チリの風 その69  04年4月18日―24日

水曜日すごい雨になりました。ちょうどその日、イキケに出張になっていて、朝6時豪雨の中、タクシーで飛行場に向かいました。
ところで、イキケにはコジャワシ銅山(4400m)にタイヤ講習会をするため向かったのですが、その銅山への道で不思議な場所があります。この銅山には過去10度以上訪問していますが、今まで実際には体験していませんでした。
それは反重力の場です。坂になっているところで、車をとめて、エンジンを切るとどうなりますか?車は下に降りていくでしょう?ところが坂の上のほうに走る場所があるのです。磁場の関係か重力の関係と考えられています。KM19から始まって、KM23までのところで3箇所見つけました。しかし坂を自動車が登っていくのは(エンジンを使わずに)実に奇妙な体験でした。


(政治)
1)アルゼンチンの天然ガス問題
 アルゼンチンがチリへのガス供給の制限開始したことは既に報告しました。これはアルゼンチンが自国の消費が増加しているのにもかかわらず過去数年設備投資を怠ったため、国内消費も賄われなくなってきたことから起こったわけですが、今週ボリビア政府が、わが国の天然ガスを貴国にまわしましょうと援助を申し出、契約にいたったもの。それは別に大ニュースではないのだが、その契約条件にボリビア天然ガスはチリにまわしてはいけないと言う付帯条項がついていた。チリ政府はあからさまなチリへの敵対行為として厳重抗議、ボリビアとの懸案事項の協議などすべて中止すると発表した。
しかし不思議なのはもう一方のアルゼンチン政府に関しては、友好関係の継続を呼びかけており、不公平?な感じがする。
アルゼンチン外相がチリを訪問して釈明と言われながら、何度もその日付を変更するので、しようがない、チリの外相がアルゼンチン訪問、むこうでその外相と面談している。

この話はさらにまだ続きがあって、エクアドルの大統領がチリを訪問、チリが電力源に困るなら同国産の石油の輸出を増加できると乙波。さらにチリ大統領は同石油の輸入税をゼロにすると言明。ボリビアに対抗してエクアドルと仲良しクラブを結成というわけですね。


2)公共事業省の不正事件
 長いあいだ、進捗がありませんでしたが、今週裁判官が、同省の元大臣が業者からの受け取った金を着服していた疑いがあると発表、大騒ぎ。彼は私腹を肥やしたことは一切ないと発表しているので、その金は99年の大統領選挙の資金になったのではと考えられる。政府はもちろん、選挙資金は公明正大に集めており、業者から裏金としてそれを受け取り、使った事実はないとコメント。一方、ラビン大統領候補は、これは重大な政治問題だ、99年の選挙はほとんど差らしいものがない接戦だったが、こんな不正資金で票がかき集められていたのだったら、チリの国民にどう説明できるのだろうと声明。もちろん、政府はただちにお金で票が買えるほど、チリ国民はおろかでないと発表したが、苦しい。


3)スピニアック事件
 この事件の中心人物になったへミータは右翼の上院議員に暴行されたとかのすべての供述は虚偽だったと裁判官に自白。あっと思わせたあと、翌日、私はいままで嘘はいっていないと記者会見を実施。毎日、テレビ、新聞をにぎわしていますが、いったい何が真実で、何のために供述を変えていくのか、それも興味のある現象ですね。


(経済)
1)IMFの報告で今年のチリのGNP成長は4.6%と発表されました
世界的な回復基調の中でチリも順調に成長していることが世界的に認められたことになる。

2)中国の最初の自由貿易協定はチリとの間に結ばれるのではないかと見られている。世界の経済活性化のエネルギー源となっている中国はチリにとっても重要な貿易先だが(何しろ過去10年で貿易量が30倍だから)今年9月までに技術的問題を煮詰め11月にAPECがチリで開催されるとき貿易協定を調印しようとするもの。これが成立すると農業関係者には大きなメリットとなるが、おもちゃ、繊維関係者にはネガティヴな要因となるだろう。

3)鉱山関係見本市(Expomin)

今週、首都サンティアゴで 南米最大規模と言われる、機械見本市が開催されました。その初日、あいさつにたった鉱山関係者が口をそろえて大統領を非難。それも名指して、昨年まで鉱山に新型税をかけないと公言していたのにここにきて急に方針を変えるのは信用問題にならないかと厳しい。これを受けてたったラゴス大統領は、関係者の皆さんの日ごろの尽力には感謝もうしあげるか、ただいまの関係諸氏の演説の内容、言葉遣いはチリのイメージを著しく傷つける言葉の羅列で、チリの対外イメージを傷つけるものだと、正面からではなく側面から批判した。もっとも大統領によるとエクソンが長年チリに保有していた銅山は毎年赤字として税金を払わず、昨年、高額で他社に売り払い、儲けだけを持ち逃げしているが、そんな業界を縛るのに、利益の一部をチリの科学振興のために使わせてもらえないのかと言う事になるが。
私も初日、見本市に行きましたが、今年アメリカのラス・ベガスで行われる見本市の方が重要として、大手建設機械メーカーが手の抜いた展示しかしていなかったのでがっかりしました。 


(一般)

1)環境問題
チリに将来起こりうる環境問題として次の項目が心配されています。
 A)チリ北部の砂漠化(拡大)、森林の破壊現象はチリ南部にも現れている
 B)温暖化による南極やチリ最南端部の氷原減少(水不足と海面上昇)
 C)オゾン層の破壊
しかし怖い。私たちの年代は切り抜けられても50年、100年後にはこれらの問題がチリ全土を確実に襲うと考えられている。

2)世界の最南端はパタゴニアと呼ばれる地方ですが、この観光開発のためとしてチリ、アルゼンチンの州知事の間で、観光宣伝を両国共同で行う、パスポートなしで自由に同地域の往来を認めるとし、両国政府に承認を求めています。

3)日本人人質事件でイラクの問題は日本で大きく報道されていますがチリ側の事件としては、アメリカの警備会社に雇用された128名の旧チリ軍人がとてもやっていけないと最低6ヶ月の条件にもかかわらず、既に5名が、一ヶ月もたたないうちに帰国しました。給料は月2800ドルとチリではとても稼げないものですが。


(スポーツ)
1)隣国アルゼンチンの選手ですがマラドーナの動向が連日スポーツ欄をにぎわしています。どう考えても彼の将来はありませんね。

2)チリを代表する2大サッカークラブ、コロコロとチリ大学の2クラブが破産の危機。チリ大学のほうは何とか裁判所の判決が破産回避となりましたが・・・

以上