チリの風 その82   04年7月18日―24日

チリの風の読者からコメントをいただきました。風も旅行記もおもしろいのだが、写真がないので今ひとつ、臨場感がないというものでした。実は、写真が無いのは理由があって、それは私がカメラを持っていないからです。
60カ国訪問とか言っても、写真のない国が大半です。イギリスも、アメリカもモロッコも、インドも写真が一枚も残っていません。まぁパスポートには出入国が記録されていますが・・・。あえてカメラを持たず、文章で経験を記録したいと言う古い感覚なわけです。ごめん。


(政治)
1)ローヤリティ
なんと上院で政府提出の鉱山会社への新税金制度が否決されました。政府は大慌てで、これを廃案にせず何とか継続審議にさせるため下院で盛りかえそうとしています。野党の方は政府の傲慢な姿勢がこういう結果になった(全く議論になっていない)もしくは野党側の代表ラビンが出した代替案をちゃんと検討しなかったとコメントしています。野党側は自分たちの案は鉱山会社に新鋭を払ってもらうという基本点は変わらないが、政府案と違うのはその使用方や税の取り方に工夫があるとしています。
アメリカ訪問をして、ブッシュ大統領と面談したり、ハイチでチリ陸軍を激励して機嫌よく帰国の途についたラゴス大統領ですが、この否決のニュースに落胆を隠せず、帰国とともに仕事をはじめ、野党のおかげでチリ社会に大きな貢献をするはずだった新税が否定されてしまうと大声を上げました。一方、野党側は政府案より柔らかな提案で鉱山会社を説得し、国民にやっぱり政府より野党側の方が現実的との印象を与えようとしているわけです。さてどうなるか?
ちなみにチリの法律ではチリにおけるすべての鉱物は政府の所有に属するとなっているそうです。現在の鉱業に関する動きを数字にすれば、年間売上は100億ドル、粗利は45億ドル、政府が毎年更新する営業許可による収入はたったの2千万ドルとか。
国営のコデルコ銅公社以外のすべてのマインが反対しているこのローヤリティ税ですが、実は他の国ではほとんど既に導入済みです。
つまり、国際鉱山会社は他の国ではそれを受け入れていると言うわけです。まぁ誰でも新しく税金を取られるのを歓迎する人はいませんが。

2)ピノチェットの隠し財産
やっぱりね。想像していた通り、進展はありません。彼の家族がこの財産は皆さんからいただいた寄付ですよと言うのが印象的だった。私もその通りこの隠し財産は、みなさんにいただいた寄付だと思う。ただ、それは一般市民ではなく、健康保険制度や厚生年金制度が国の運営から民間に移管させるとき業者が、自分たちが有利になる条件を政府に飲ませる代わりに寄付をさしだしたとか、その他の事業主さんからのものでしょう。もっともこれは他の言葉で言い換えれば、賄賂というのですが。
しかし、ここで「しかし」と言いたいが、テニスのリオス選手は短い間の活躍で3千万ドルを稼いだそうですから、ピノチェットが長いあいだチリに貢献したことを考えれば、5百万ドルくらい財産を持っていても不思議ではありません。(私は元来、左翼で、極右のピノチェットを支持しているわけではありませんが、73年のチリの置かれていた状態は、彼が政権をエィルウィンに渡した88年とは比較にならないものですから)

3)公共事業省の不正問題を担当して、政府を締め上げている女性裁判官チェヴェシッチさんのことは何回もこの風で書いていますが、今週は全く違う関連から登場です。なんと彼女のご主人(弁護士50歳)が突然、脳腫瘍で亡くなりました。しかし病院に入って二日目に死亡ですから、いかに病気の進展が早かったかと思わせます。彼は、彼女の関連で、ときどきニュースに出ていましたが、全く病人と言うイメージは無く「時の人」のご主人の役割をちゃんと果たしていたのですが。さらに彼女は、人生にはたくさんの大変なことがあるとして、ご主人の死亡の後も正常どおり仕事を続けるとしています。すごい。

