チリの風 その81 04年7月11日−17日  

しかし笑ってしまいますね。先週のチリの風でサンティアゴに雨が降らず困っていると書いたら、今週大雨になりました。と言っても二日間で50ミリくらいでしたが、立体交差になっているところはいつものように下側の道路がプールになってしまい通行不能。もちろん国民の間に大きな不満は出ていません。いつものことですから。
ところで、その日、事務所にいた私にセールスマンから電話が入り「親方(スペイン語でJefeと言われただけですが、その人が言うと親方に聞こえてしまう)雨が降って水浸し、家から出れませんので、今日は一つ休みにさせてくださいませ」と言ってきた。しようが無い許可する。
この話をいつものように昼食時、同席の職工さんたちにすると「チリ人ってそうなんだよな、雨がふるとそう言って休むやつが多いんだよな」????
雨の後は高気圧が張り出してきて温度が下がるのですが、今回もサンティアゴでマイナス2度、11州では零下20度まで下がりました。
ところが、さすが自然と言うのは素晴らしい。17日、いつものマラソンコースを走っていて、その寒さにもめげず、日本の梅に似たシルエラの花がもう咲きはじめたのを見ました。


(政治)
1)昨年の初め、チリ中を騒がした国会議員の汚職事件に有罪判決が出て今週はこれが目玉と思ったら、違いました。トップはピノチェットの隠し銀行口座の話題です。彼が過去10年ほどの間、アメリカの銀行に口座を持っていてその間に5百万ドルくらいの金が動いていたと言うわけです。これはアメリカ国会がマネーロンダリングの口座を隠している銀行は無いかと調べていて見つかったと言われますが、もちろん本当のところはわかりません。それはともかく、これで今まで無事に隠しおおせていたピノチェットの隠し口座も見つかってしまったという次第。
しかし私たち一般チリ人にとっては5百万ドルは大金ですが、世界の富豪からすればたいした金額ではありませんね(ごめん、不謹慎)
これからはこの金がどこから出たのか、ねちねち調べ上げることになるでしょう。法の前には何人も同じと言われますが、ホンマかな?
私が今のアパートを買ったとき、どこからその金が出たか税務署で半年も調べられましたが、ピノチェットにたいしてもしっかりやってほしいもの。これに関してはチリも隣国アルゼンチンの元大統領が調べられているのと同じレベルですね。
ただしもう彼はもうろくしているので、実際は彼の後見人がやっているのでしょう。(彼の名前を使っているだけのことかも知れない)
来週ラゴス大統領は訪米してブッシュ大統領と面談が予定されていますが、いったい何の話をするのかな?

2)ボリビア天然ガスに関する国民投票がいよいよ来週になりましたが、投票自体が正常に行われない、もしくは投票結果が正常に判断できない?可能性が高く何のための投票か分からない感じです。ところでボリビアに埋蔵された天然ガスの量は南米最大とのことで、それを売ることでこの先25年間現在と同じ国民総生産を確保できるそうだ。
最近、ボリビア国内の天然ガスが値上がりしたと一般市民が怒っているが、どうなっているのだろう。しかし一部の人の言っている「天然ガスは私たちのもの、これは誰にも渡さない」と言うのはほとんど笑い話の世界ですね。
さて同じくチリの隣国ペルーでも政情は同じく極めて不安定で、今週ストが実施されているし、国内最大の飛行機会社が運行停止処分になっています。この飛行機会社はチリにも一時期進出しましたが、チリの国家安全委員会から麻薬関連会社の疑いがあるとして運行停止処分になり、彼らはチリ国を相手取って損害賠償裁判を起こしています。
しかし毎回書いていますが、チリの方が隣国より「普通」の国でしょうね。


(経済)
1)ローヤリティ(鉱山に関する超過課税)
しかしもめています。政府側も少しは折れてきたようですが、これを取り消すつもりは無いようです。8月に決着する予定の国会での表決はどっちか勝つにせよ僅差になるだろうと見られています。
この問題に関連して、業界側のロビーとして働いている社会党系の元大臣が自分と党の距離は大きすぎると社会党を離脱しました。
党が業界に新税を払えといっているときに、払わない方に立って働いているのですから、気持ちよいわけがないでしょう。チリにも業界の名前の下に国会などに働きかけるロビー運動が定着してきたわけですね。

