チリの風  その71  04年5月2日―8日

サンティアゴは南米でも屈指の住みやすい町です。ただ冬のスモッグは勘弁してほしいという気がします。その対策の一環として通常、排気ガス対策をしていない車の2割を通行規制していますが、空気が悪くなってくると対策車も規制の対象になります。今週、それが一日だけですが、ありました。

2日の日曜日、友だちと登山をしましたが、1800mくらいのところがスモッグの上限で、それより上は青空でした??!!


(政治)
1)天然ガス問題は、完全に国際、国内ニュースの最重要案件になっています。今週のトピックスとして、「アルゼンチン依存から抜け出すために、他の国からの天然ガス買い入れを増やす、また水力や石炭発電など、その他の電源確保を図り2007年には自主独立できるようにする」をラゴス大統領が確認しました。もちろん、これに対して隣国アルゼンチンの天然ガスを遠い国から高いフレートをかけて持ってくるガスに置き換えようとするのはコスト計算ができない素人の考えだときついコメントもあります。

ところで、なんとチリ沿岸で世界全埋蔵量の3%にあたると言われる天然ガスの層の存在が確認されたと報道されました。これの開発が進むとチリは天然ガスの輸出国になるといわれます。中心層は長さ300KM、幅、深さ10Mに100億m3のガスがある由。しかしちょうどのタイミングで発表されるとどこまでホンマかなと思ってしまう。しかしこれが確認されたら、ボリビアの大統領は寝られんようになるやろな。

さらに笑ってしまうのは、アルゼンチンは国内需要の分を満たせないとして現在チリ向けガスの供給削減していますが、チリがアルゼンチン同盟からの離脱を検討したとたん、少し量を増やしましょうかと言ってきた事だ。なにが本当で、なにが冗談か分からないのが外交の世界。

2)チリのフランス大使が新聞に投書して、チリの今日の経済発展の基礎を築いたのは、ピノチェットの導入した自由競争原理の導入だが、その考えを導いたのは、アジェンデの革命的な考えであるとコメント。

しかし右翼は怒りますね。アジェンデの政策が、失敗したからピノチェットにチャンスが出たなんて まったく子供だましの理論。しかしこんな人間が大使をしているのは・・

3)フレイ元大統領の運転手が、じつは軍の諜報機関のスパイだったと発表されました。彼はキリスト教民主党の党員でしたが、今週、党を除名されています。しかし運転手は大統領がどこに行って誰にあったか、全部分かっていますからね。彼は病死したことになっていますが、子供たち(国会議員)は殺されたと以前から主張しています。この元大統領はフレイ前大統領の父親。


(経済)
1)経済全般
3月の高い成長率から、もうチリは経済停滞期を脱出したと確認されました。今年の成長率は5%とか。アジア危機以前の98年段階に戻ってきたわけです。銅価格の上昇に助けられてという面もありますが。もっとも、現在中国で起こっている景気の異常過熱は早かれ遅かれ日本のバブルと同じくはじけるわけで、そのあと、また景気停滞、低迷がくるのは避けきれません。従ってそれをどう捌くか今から考えたほうが良さそうです。
ところでチリから日本への鮭の輸出が好調です。もう全輸出の半分が日本向けです。しかしあんなに遠い日本までよく持って行って利益が出るものだと感心してしまいますが。

2)原油価格の上昇と物価上昇
原油価格が過去13年間で最高の水準まで上がりました。で、ガソリン代も1Lで500ペソ(85円)となり、バス代も来週から10ペソ値上げして300ペソになるらしい。
一方4月の消費者物価は0.4%アップ。年間合計で0.6%でした。5月はこの原油価格に影響されもう少しあがりそうです。


(一般)
1)経口避妊剤というのはもう世界的に珍しいものではないでしょうが、チリではカトリックの影響が強いので、堕胎は一切認められないとしてこの種の薬剤の自由な販売は認可されていません。今週、暴行されて妊娠された女性には政府がこの薬剤を無償で交付するとしたところ、カトリック大司教がそれに反対し、野党(右翼)が首長を占める区で、その政府指示を拒否するところが出ました。政府は厚生省を通じ、政府の方針に従わないならその区への助成金を減額するとして問題は政治化しています。
しかし今週、先の国会で認証された例の離婚法に政府がサインしたので、6ヵ月後の11月にはチリにも離婚が実体化します。これも長い間カトリック教が反対してきたからですが、野党と結んでいつまで宗教が政治?に口をはさむのか興味のあるところ。(最も与党の党員も大半はカトリックですが)

2)3日の第八州を中心に地震がありました。夜中だったのにもかかわらず多くの住民は家を出て、丘に登りました。ツナミ(日本語がそのままチリで使われています)が来るかもしれないという理由でした。

3)チリ人の夫婦がベルギーの知人を訪ねて欧州に向かいましたが、飛行機を乗り換えのためスペインで降りたところ、入国に必要な書類を持っていないとして逮捕され暴行を受けたあげく翌日チリに送り返されました。まったく理不尽な扱いですが、この種類の事件が毎月のように報道されます。欧州では南米人は不法入国、不法滞在、不法就業のシンボルのようになっており、確実に差別されています。

4)もう外国に旅行するというのはチリ国内で普通になってきました。1−4月の集計で国際便の利用客が前年の10%アップです。宣伝を見ているとアルゼンチンの首都に夫婦で行って、飛行機代とホテル込みで、2泊三日で2万円くらいです。安い。


(スポーツ)
1)テニス  
日本でテニスのニュースが新聞のトップをにぎわすと言うことは無いでしょうが、チリでは良くあります。別にチリ人にテニス愛好家が多いと言うのではなく、テニスで世界的に活躍する選手がいるということです。
今週もローマの大会でマスが準々決勝までいきました。その試合に勝つと世界のトップ10に入れるとあって、テレビで朝早くから中継しました。マスは今年これが5回目(その試合に勝つとトップ10になれる)の挑戦でしたが、結局また敗戦。壁が破られません。まぁ11位でもすごいですが。

以上