4)ボリビア国民投票が無事に終わり、政府は国民の信任を取り付けたとしています。さっそく今まで国民の手前遠慮していたアルゼンチンとの輸出契約を見直して、そのボリュームを増大しています。
しかし商売が大きくなるのはボリビアにとって良いことなのですが、どうもこのボリビア天然ガス問題は胡散臭くていけません。
さてチリ側で今週初めて、アルゼンチンからの天然ガスの供給削減で事業に損失が出たと言う訴えが裁判所にでました。これから続々と訴えが出るはずです。一見全く関係の無いはずのボリビア天然ガスとアルゼンチンのそれが密接に関連して、これからチリの社会に影響してくるのでしょう。


(一般)
1)最初から犯罪に関する項目を書くのはどうかと思うが、今週の最大の話題はサンティアゴ大聖堂でおこった殺人事件。それも土曜日夕方のミサをおこなっていた祭司(イタリア人、チリに在住30年)が参加者の前で殺されたのですから。会衆がパニックになるのは当然です。犯人は25歳で、反カトリックの悪魔グループに参加していたと言うのですが。なんやその悪魔会というのは?まぁ日本で言えばオウムのようなものでしょうか。しかしその殺された神父も殺人犯も第11州にいたと言うので、じつはその青年と何らかの関係があって・・・なんて、三面記事のようなことはないのかな?それならきっと真実が出ることはないと思うけど。(当然カトリック教会が政府経由マスコミに圧力をかけるでしょうから)

2)世界捕鯨委員会
世界大会が行われるこの時期になると反日の記事がチリの新聞にでますが、一流新聞ではやわらかく、2流新聞ではどぎつく記事がかかれます。「かわいそうな鯨を、捕鯨が禁止されているにもかかわらず日本人は残酷に殺している。さらに捕鯨を正当化するため、委員会に加盟する国の票を国家援助の形で買い取っている」と言う感じ。ノルウェーなどの他の捕鯨国の名前が出てこないのも嫌らしい。鯨を食べるのが、非道の悪いことと言うのなら同じ動物の牛や豚も食べられないはずで、ヒステリックでセンチメンタルな話は止めて、鯨が絶滅状態にある種族なのかのか、生息数が回復しているのか、科学的な議論が必要なのでしょうが・・・。

3)航空会社
チリにアルゼンチン航空が進出すると言うので、もめています。と言うのはアルゼンチンがチリの会社の運行を認めていないので、同じようにアルゼンチン国のチリ進出を拒否してほしいとチリの中小航空会社スカイ航空がチリ航空当局に正式に要請したもの。今年中にアルゼンチン進出を計画している大手航空会社ランチリは黙っています。
一方訴えられている側のマルサングループは、これはアルゼンチンの会社でなくスペインの会社ですと逃げ切りを図っている。

4)チリの保護動物
チリで絶滅の恐れがあるとして保護されている動物は、北からビク―ニャ、フラメンゴフンボルト・ペンギン、ウエムレス(鹿)、ピュ―マなど14種あります。1834年、ダーウインが発見したチロエ島の狼は現在チリで最も絶滅が心配される種になっています。動物の保護にあたるコナフの活躍が期待される。

5)最後に犯罪のニュースをもう一つ
メガヴィジョンというテレビ局が、警察の案内を得て、ここがサンティアゴでもっとも危険な地区ですという番組を取っていたら、6人組の強盗が出てきて、金目のものを全部盗って逃げていったそうです。これでそこが一番危ない地区と言うのが証明されました。


1)スポーツ
サッカー  チリの若手ナンバー1フォワードのピニージャがポルトガルのチームと契約。月給が約8百万円とかで国外で活躍するチリの選手として3番目の高給らしい。まぁ日本なら中田がトップでしょうね。

2)テニス
ニコラス・マスがATPのオーストリア大会で優勝。チリ選手もけっこうやるものです。


以上