最近の日本はついてないですね。
さてチリは夏に向かって気持ちの良い天気の日になってきました。


(政治)
1)今週のトップは公共事業省の捜査の話でしょう。もう昨年から汚職関連で捜査の手が入っていますが、今週、担当裁判官が同省の約400人の職員が調査期間中に使用したEメールを押収しました。職員は公権の横暴としてその女性裁判官に抗議し、なじるなど暴行を加える寸前までいきました。
同省の大臣もこれを快く思っていないようで、政治と司法の対立の様相を呈しています。もっともこれほど大量のEメール(受信発信の両方)の差し押さえが法的根拠のあるものかは論議を呼んでいます。

2)国内選挙
後1週間に迫った地方選挙ですが、今ひとつ盛り上がりません。

ところがラゴス大統領が、ある野党の候補者を名指しで彼には投票しないでほしいと発言、問題になりました。
野党側は大統領はもっと大所高所からの発言をしてほしいとか、これは品位が無いとかおおむね大人の対応をしました。何故大統領がそんな発言をしたか、当然、これで地方選挙の域を抜け、大統領選挙に向けた与野党の激突というパターンになるからではないでしょうか。

3)ボリビア問題
国内問題から目をそらせるためチリの攻撃をはじめるというボリビア政府のやりかたに私たちは慣れてしまいましたね。今週、鉱山労働者が労働条件改善をかかげてストをしました。持っているダイナマイトを爆発させたとのニュースもあります。で、彼らはすぐに道路を閉鎖するので、主要都市間の交通が(飛行機以外)全部止まってしまいます。困ったものです。隣国ながら、彼らが従来と全く変わらない古い考え方を保持していることが不思議です。
で、これに対応して?政府はボリビア産品の輸出にはペルーの港を使用する方針を出しました。つまりチリの港を使用するなら関税を上げるというもの。こんな理不尽な税法は無いと思いますが、それをやらざるを得ないところがボリビア政府の苦しみ。商売は水の流れと同じで自然に行くべき、無理をしても長続きしません。
またペルーを巻き込んだボリビアの度重なる領土要求に、ラゴス大統領は1904年の条約を履行したい、両国間に懸案事項は無いとの見解を重ねて表明しています。


(経済)
1)世界汚職ランキング発表
それを発表する機関の数字にどれほど信憑性があるのかは私は判断できませんが、毎年この調査の結果が発表されると世界で話題になります。日本の新聞にも発表されていますね。
チリは今年も成績がよく、ラテンアメリカのトップを占め、世界20位でした。日本の成績が悪い(チリより低い)のにはがっかりしますが、その談合体質は今でも変わりませんね。
チリで私はもう24年間仕事をしていますから、ここでも賄賂があることは知っていますが、それをしないで今まで私がやってこられたのは幸せです。

2)天然ガス
今年の冬、アルゼンチンからのガス供給が一部止まって国内が大騒ぎをしましたが、今週、8州のコンセプシオンの沖合いに世界最大級の天然ガスの油田が確認されました。これが商業的に採算の取れるものなのか検討されますが、うまくいくと10年後には採取が始まる由。アメリカ企業がすでに開発に興味を示している由。これでボリビアやアルゼンチンから嫌味をされても、チリは心配なく生きていけるわけです

3)チリ資本の航空会社ラン・ペルーが問題をかかえていることは先週お伝えしましたが、似たような例が、今度は全く逆の方向から来ています。アルゼンチンからアエロリネア・デル・スール社が11月末から、チリに進出したいとしており(国内線を含む)これに対し、チリの航空会社が、チリ政府に対し、それを認めるならチリの航空会社のアルゼンチンの国内線に進出できる権利がほしいとして、一方的な条件に反対しています。そのアルゼンチン航空会社はチリ国内線の運賃を新聞で公表(宣伝)しています。


(一般)
1)17日の日曜日、ダーウィンの森として知られる国立公園ラ・カンパナに行ってきました。サンティアゴから80kほどの近さで、1時間半で到着。同行のメンバーが、おっ、ここはジュラシックパークかと言う位、良い雰囲気のある場所でした。
さっそく同名の山に登り始めました。いつものとおり、事前に情報収集もせず、ルートもわからないのにしゃにむに上を目指して登りましたが、道無き道は枝が縦横に張り巡らされており、顔、手、足に引っかき傷を無数に作っただけで撤退しました。あほや。
しかし書き足しておきたいのは、そこであった観光客は(観光客というよりは公園に歩きにきた訪問者)ほとんど全員、外人でした。つまりチリ人はこの価値のある公園を知らないのでしょう!!!