2)チリが生活環境としてはラテンアメリカで2番目にランク
国連の統計ではチリは177か国中43位にランクされ、ラテンアメリカではアルゼンチンについで第2位。国民所得、教育、医療、平均寿命などの項目で、チリはそこそこの評価を得ていることが分かる。
ところでCNNのニュースで流れていたが、そのラ米1位のアルゼンチンの評論家が、「これはお笑いだ。アルゼンチンのどこがラ米で1位に値するのだ。例えば大学で勉強する学生の数がトップとしても質はずっと落ちるわけだし、国連が使用している数字、統計は過去のものを引きずっているだけで現在の実態を現していない。貧困層の拡大は覆い隠せない事実で、それらを全く無視したような国連の発表は理解しがたい」と言うものでした。
もっとも私が昨年アルゼンチンに行ったとき、そうかな?この国がそんなに貧しいのかと言う印象を受けましたが。
で、チリはまぁまぁの中位に位置しているわけで、国民も「まぁこのへんでええやん」と納得している感じがします。
因みにこのランキングのトップの国はノールウエ−です。


(一般)
1)ネルーダ生誕100年記念行事
しかしチリでノーベル文学賞をとったのは二人いますが、圧倒的に有名なのはネルーダですね。既に彼は逝去していますが、彼の生誕から百年たったとして今週各種の行事が行われました。CNNでも報道されていたから彼はチリ国内だけで有名なのではありません。チリ人の90%はネルーダがチリ最高の詩人と考えていると発表されましたがその人気はすごい。
私も彼の「百の愛の詩」にいくつかの詩にメロディーをつけて歌っていますが、何故ネルーダでもう一人のノーベル賞詩人ミストラルでないのかと言うとネルーダの詩は歌謡曲のようですが、ミストラルの方は難解で私にはよく理解できないからです。チリ人でネルーダの詩を暗誦している人は多くいます。
彼は、女癖が悪く?、今週の新聞に最後の愛人の手紙が発見されたとありましたが、相手は最後の奥さんになった人の従妹だそうです。奥さんも立場が無いですね。
彼は見た感じ不細工で、女性のもてそうではないのですが、やっぱりノーベル賞ですから、どこか違うものがあるのでしょう。余計な話だった。

2)今週、私は出張で北の方サルバドールに行っていました。で、夜、地方のテレビニュースを見ていて、コデルコ(国営銅公社)のサルバドール鉱山のなかで紀元前後のトルコ石の発掘作業場が発見されたと報道されました。つまりインカ以前の文明で、鉱山開発をしていたのがこの地方にあったわけで、それがどの文明に属するのか興味があります。

3)外人向け価格
5州のレニャカは観光地として有名ですが、そこのあるレストランで同一の料理が英語のメニューには6900ペソ、スペイン語のメニューには3600ペソになっていたとか。いやはや。(全部の店ではありませんよ)

4)犯罪の増加
それよりもっと深刻なのは犯罪の増加ですが、今週起こった事件は確かに問題です。それは百貨店で購入したテレビを配達にきた店員が奥さんの指示で家に入ったところ、家のご主人が泥棒と間違えてこれを射殺してしまったと言うもの。その家には既に強盗が入った経緯があり、家の主人は次回強盗が入ったら銃を使うと考えていたので・・・。
もちろん、彼は裁判所でこの先、判決を待ち受けることになります。


(スポーツ)
1)サッカー  アメリカ・カップの話はしたくもない。 
そうなんだよな、私らみたいのを口だけとか、能書きだけと言うんだよな。アメリカップで優勝かもしれないと言っていたチリのチームはなんと予選で敗退。それも3試合で引き分け一つだけ。しかもたったの2得点だけ。これでよく優勝なんて言ったものだ。
南米で最悪のチームがチリといわれてもしようが無い成績。国中が落ち込んでしまった。やっぱり国内戦がいいよな。どこが勝ってもチリ人の誰かが喜べるから???

2)テニス こっちは二つの話題。一つ目はATPツァーのオランダの大会でチリの2選手が準決勝に残ったので、もしかして史上初のチリ人同士の決勝戦かと期待されましたが、一人が準決勝で敗退。残念ながらチリ人同士の決勝戦は実現せず。
もう一つは数年前、世界のトップにたったリオス選手の引退宣言。彼は年齢的にはまだ若いですが、身体の不調と、精神的な不安定さから、トップの座を維持できず、短い選手生活を終えました。
しかし彼が世界の1位になって最初にチリに戻ってきたとき、大統領官邸に招かれ、彼が官邸の窓から熱狂的なファンに手を振った時の様子はまだ良く覚えています。私はそのころ、大統領官邸の正面のビルに入った会社で働いていましたから。

しかし世界のトップに立つのは難しいが、それを維持するのはもっとと難しいと言うことが良く分かります。


以上

ところで、このHPのエッセイの欄に今週韓国旅行のレポートを掲載しましたが、見てもらえましたか?これで今年は韓国、チロエの旅、それにマラソンレポートと3つ書きました。今年はレポートはこれでおしまいにして、いよいよ第3冊目になる小説「9月11日」を書き始めました。チリの30年前の9月11日と現在のチリを絡ませたものです。きっと面白いものになると思います。冒険政治小説ですね・・・乞うご期待