2)人種差別
インド人の商人が、これ以上我慢できないと言うのですが、例の911事件いらいひげをたくわえ、ターバンを巻いている(シーク族です)彼をチリ人がビン・ラヂンとかテロリストと言って嫌がらせするというのです。それは普通に道を歩けないほどひどい(デパートに行くと監視がつくとか・・)最悪のケースは見知らぬ男がいきなり襲い掛かってきたとか・・・
その他の例はペルー人、ボリビア人への白眼視でしょう。ずいぶん前にも同じ事を書きましたが、彼らはチリのあちこちに進出していますから。(今週、市内バスに乗っていると、切符の検査に女性が乗り込んできましたが、その女性はペルー人でした)で、ちょっと色黒だとおまえペルー人かとなるわけです。しかしここで面白いのは、そんな時、おまえ、チリ国歌歌えるかと聞くんだそうです。ペルー人はチリ国歌をしらないでしょうから?

3) さてその2)に関連しますが、23日の土曜日、日本人会主催の日本祭りが開催されました。サンカルロス・デ・アポキンドという会場で900人のお客さんが集まって、和太鼓、日本舞踊、盆踊り、武道などを鑑賞しまたすき焼きを楽しみました。参加者はほとんどチリ人ですが、その反応は非常に好意的でした。
これはチリ人の日本感に関連していますが、日本商品を通じた日本のイメージと、在住日本人の存在感を示すものでしょう。 
和太鼓の演奏のアンコールのところで、御みこしを担いで会場に入りました。2世の若手が早く進みすぎないよう、最年長の私が一番前を担ぎました。太鼓のリズムで掛け声をかけて、場内を練り歩きましたが、かっこよいといわれて照れました。そのあとは盆踊り、チリ人もまざって踊りました。スペイン人会やイタリア人会などが大イベントをやる実力を持っているのは知っていますが、日本人会もこれほどの力があるとはたいしたものです。

4)豪華観光船の季節になりました。来週の月曜日、その第1船がアリカに入港します。来年5月までのシーズンに約30隻がチリの港に入りますが、もっとも人気のあるのは、意外でしたが、プンタ・アレナスだそうです。ついでプエルト・モン港。

5)妊娠中絶
観光船と全く違う次元の話ですが、専門家の話としてチリの中絶率は南米で一番と発表され問題になっています。それに対し、「発表された数字は一年間で生まれる子供数とほぼ同じで全く信憑性がない」とする意見と「その通り、この数字は正しい。中絶が非合法であるにもかかわらずこのような数字が出てくるのは政府の啓蒙策が不十分だから」とする意見が出てもめています。


(スポーツ)
1)テニス
少し前、破竹の勢いで勝っていたチリのテニスが現在、負け続けてています。けっしてオーバーではありません。今週のマドリッドでのATPマスター大会で、マス、ゴンサレスのオリンピック金メダル組はなんとシングル、ダブルの3試合を全部一回戦で落としました。どうなっているのかな?格下の相手だったのに・・・

2)サッカー
ろくな話はありませんが、クラブの南米大会にチリ代表として参加しているコンセプシオン大学が、ボリビアのラ・パスでボリバールと対戦。試合は負けましたが、キーパーが、自軍のゴール前からボールを蹴って、それがなんと相手ゴールに入りました、翌日のボリビアの新聞は、これを勝敗とは別に絶賛していました。こんなゴールはいままでボリビアで見たことがないって。

次のWカップの南米予選で、チリはペルーと戦いますが、前回のリマでの試合ではペルーが勝ったにもかかわらず、ファンがチリチームのバスに石を投げるなど大騒ぎになりました。で、今年も同じような不祥事が繰り返すだろうと、同地の警察はチームのホテルを郊外にしてペルーファンとの接触を遠ざけようとしている模様。しかしペルーのファンの質が悪いと言うより、両国の関係を示唆しているのでしょうね。


以上